285 猫の王様誕生


 ど、どうしてこうなった? いつから決まっていたんじゃ? ここまで進んでしまっては、もう引くに引けない……


 わしは振り袖を着たリータとメイバイに腕を組まれ、宙に浮いて身動きが取れない。その状況の中、二人は道に敷かれた赤い絨毯を、一歩、一歩、ゆっくりと進んで壇上に近付く。

 すると、道の両側に並ぶ笑顔の国民から、祝福する声が聞こえて来る。


「「「「「ご結婚、おめでとうございま~す」」」」」


 と……



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 時はさかのぼり、五月一日の朝。猫会議を行って数日経ち、ついにわしの即位式が開かれる。


「「うわ~~~!」」

「綺麗です~」

「肌触りもスベスベニャー」


 コリスの巣に合体して建てた仮住まいで、わしとリータとメイバイは即位式の為の、とっておきの服に着替えようとする。


「本当は、二人の誕生日に用意してたんだけどにゃ。気に入ってくれたみたいだにゃ」

「「はい(ニャー)!」」


 二人に用意した服は、大蚕おおかいこの糸を使った振り袖だ。リータには薄いピンクに染められた生地に花が散りばめられ、メイバイには薄い緑に、こちらも花が散りばめられている。

 これは、孤児院の絵が上手い女の子とデザインを一緒に考え、フレヤに頼んで作ってもらった力作だ。

 二人は嬉しそうに袖を通し、わしの指示のもと、協力して着付けている。


「シラタマ殿は、その服でいいニャ?」

「わしも晴れ着を用意していたにゃ。これにゃ」


 わしは灰色のはかまと黒い羽織を取り出し、着流しの上から着付ける。


「うわ~。かっこよくなりました!」

「そうにゃろ~?」

「でも、その模様はかわいいニャー」

「にゃ~?」


 リータの「かっこいい」はいいとして、メイバイの「かわいい」発言に、わしは恐る恐る胸を見る。そこには、わしの似顔絵が左右に描かれていた。


 え……わしのデザインでは菱形だったはずなんじゃが、なんで丸い猫が付いておる? フレヤ! デザインをいじりやがったな!!


「あ! メイバイさんにもシラタマさんが付いていますよ」

「リータもニャー! みんな、お揃いニャー」


 本当じゃ。花に紛れて猫がいやがる……失敗じゃ。デザインはいじらないだろうと、フレヤを信じて確認するのを忘れておった。

 なんでセンジに見せた時に、わしは気付かなかったんじゃ! こんな事なら、服を用意したのに……わしのアホ~~~!!


「シラタマさん。ありがとうございます!」

「ありがとうニャー!」

「う、うんにゃ」


 晴れ着はこれしかないし、即位式はこれで乗り切るしかないか。二人は喜んでいるし、よかったという事にしておこう。


 わし達の着替えが終わり、着崩れないように二人が慎重にわしを撫でていると、シェンメイがわし達を呼びに来た。なので仮住まいから外に出て、シェルターの門を潜る。

 そこにはわしの作った即位式用の壇上があり、国民から見えないようになっている。ここで司会のワンヂェンの合図で、脇を通って現れる寸法だ。


 現在は、各街の代表が挨拶をしている声が聞こえている。


 うぅぅ。緊張して来た。こんなに多くの人の前に立つなんて……あ、帝都で何度かやったか。いや、あれは無理矢理にでもやらないといけない事だったから、緊張している余裕はなかったんじゃ。


 しかし、わしが王様か……猫じゃぞ? 本当にいいのか? しかも三歳じゃぞ? 猫なら成人じゃろうけど……いや、成猫?

 ウンチョウがわしを称える演説をして、拍手も起こっているから、いいんじゃろうな~。はぁ……


 この世界に生まれ落ちて三年。まさかの猫からハンターになって、からの王様か。孫から借りたラノベ通りになってしまったわい。ラノベでは人間だったか……

 孫が見たらどう思うじゃろうか? 「じいちゃんカッケー!」とか言ってくれるじゃろうか? 猫だから笑われそうじゃな。

 あ! 女房!! 絶対、大笑いしながらアマテラスと見ておるぞ。また夢枕に立ちそうじゃ~。




「シラタマさん!」

「シラタマ殿!!」


 わしが様々な葛藤を抱いていると、リータとメイバイから声が掛かった。


「にゃ?」

「挨拶が終わったみたいです」

「すぐにシラタマ殿が呼ばれるニャー」

「あ、ああ。わかったにゃ」

「緊張しているのですか?」

「そりゃにゃ~。だって猫だにゃ~。猫が王様にゃんて、変にゃろ~?」

「そんな事ないニャー! シラタマ殿以外、考えられないニャー!」

「そうですよ。ご先祖様だって王様だったのですから、この国の王様はシラタマさん以上に、適任者が居ません」

「でもにゃ~」

「ほら、お呼びが掛かりました」

「シラタマ殿?」


 二人のキラキラした目を見て、わしは覚悟を決めて歩き出す。うつむき加減で……にゃろめっ!

 姿勢を正すように、リータとメイバイが注意して来たが、針で刺さなくてもいいと思う。

 二人と遊びながら壇上の袖に立つと、ワンヂェンがわしに目配せして来たので、首を横に振ってみた。だが、リータに力尽くでうなずかされる。

 するとワンヂェンも頷き、台本を片手に声を出す。


『続きにゃしては、王の即位式を行いにゃす。王はこの度の戦争で、他国へ侵攻しようとした帝国を倒し、猫耳族と人族との和解に、大いに貢献してくれましたにゃ。みにゃさん、盛大な拍手で迎えてくださいにゃ~』

「「「「「わああああ」」」」」


 皆の割れんばかりの拍手を受け、リータとメイバイに押されたわしは姿を現す。わしの姿を見た国民は、さらに大きな歓声をあげる。わしは恥ずかしい気持ちを我慢して、中央にある玉座に近付いて腰掛ける。

 後ろからついて来ていたリータとメイバイは、わしの両隣に立つ。二人は位置に着くと、にこやかに国民に手を振る。わしに隠れて練習していたのかもしれない。


 わし達の準備が整うと、ワンヂェンが言葉を発する。


『王冠を、ここへにゃ~!』


 ワンヂェンの声に、王冠を持ったドレス姿のセンジが登場する。王冠はブカブカだったので、ソウから連れて来た鍛冶職人がサイズを直していたのだが、間に合ったようだ。


 その王冠を、人族から猫のわしに譲渡する事が、即位式の概要だ。


 センジは壇上を歩き、玉座の直線上まで来ると直角に曲がる。そして、わしの目の前に着くと、ひざまずいて王冠を高くかかげる。

 そこをリータとメイバイが前に出て受け取り、わしのそばまで近付くと、王冠を被せて元の位置に戻った。



 ここに、猫の国の王。猫の王が誕生し、歴史に名を刻まれるのであった。



『では、続きにゃして、シラタマ王から、有り難いお言葉をいただきますにゃ~』


 ワンヂェンは、壇上の中央にマイクを立てると下がって行った。わしは立ち上がると前に出て、懐に手を入れ、皆に添削された原稿を手に取り、語り始める。


『みにゃの者。此度はちんの即位を称えてくれて、感謝するにゃ……』


 わしは一行読むと、言葉を詰まらせる。そうして短い沈黙のあと、原稿を握り潰して懐に仕舞う。皆は何が起きたのかわからず、わしを見守っている。


『やっぱりわしには、偉そうにゃ言葉は似合わないにゃ。自分の考えを、自分の言葉で伝えるにゃ。王様らしくにゃいけど勘弁してくれにゃ~』


 わしの言葉に少しざわめくが、元々猫の街では、王のわしが近い所に居たので、励ましの声が聞こえてくる。


『ありがとにゃ~。でも、少し静かにしてにゃ~』


 国民が静かになると、言葉を続ける。


『さて、この国はわしの物になったんにゃけど、わしは王様になったのが初めてだから、どうしたらいいかわからないにゃ。あ、静かにしてにゃ? ……でも、この街はどうにゃ? わしは街の住人と触れ合う事が多いから、みんにゃが笑って幸せにしている所を見ているにゃ。だから大丈夫にゃ』


