第126話 男子寮(歓迎会?)
メンドクサイ大人の相手をして、ワンスもトゥースもスティングもボロボロである。
「まったく、ヘルメスさん容赦ねぇな。」
「ああ、でも俺たちが子供だからまだかなり手加減してる見たいだぞ。
「そうなのか?」
「お前、ボスパパとヘルメスさんの模擬戦見たことないのか?」
「ボスパパって言うな!」
「そんな事はどうでもいい。どうなんだ?」
「いや、見た事は‥‥無いけど‥‥」
「お前、馬鹿だろ?」
「なんでだよ!?トゥースの方が成績下だったろ!?」
「はぁ~‥‥だから馬鹿なんだよ?」
「なんだよ?分かんねぇよ!?」
「いいか?ここで言う馬鹿って勉強出来る出来ないじゃない。自分にとって大事なモノがちゃんと分かってるかだぞ?」
「え?親父とヘルメスさんの模擬戦が?‥‥」
「ああ、息子なのに見て無いなんて、ボスパパも浮かばれないな。」
「は?おい!親父まだ死んでねーし!?」
「お?そうだったな。それは失敬!」
「まったく‥‥勝手に殺すなって‥‥まぁ殺しても死なねぇだろうがな。」
「ワンス、ヘルメスさんとボスパパの試合は、本当に死合いだったそうだ‥‥」
「ん?試合って‥‥死合い?‥‥殺し合いか??」
「ああ、物理のボスと魔法のヘルメスで、最初は皆賭けてたりしたらしい。でも、段々と激しくなって、誰も止められなくて‥‥」
思わず息を呑んだ。
普段はどちらかと言うと温厚な親父だ。
しかし、この牙狼村に来るまでは牙猿の群れのボスとして、数々の修羅場を潜って来ただろう。
でも、そんな事一言も言った事は無い。
この牙狼村に住む事になった経緯でさえ、話した事は無い。
それまで黙って聞いていたスティングが口を開いた。
「あ、その話なら‥‥」
話しかけて、寮に到着した。
みんな自分たちを待っていたようで、
「何やってんだよ?遅ーヨ!」
「寮長のワンスが遅れてどうするんだよ!?」
寮母さんからは、
「早く準備しないと飯抜きだからな?」
飯抜きと聞いて3人は焦った!なんせ寮に居て一番のお楽しみは飯だ!
サッサと部屋に戻り、ザっとシャワーを浴びて着替えて食堂に行く。
皆が待ち構えてる中、素知らぬ顔して入り、挨拶を始める。
寮長のワンス。
代理実行担当のトゥース。
どちらが欠けても上手く回らないと、誰もが思っている。
それだけ良いコンビだった。
一応新入生歓迎会なのだが、子供たちにしてみれば豪華な食事が出来るイベントに過ぎない。
豪勢な食事も子供たちの前では一瞬にして無くなって行く。
ちゃんと噛みなさい!とか味わって食べなさい!なんて言ってる間にはもう‥‥
「「「「「ごちそうさまでした~!」」」」」
御飯が済んだらデザートである。
これは寮母さんがしっかり目を光らせて、平等に行き渡るように監視している。
食事はお替り自由で好きに食べさせてるが、デザートに関しては何度ケンカになった事か!これは男子女子関係なく‥‥いや、女子の方が激しい争奪戦のようだ‥‥
デザートを食べながら、ワンスはスティングに話の続きを促す。
「え?何の話だっけ?」
「トゥースが話してただろ?ヘルメスさんとの模擬戦の話。」
「あ、そうか。どこまで言ってたんだっけ?」
「しょうがねぇーな。」
トゥースがヘルメスさんとボスパパの”死合い”の話を始めると、寮の食堂に居た全ての者が聞き入っていた。
中々決着が付かず、殺し合いになった頃‥‥
「僕がお父さんから聞いたのは、二人とも満身創痍で引くに引けずに、止めを刺さないと終わらない状況になってたって。二人とも話を聞ける状態じゃ無かったけど、何とか話して終わらせたって。
だから、僕もちゃんと引き際を弁えるように!って話だったよ?」
「おいおい。スティング、それって大分話を端折ってるよな?」
「そんな簡単に終わらないって!本当の話を教えてやるよ。」
ワンス兄さんとトゥース兄さんに違うって言われて黙って聞くことにした。
ヘルメスとボスの死合いでは、魔法は物理で耐えられ、物理は魔法で弾かれていた。
体力が尽きるのが先か、魔力が尽きるのが先か‥‥
もう互いに殺すしか無いと、熱くなった頃に真悟人が現れた。
普通に歩いて間に入った時には、もう互いの奥義は繰り出されていた。
しかし、
ボスには結界を張った。外部に対する結界では無く、中に閉じ込める結界の殻を張った。
ボスはこんなモノぶち抜いてやる!‥‥どころか、歯が立たず拘束された。
ヘルメスには『造林鎌』と『根切鋤』が首元でクロスして押さえ付けていた。
さらに『鍬』で‥‥
「次の魔法で首チョンパだぞ♪どーする? あ、ボスは動くほど結界が狭まるぞ♪全身の骨が折れるのは痛いぞ~♪」
と、ニヤニヤしながら脅してきた‥‥
「参った‥‥」
「主‥‥参りました。‥‥」
「「「「「えげつない‥‥‥」」」」」
皆の心の声は、真悟人に届く事は無い。
それでも、一瞬にしてエクスカリバーさえ出さずに二人を無力化してしまった。
真悟人の実力を知らずに、舐めてる者も出始めてた頃だったので良いデモンストレーションだったのかも知れないが、違う意味で恐れられる様になったのは、本人は知る由もない。
トゥースのそんな話を聞いた男子寮の者は、
「噂以上にヤバい!」「絶対に逆らっちゃイケない!」
「稽古付けてもらえないだろうか?」「ステキ♪抱いて欲しい!」
若干、違う感想が混じっていたが、概ねヤバい相手だと言うのは伝わったようだ。
「あのヘルメスさんとボスパパを相手に子供扱いで無力化するなんて、真悟人さん以外には出来ないだろう。」
そんなトゥースの感想を聞きながらも、
「でもお父さんは、まだまだ俺より強い奴は山ほど居るから油断ならないって言ってたよ。」
「う~ん、真悟人さんくらいになると、そうそう居ないと思うが、‥‥あっ!」
「なに?」
「こないだ、スティングの入学準備で牙狼村にいったん帰ったろ?」
「ああ、そうだな~久しぶりの村の食事は美味かったな~!」
「あの時、女の人の怒鳴り声がして‥‥」
「えっ!?それって‥‥」
「ああ、真悟人さんがトゥミママの前で正座させられて説教されてた‥‥‥」
「「「「「ああ~‥‥‥‥」」」」」
「やはり最強は、女の人かぁ。。。」
「「「「「うん。そうだな‥‥‥」」」」」
奥で聞いてた寮母さんと賄いのおばちゃんは、腹抱えて笑ってたそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます