163 デート其の二にゃ~


 デート アイノの場合……


「モフモフ~」

「にゃ!? やめるにゃ~!」

「いいではないか、いいではないか」

「いにゃ~~~ん! ゴロゴロ~」


 何故アイノが悪代官のようになっているのかと言うと、アイノにも大蚕おおかいこの糸が欲しいと言われ、在庫が無かったので、森の我が家に転移した。

 大蚕の元へお姫様抱っこで走り、大量の大蚕に囲まれたわし達は悲鳴をあげる。わしはまだ耐性があったが、アイノは完全に気を失ってしまった。

 糸と獲物の交換を済ませたわしは森の我が家に戻り、アイノをベッドに寝かせる。アイノの気持ち良さそうな寝顔を見ていたら、わしも椅子でウトウトして眠ってしまった。


 これが悪かった。


 目が覚めた時には、アイノにベッドに連れ込まれ、撫で回されていた。


「ハァハァ。モフモフ~」

「もう満足したにゃ。にゃ?」

「まだまだ足りないわ!」

「いにゃ~~~ん! ゴロゴロ~」


 そしてわしは犯された……わけでなく、アイノが満足するまで撫で回され、挟まれ、めちゃくちゃにされた。


「ふぅ。モフモフ注入完了」


 やっと終わったか。それにしても、モフモフはどこに入ったんじゃろう?


「満足したにゃら、ベッドから出ようにゃ?」

「まだデート中だから、ピロートークじゃない!」


 事が済んだ事は済んだが、そんな事はしておらん! 撫で回されただけじゃ! 息子さんも撫でられたが……。せめて、話をそっち方面から逸らそうか。


「そう言えば、アイノも大蚕の糸をにゃんで欲しがるにゃ? 前にあげたのはどうしたにゃ?」

「あれは……王女様に取られたの」

「アイノまでにゃ!? ソフィやドロテも取られたって言ってたし、今度さっちゃんに会ったら叱っておくにゃ!」

「いや、それは……いいかな?」

「にゃんでにゃ? アイノも服が作りたかったにゃ? さっちゃんと言えど、わしの好意を奪われるのは許せないにゃ!」

「私達は納得しているからいいのよ。だから怒らないであげて。ね?」


 納得してる? 貴重な糸を取られたのにか? これはひょっとして……


「にゃにか隠してるにゃ?」

「にゃにも隠してないにゃ!」


 うん。隠しておるな。これはさっちゃんに、何か頼まれ事をされてるっと事かな? それでみんな口裏を合わせているのか。でも、なんでわしの口調になるかは聞いてもいいかな?


「にゃんでわしの喋り方をマネしてるにゃ?」

「し、してないにゃ~」

「ほら! またしたにゃ~」

「あ……」

「にゃあにゃあ?」

「うぅ……モフモフ攻撃~!」

「いにゃ~~~ん!? ゴロゴロ~」



 アイノは話を逸らそうと、わしを撫で回す。わしもこれ以上聞くのも不粋だと乗ってあげる。けっして、ふたつの大きくて柔らかいモノに挟まれたからではない。ホンマホンマ。

 その日、帰ってから匂いに敏感なメイバイに、アイノの匂いを嗅ぎ分けられ、浮気だと騒がれた。そのせいで、リータとメイバイに怒られる事となってしまった。


 別に撫でられただけなんじゃが……


「「へ~~~」」

「ごめんにゃさい!!」


 また心を読まれて、平謝りするわしであったとさ。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 デート? エンマの場合……



「シラタマさん。どうですか? 気持ちいいですか?」

「踏むにゃ~! ゴロゴロ~」

「そうですか。気持ちいいのですね」

「そんにゃこと言ってないにゃ~。ゴロゴロ~」

「シラタマさんも気持ちいい。私も足が温まって気持ちいい。ウィンウィンですね」

「わしの話を聞くにゃ~!」


 エンマは最近、毎日わしを踏みにやって来る。と言っても、酔うとセクハラ秘書に変わるみたいだ。ドSで踏んでいたと思っていたが、冷え症で足が冷たいので、わしで暖を取っていると言っている。……信じてないけどな!


「こっちの中に足を入れたらいいにゃ」

「それも捨てがたいですね。コタツと言いましたか。でも、シラタマさんには勝てないかと」

「いいから入るにゃ~」

「そうおっしゃるなら……」


 エンマがコタツに足を入れると、わしはお酒を注ぎながら近況を聞く。


「最近、毎日来てるけど仕事は忙しくないにゃ?」

「女王陛下の誕生祭での、露店の出店申請が増えて忙しいです」

「忙しいにゃら、家で休んだほうがいいんじゃないかにゃ?」

「家ですか……」

「どうしたにゃ?」

「独り身の女性に、あんなに冷たい家に帰れと言うのですか?」

「いや、自分の家にゃ……」

「ひどいです!」

「エンマは美人にゃんだから、早く男を捕まえるにゃ~」

「捕まえました!!」

「にゃ!? わしじゃないにゃ~。ゴロゴロ~」



 と、エンマは毎日、わしにセクハラをしにやって来る。


「むにゃむにゃ。シラタマちゃん、挟んであげる~」

「ハッ! 猫ちゃんにいいアイディアが。脱いで! ……むにゃむにゃ」

「猫のモフモフ~……むにゃむにゃ」


 もちろんアダルトフォーの、スティナ、フレヤ、ガウリカもセクハラをしにやって来る。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 デート イサベレの場合……