 わしは国民の顔を見渡してから声を出す。


『にゃ~? 大丈夫そうにゃろ? これはわしの力も大きかったけど、みんにゃから借りた力が大きいにゃ。耕さなければ、種を植えなければ、実は育たなかったにゃ。街の家も修理する人が居なければ、住める家が増えなかったにゃ。皆が安心して仕事をするのに、守る人も居るにゃ。街の発展は、多くのみんにゃの力が使われているにゃ』


 わしはもう一度、国民の顔を見渡す。


『これから国で行う事は、これと変わらないにゃ。国民の力を借りて、国民の暮らしを良くするにゃ。だからわしの元で力を貸してくれにゃ。みんにゃで、この国を良くしようにゃ~~~!』


 わしは大声で叫ぶ。すると……


「「にゃ~~~!」」


 リータとメイバイが跳び跳ねて呼応し……


「「「「「にゃ~~~!」」」」」


 国民達も力強く呼応した。



 その呼応は長く続き、「にゃ~にゃ~」と叫ばれたと、のちの歴史書に載ったらしい……



 わしは恥ずかしさにいたたまれなくなり、司会のワンヂェンを呼び寄せて、次のプログラムに移るように懇願こんがんする。するとワンヂェンが民を宥め、静かになったところで、戦争で活躍した者を壇上に上げる。

 そこでわしが褒美を渡すわけだが、何を渡していいのかもわからないので、見栄えのいい物。大量に手に入った白魔鉱の武器を、ひとりひとり手渡していった。


 最後に褒美を渡したケンフが下がり、大きな拍手が響く中、ワンヂェンが次のプログラムに移る。


『静かに! 静かにするにゃ~! 次はパレードをするから、道を開けてくれにゃ~!!』


 パレード? 南のメインストリートに居る人が左右に分かれて行くけど、そこを進むのか。そこまで長い距離が無いけど、やる必要あるのかな?

 センジは帝国の皇帝がやっていたのをマネしておるのか? 丸投げしたし、乗っておくのが礼儀じゃな。


 わしが壇上で待っていると、大きな赤いリボンをつけたコリスが、脇から台車のような物を押して現れた。


 コリスまで参加してるの!? 手押し車って、子連れ狼にしか見えないんじゃけど……わしが「ちゃん」と言うのか……。そんな冗談はさておき、アレに乗るしかないんじゃろうな~。


 わしとリータとメイバイは、司会のワンヂェンに案内されて手押し車に乗り込み、コリスに押されながらメインストリートを進む。

 メインストリートでは、国民がわし達を称える声をあげて手を振るので、わし達もそれに応えて手を振り返す。少し恥ずかしいので、ちゃんと笑顔で返せたかは自信はない。


 メインストリートを進むと南門に近付き、これで羞恥プレーはおしまいだと安心したが、コリスは反転し、二周目の羞恥プレーに突入する。

 さすがに今回は下を向いてしまった。リータ達も苦笑いなので、わしと同じ気持ちだったみたいだ。


 そして壇上が近付くと、乗り込んだ場所には赤い絨毯が敷かれ、壇上には玉座が撤去されて、変わりに教壇の様な物が置かれていた。

 その教壇にはワンヂェンが立ち、笑顔を向けている。


 はて? まだ何かあるのか? パレードのあとは宴会だと思っていたんじゃが……ワンヂェンが何かやりそうじゃし、猫耳族の儀式でもあるのかな?



