第88話 オークキング

 デュロックがセネーゼの機嫌を取って、ワフワンとの会話をお願いしてる間に、ジョゼットさん&クアガールさんと会談して貰う。

 内容は、今後の交易。


 デュロックが今回持って来たのは、まず魔石。

 大小様々属性様々で、これはこの森の奥深くに住んでるだけあって、結構強力な魔物の魔石も混ざってるとか?魔石は最大限の価値で取ってくれと言ってるので、結構な価値になるだろう。

 他に出せる物は、肉は消費してしまう。毛皮は衣に使う。魔石しか残らない。

 だったら収穫物は?自分達が食べる物は出せない。他に必要な物が山で採れるのか分からない‥‥逆に、オーク達は山で何を採って食うんだ?


 答えは、オークは何でも食う。だから手当たり次第に取って食う。

 それは、山菜や果物やイモやキノコ‥‥川で魚やカニやエビ。


 山菜か?ハーブ系はどうだ?紫蘇があれば最高!他に山椒や胡椒とかないのか?

 漆やニッキやお茶とか無いのか?ミントやイチジク、木苺やサクランボ?色々あるだろ?そういうのを持って来い!食えるものだけじゃない。漆やお茶の葉は食わないだろ?他にもある。トリカブトなどの毒草を探せ!全部根こそぎ持ってこい!枯れない様にちゃんと植え替え出来るようにな?


 次にキノコ。これは全力で探してくれ!求めるのは、松茸、ヒラタケ、シメジ、マイタケ、椎茸、エノキダケ、他に毒キノコも持って来い!


 川で魚が獲れるのか‥‥その漁場は隠せ!絶対に他の者は入れるな!川魚と言うと、イワナやヤマメを筆頭に稀少価値になる。

 上流に大きな池をいくつも作って、川魚養殖場を作ろう!

 ニジマスやサーモン系は池じゃ無く、湖規模で作るか!


 湖を作るか?って時点で常識外だが、そんな事は眼中にない。

 もう既に、オーク達を使って山菜畑や山芋畑、キノコの養殖場から川魚養殖場まで既に想定は出来上がっている。


 後は、彼らの村周辺の地形を調べて、川から湖が作れるか?養殖池を作るには?本当は専門の奴に調べさせるのだが人材が居ない。皆の素人目線で判断するしか無いのである。


「まぁ、現地を見て、判断しよう!出来たらお前達と、かなり良い取引が出来るようになるぞ!?」


 デュロック達はそれを聞いて、かなり喜んでいた。

「ただし!取引には不穏因子を失くす事だな。」


「・・・・・・・・・・・・」


「はぁ~~。何処にも現状が把握できない馬鹿野郎が居る訳だが‥‥」


 何も言わないデュロック達にイラッとした。

「お前達はどうしたいんだ?さっきも言った様に、理解出来ない馬鹿野郎は汁の出汁にするしかないぞ?」


「実は‥‥」


「うん。言って見な?」


「あの‥‥」


「うん。」


「・・・・・・・・・・」


「じゃあ、言いたくなったら言いに来い」


「あ……」


 ・・・・・・・・・・・


 ふう~~・・・なんかイライラする。

 そんな真悟人の様子を見て、トゥミ、サラ、シャルが聞いて来る。

「ねぇねぇ?何?この微妙な雰囲気は?」

「ね~~!何?他の種族の♀も狙っていく決心付いたって事~~??」


「は?違う!違うから!全くもって一切違うから!!」


「ふ~ん??違うんだ?じゃあ、どうしたいの?」


「あ?あ~‥‥どうしたいんだ?俺は。」


「「「はぁぁぁ~~~。」」」

「なんか、オークの皆にイライラしてるのは分かるけどね」

「思う様に動かそうとするからイライラするんじゃない?」

「好きにやらせりゃイイんじゃない?真悟人の望む先がオークの望む先と違うからイライラするんだよ。ほっとけば良いじゃん。」


「ん~~‥‥‥そうか。傲慢なのかな?俺は?」


「「「そうだね!!!」」」


 くっ!ハッキリ言われると痛いぜ。

 でも・・・・・傲慢かぁ。そうだな。

 ・・・・・ちょっと考えてみるわ。




 ボス?