 またここか……


 イサベレには転移魔法を秘密にしてもらい、離れから森の我が家に転移した。


「これがシラタマのお母さんのお墓?」

「そうにゃ。一緒に掃除しようにゃ」

「ん」


 イサベレのデートプランは、わしのおっかさんの墓参りだった。最近忙しく、まとまった休みが取れないと言うので、転移魔法を見せる事となってしまった。

 イサベレはわしの掃除を見よう見真似だが、一所懸命真似して掃除をしていた。何か謝っているように見えたから、そっちはお婆さんだと言い出しづらかった。両方のお墓を掃除してくれたので、まぁいっか。


 そして二人で手を合わせ、長い沈黙が続く。


「もうそんにゃもんでいいにゃ」

「まだ謝り足りない」

「謝るにゃ? おっかさんはそんにゃこと喜ばないにゃ」

「じゃあ、どうすればいい?」

「そうだにゃ~……強い敵と戦った話なんか、聞かせてあげればどうかにゃ? わしも聞きたいにゃ」

「私はそこまで多くはない」

「誰かに聞いた話でもいいにゃ」

「それなら……」


 これよりイサベレ達の戦いの歴史、イサベレのお母さん、先祖の話が続く。その話は神話のような話で、ユニコーン、ケルベロス、フェンリル、物語で聞いた事がある生き物の名前が次々と出て来る。

 その災害級の生き物と率先して戦うのが、白い一族。人々と共に、多くの犠牲を出しながら災害を乗り越えて来たと言う。


 ふ~ん。キョリスも女王蟻も、イサベレたち白い一族と戦ったのか。人間の中にも白い一族と肉薄する者がたまにいたみたいじゃな。

 しかし、オンニはわかるが、イサベレの口からバーカリアンの名前が出て来るとは思わなんだ。あのバカ、強いのか?


「お腹すいた」

「あ~。はいはい」


 武勇伝を饒舌じょうぜつに語っていたイサベレだが、腹の虫が鳴くと、ピタリと止まる。前回のデートで、イサベレが大食いなのは知っていたので、今回は露店で大量に食べ物を買い込んで来たから問題無い。

 外で食べるのは寒いので、わしの部屋に案内し、テーブルの上に次元倉庫から出した食べ物を並べる。だが、一瞬で消えて行く食べ物を見て、わしも慌てて食べる事となった。


「満足したにゃ?」

「ん」

「にゃんで服を脱ぐにゃ?」

「恋愛指南書には、初体験は彼氏の部屋が多いと書いていた」

「まだ読んでたにゃ~!?」

「私のバイブル」


 そんなモノがバイブルなわけがない! そんなモノわしに渡さなくてもいいのに……かなり読み込まれておるな。72号? そんなに出てるのにもビックリじゃ。

 折って目印にするドックイヤーも付いておるけど……。気になる彼を落とす方法? 押せ押せしか書いておらん。この国の女性は引くことを知らんと思っていたが、この本が元凶じゃなかろうか。


 ここのドックイヤーは、体位? もう男は落とされたのか。もう少し落とす方法を書いたほうがいいと思うんじゃが、体位のほうが絵付きでかなり多い……。ここまで多いと、もう春画じゃ。

 こんなモノを読んでいるから、イサベレの頭の中はヤル事しか無いんじゃな。謎は解けたが、こんなピンクな頭の女を説き伏せる事は出来るんじゃろうか?

 ん? イサベレはどこ行った? 服は脱ぎ捨てられ、点々とベッドに続いている……


「カモーン?」


 うん。指南書にあった方法じゃな。某新喜劇に同じのがあって、それしか考えられない。


「はやく~」


 美人がやると、たしかにグッと来るモノがあるな。大概たいがいの男なら落ちるじゃろうが、わしは猫。ここは無視して外に……


 ヒュンッ! ガシッ!!


「にゃ!?」

「逃がさない」

「にゃ~~~!!」


 わしは、無駄に肉体強化魔法でスピードを上げたイサベレに、ベッドに連れ込まれた。


「にゃにするにゃ~!」

「セックス」

「言わなくていいにゃ! まだ早いにゃ!!」

「二回目のデートなのに?」

「二回目のデートだからにゃ!」

「でも、指南書には……」

「指南書は一回忘れるにゃ。にゃ? 読んで見たけど、当てはまらない男もいるにゃ」

「そんな事、どこにも書いて無い」

「書いてたら売れないにゃ。だから、忘れようにゃ?」

「ムウ……二回目は何をする?」


 はて? 二回目のデートは何するんじゃ? わしがしたデートでは……ダメじゃ。時代が悪すぎて、手を繋ぐ事すらけしからんと言われていた。

 せいぜい人目を避けて、土手で川を眺めてたぐらいじゃ。しかし、プレイボーイっぽくしとかないと、イサベレの攻撃をかわせない……


「そうだにゃ……スキンシップて撫で合おうにゃ?」

「ん。こう?」

「ゴロゴロ~」

「じゃあ、私はここ」


 わしの頭を撫でたイサベレは、わしの手を取って指定の位置に持って行く。


「胸はまだ早いにゃ! 頭を撫でてあげるにゃ~」

「ん。悪くない。次はここを撫でる」


 イサベレの頭を撫でると嬉しそうな顔をしたと思うが、表情が薄いのでいまいちよくわからない。なので表情を読み取ろうと頑張っていたら、イサベレは、わしのわしをわさわさする。


「にゃ!? そこもまだ早いにゃ~~~!」

「む。硬い……これが、ぼっ……ムグ」

「言うにゃ~~~!!」


 わしはイサベレの口を塞いだが、興味の持ったイサベレに、とらわれた息子さんを救出するのに時間が取られてしまった。


 この日も家に帰ったら、匂いでメイバイにバレて、リータ達に怒られたのは言うまでもない。

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