 わしが疑問に思っていると、リータとメイバイがわしに手押し車から降りるように促すので降りて、赤い絨毯の真ん中に立つ。すると、二人はわしを挟み込むように立ち、腕を組んでわしを持ち上げる。

 その行為にも疑問に思ったわしは、小声で二人に質問する。


「にゃあにゃあ?」

「どうしたのですか?」

「まだにゃにかあるにゃ?」

「進行表、見なかったニャー?」

「そんにゃの貰ってないにゃ~」

「センジさんが持って行ったはずですよ?」

「あ~。にゃんかこれでいいかと聞かれたやつにゃ?」

「それニャー。シラタマ殿は許可を出していたニャー」

「にゃ? それはわしが見る前に、二人が取り上げて、嬉しそうに素晴らしいって言っていたから許可したんにゃけど……それが進行表だったにゃ?」

「「あっ……」」


 二人は少し大きな声をあげたが、いまは静かにしないといけないからか、すぐに口を押えた。


「にゃ~?」

「まぁいいじゃないですか」

「そうニャー。シラタマ殿が許可をしたからいいニャー」

「にゃんだか怪しいにゃ……」


 わしが二人を問い詰めようとすると、ワンヂェンから司会を代わったセンジが喋り出したので、耳を傾ける。


『シラタマ王が即位した今日の良き日に、さらにおめでたい式を執り行います。皆様、盛大な拍手で、お三方の結婚を祝福しましょう』

「「「「「わああああ」」」」」

『では、お三方。壇上へどうぞ~』


 は? 結婚式じゃと? わ! リータとメイバイが、一歩一歩、壇上に進んでおる。止めるか? うん。止めよう。


「リ、リータさん。にゃんでこうにゃっているにゃ?」

「えっと……センジさんが私達の関係を聞いて来まして、素直に答えたら、こうなりました」

「わし達の関係って、なんにゃ?」

「第一妃と第二妃ニャー。結婚式はまだしていないって言ったら、開いてくれるってなったニャー」

「えっと……わし達は、いつから結婚していたにゃ?」

「それは……シラタマさんがなかなか結婚してくれないって話になりまして、それを聞いたセンジさんが盛り上がってしまいまして……」

「だから無理矢理式を開こうってなったニャー!」

「にゃんで~……ムゴッ!」


 わしが驚きのあまり大声を出したら、メイバイに口を塞がれてしまった。


「大きな声を出さないでください」

「ムームー!」

「シラタマさんの事情はわかっています。ですが、センジさんが無理矢理くっつけようとしている事情も聞いてください」


 リータはコソコソとわしに語る。

 どうやら人族と猫耳族の和解はあったが、結婚となると前例が無いので、わし達を使って前例を作ろうと言う訳だとか。

 人族であるリータと猫耳族であるメイバイが、猫のわしと結婚をすれば、異種どうしの結婚をしてもいいのだと印象付けられるので、この結婚式を開いたとのこと。

 リータの年齢は東の国では結婚出来ないはずだが、誕生日が近かった事で押し切ろうとしていたらしいが、わしが法律から外れた事によって、重婚と共に障害は無くなったようだ。

 リータ達は、もちろん反対しようとしたが、その説得に負けたと説明してくれた。


 話はわかったけど……絶好の機会だったからじゃろ! だからわしに進行表を見せてくれなかったんじゃろ! 二人が今日を楽しみって言っていたのは、これだったんじゃな!

 うぅぅ。もうワンヂェンが目の前じゃ。わしと話をしていたのも、時間稼ぎだったのか……。国民の祝福の手前、リータ達に恥を掻かすわけにもいかないし……。あ、ワンヂェンが何か言い出した。


『さあ、リータ……。リータはシラタマを、汝の夫として迎えるにゃ?』

「はい。迎えます」

『次はメイバイにゃ。メイバイはシラタマを、汝の夫として迎えるにゃ?』

「はい。迎えますニャ」


 うん。ざっくりした結婚式じゃな。猫耳族の式なのか? それともこの国がそうなのか?


『最後にゃ。シラタマ。シラタマは、リータとメイバイを妻として迎えるにゃ?』


 あ……ツッコんでいる場合じゃなかった。クソ! 答えは決まっている!


「迎えるにゃ! 二人とも、絶対に幸せにしてやるにゃ~!!」


 やけくそ。聞かれていない事まで答えてやった。それでも二人は嬉しそうに、目に涙を溜める。


『わかったにゃ。では、この盃を手に取り、国民に向けてから一気に飲み干してくれにゃ。それで夫婦めおとの成立にゃ~』


 わし達は、教壇に置かれたみっつの盃をひとつずつ持ち上げると振り返る。そして国民に向けて腕を上げる。リータとメイバイもマネをし、同時に口に流し込んだ。


 その瞬間、皆から割れんばかりの拍手と祝福の声が辺りを埋め尽くす。そんな中、リータがわしの耳に顔を近付け、言葉を掛ける。


「シラタマさん……」

「にゃ?」

「騙してこんな事をして、ごめんなさい……」

「わしも待たしてごめんにゃ~」

「え?」

「約束したにゃろ?」

「怒らないのですか?」

「怒っているにゃら、とっくに逃げ出してるにゃ~」

「うぅぅ……」

「いまさらにゃけど、わしと結婚してくれるかにゃ?」

「……はい」


 わしのプロポーズは結婚式の直後だったが、笑顔のリータに快諾される。もちろんメイバイにも耳打ちし、泣き付かれる事となった。


 それからまたコリスの手押し車に乗ったわし達は、国民の祝福を聞きながら、無駄な行って来いをしてシェルターに戻された。



 そのあとは、宴会だ。



 準備が整ったと聞いたわし達は、主要メンバーの揃った壇上で巨象の焼き肉を頬張る。国民にも振る舞ったから、辺りから悲鳴があがる事となった。

 巨象肉を食べた事があるメンバーは、その嬉しそうな悲鳴を笑いながら眺める。だが、食べた事が無いメンバーは、わしに詰め寄ってうるさい。

 なので、何か芸をしたら褒美であげるかもと言ってみたら、こぞって芸を始めた。


 ホウジツの腹芸には、この世界にもあるのかと大笑いし、コウウンとケンフのリターンマッチは決着がつかずに笑う。

 シェンメイとコリスの相撲はコリスの圧勝で終わり、ウンチョウとセイボクのラインダンスは最悪だ。

 センジは酒のせいか、ストリップを始めたのでドクターストップ。



 街の者も大騒ぎの中、わしも飲み過ぎて酔い潰れてしまうのであった……







 その深夜、わしは目を覚ます。


 つ……飲み過ぎたか。あ! 宴会は!? 真っ暗でわからないが、感触からベッドの上におるな……それに服を着ておらん。素っ裸じゃ。

 えっと……わしに何が起こったんじゃろう?


 わしは暗闇の中、手をモソモソと動かして、周りを確認する。


 柔らかい……モミモミ。あ、こっちにも柔らかい物がふたつある。この感触はリータじゃな。感触でわかるわしもどうかと思うが……と言う事は、さっきのはメイバイ? 二人とも、一糸纏いっしまとわぬ姿っぽい……


「……!!?」


 わしは悲鳴をあげそうになったが、口を押さえて我慢する。


 ヤ……ヤッちゃった? いや、そんなまさか……初夜の記憶が無い……


 わしはサーっと血の気が引くのを感じる。


 獣姦……いやいや、まだ決まったわけじゃない! 二人を起こして聞いてみるか? うぅ。真実を聞くのも怖い。



 わしが頭を抱え、モゾモゾともだえていると、二人の手がわしに絡み付き、ガッシと抱かれてしまう。わしは驚きのあまり固まって、身動きが取れなくなる。

 それからわしは、どうしたものかと考えていたら、二人は寝言を呟く。


「ん、んん~。シラタマさ~ん。もっと~」

「ん……そこが気持ちいいニャー」


 なんのこと~~~!!



 こうして、即位式と結婚式を終えたわしの初夜は、悶々もんもんとしながら終わるのであったとさ。

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