「なんでしょう?」


「キング居た?」


「居ました。」


「殺ってもイイかな?」


「主のお好きに。」


「傲慢か?」


「良いんじゃないですか?」


「そうか?」


「そうです。」


「んじゃ、こそっと行って、サクッとやるか?」


「用意します。」



 俺とボスとアルファと3人で出ようとしたら、まずボスが捕まった。

 と言うか、ジーフォに見つかり、珍しく行きたがった。

 偶には良いかとジーフォを加えて4人で出ようとしたら、アルファが捕まった。

 しょうがないので、シルビアも連れて行く。


 シルビアの事は余り知らなかったので、大丈夫かと聞いたらアルファと同等以上に戦闘は熟すらしい。ただ、性格的に戦闘は好まないのと、表立って動くのも好きではないらしく、裏で色々やっていたと。

 最近アルファが自分を顧みない行動が面白く無くて、どうせなら一緒に動こうかなぁ!と思ったんだそうだ。


 アルファも何も言わなかったしね。

 そんな女性が居るなんて、全く気付かなかったよ。


 それじゃあ、今度こそ!って時にジーフォを探しに来たシャルに発見された。


 結局・・・俺、シャル、ボス、ジーフォ、アルファ、シルビアの6人で出発。

 翌朝にはオークの村近くに到着。

 当りを伺っていたのだが、その辺をオークキングと思わしき個体が普通に歩いていた。


「は?‥‥マジか?‥‥あいつ、めちゃめちゃ強いぞ?」


 ビックリしながら眺めていたら、戦隊がやって来た。

「主!もう来るなんて聞いてませんでしたので、申し訳ありません。」


「ああ。そんな事は良いんだが‥‥」


「あいつですか?あれがオークキングです。」


「ありゃやべぇな。ボス?どうする?」


 珍しくボスとアルファが真剣な表情で、おいおい、マジか?って顔をしている。

 そんな相談をしてたら、オークキングが・・・・・吠えた!


 周囲をビリビリと痺れさせ、空に向かってもう一声!

 どうやら朝の日課なんだそうだ。

 戦隊のグリーン曰く、あのオークキングは、側近などと余り徒党を組んだりせず、単独でうろつく事が多いと。

 デュロック達の村の何頭かが、奴の所に来て庇護を頼んでいた様だが、特に相手にしていなかったみたいだ。

 デュロックの村を吸収するつもりの行動も無く、基本的に知らん顔。

 冬前に豊かな森に辿り着いただけな様子だと・・・


「そうか。‥‥んじゃ、聞いて見ようか?」


「「「「は?」」」」

「あ!主!‥‥行ってしまった‥‥」



 真悟人は、オークキングを見た限りいきなり敵対する感じは無かったので、取り敢えず聞いて見ようと思った。

「よぉ!お前がオークキングか?」


 オークキングは何も言わずに身構える。

 自然体だが、どんな攻撃も対応できるように構えている。


「俺は、真悟人と言う。この先の牙狼村の村長をやっている。オークキングがやって来たってんで、危険な奴か見に来たんだ。」


「・・・・・・・・・・」

 言葉を発する事無く、じっとこちらを伺っている。


「お前が留まってる集落の先にもオークの村がある。‥‥‥お前はあの村を吸収する心算か?」


「‥‥‥‥そんな心算は無い。」


「そうか。お前に無くても部下たちはどうだ?」


「‥‥‥部下なんて居ない。」


「一緒に来た連中は部下じゃ無いのか?」


「‥‥‥あれは、仲間。部下じゃない。」


「そうなんだ。じゃあ、仲間たちは他のオークの村を害したりしないか?」


「‥‥‥しない。そんな事するのは仲間じゃない。」


「分かった。他のオークの村から何人か庇護を求めて行っただろう?」


「‥‥来た。だが、帰って貰った。」


「どうしてだ?」


「あれは、欲望で濁ってた。力と女が欲しいだけ。そんな仲間は要らない。」


「うん。良く分かった。お前の名前は?」


「‥‥‥あ、名乗るのが遅れた。俺は、マンガリッツァ。」


「もう一度改めて、俺は真悟人だ。マンガリッツァ。」


「‥‥真悟人。真悟人は敵じゃない?」


「ああ、敵じゃない。」


「‥‥周りに居るのは?」

 視線が鋭くなった。

 周囲で警戒している、牙猿達の事は知っていたようだ。


「紹介しよう・・・・・」

 ボス達を俺の仲間たちだと、順に紹介した。


「‥‥そこの緑のが、俺の周りによく居た。」


「グリーン。バレバレだな。マンガリッツァ、気を悪くしたなら謝ろう。」


「‥‥大丈夫。周りに居ただけ。何もされていない。」



 こうして、オークキングとの接触は、穏便に行えた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る