第47話 島

 砂浜に寝そべってみる。

 ‥‥‥‥静かだ。

 波の音と遠くに鳴く、鳥の声。  それ以外は何も聞こえない。


 意識が落ちていく‥‥‥


 ふっと気づく。

 寝てたみたいだな。夕べ色々考えて眠れなかったのと、必死に漕いで、少し疲れていたようだ。

 何と無く、周囲に気配のようなものを感じるが・・・動物でも居るか?

 不用意に寝てしまうようじゃ、不用心過ぎるな。


『剣』!を出して、『根切鋤』を呼ぶ。『根切鋤』を出して『カヌー』を格納する。ちゃんとオールはセットなんだね。

『道具』は1つしか格納出来ないのが、チョット面倒くさい。


 ん?指輪の声?‥‥‥なんと!認めてくれた者が5人になったので『道具』は3つまで持てると?‥‥‥5人?‥‥ボス、スライム先生、トゥミ、サラ、‥‥‥ん?‥‥あっ!ヴィトンが居た!忘れたら怒られちゃうね!

 指輪さん‥‥もっと早く教えてよ~!あ、目逸らしたべ?まぁいいけどね。


 でも、そうか。認められたんだよな。もう、5人も認めてくれたんだよな。

 ‥‥‥嫌われたら、どうなっちゃうんだろう?---ゾクッとした。

 トゥミに嫌われたら、回復魔法が使えなくなる??

 ---『回復』!---発動した!ホッとした。なんかドキドキしたわ!


 嫌われてたら、『道具』も3個、持てなくなるよね?

 今は、『剣』と『根切鋤』を出して『カヌー』を格納してるから、『造林鎌』を呼んでみる!『造林鎌』!---ふぅ。呼べたわ!またドキドキしたよ。

 多分、トゥミには嫌われてないよね‥‥って、疑ってるのか?俺は‥‥


 俺は、トゥミを疑ってるのか? 信頼を損ねてるのは俺の方なんだ?

 なんか、日本に居た頃のウジウジした俺とな~んも変わってないじゃん。

 もう負けない!って決めたじゃん!思うように生きるって決めたんじゃん!

 何やってんだよ!俺は!!幸せになるんだろ??

 要らぬ嫉妬で飛び出して!どんだけ子供なんだ。。。

 帰ったら、トゥミに謝ろう。正直に言って、許してもらおう。


 島に渡って、一人ゆっくり考えてたら、自分の情けなさと弱い心がよく分かったよ。指輪のお陰かな?ハハッ

 こんな弱い心には、もう負けない!俺は、幸せになるんだ!!



 この島は良いね!

 誰も住んでないのかな?居るとしたら、きっと人外だよな?

 せっかく来たんだ。探検してみよう!


『根切鋤』を持って、辺りを虱潰しに探してみる。

 断崖絶壁は登れないから、何処か奥に入って行ける所は無いかな?

 近場から順に調べてみるが、道らしきとこは無い。


 どっか入れね~かなぁ?と崖に垂れ下がった木の根や草を掻き分けてみる。

 すると・・・・洞窟?

 ますます異世界冒険ものっぽくて、ワクワクしてきた!


 高さ2m横も2mくらいの縦割れした穴。

 まっすぐ奥に続いている様だが、明かりは有ったかなぁ?

 アイテムBOXを探してみるが、そんなものは無い。

 最初に来た時のリュックには入っていたが‥‥‥

 あっ!そか!リュックごと持ってた。てへぺろ。

 ・・・誰も居なくて良かった。


 リュックからLEDライトを出して中に入っていく。

 LEDライトが妙に場違いだが、しょうがないだろう。

 川〇浩探検隊のように懐中電灯ならば雰囲気もあっただろうが、時代の流れには逆らえない。

 しかし、原〇猿人バ〇ゴンより怖い牙猿は既に仲間だし、巨大〇蛇ゴ〇グ や骸骨などは遠慮したいところである。

 川〇浩探検隊さんのテーマ♪を口ずさみながら奥に進みます。


 特に分かれ道も無く、地下に降りる感じも無く、くねくねっと曲がった洞窟ですが、明るくなってきました。

 ダンジョンとかを想像してた俺としては、ちょっと期待外れ。

 久々の登場で張り切っていた『剣』も不満そうです。



 洞窟を抜けて、開けた場所で見たものは!


「「「キャアァァァーーーーーー!!!!」」」


 いや、聞いたものは女性の悲鳴!

 そこには、

「人魚さん??」


「人間よ!みんな逃げて!」


 数人の人魚さんが水中に逃げていく。

 ここは!?

 島の真ん中はドーナツ状に開けていて、洞窟から抜けたところは砂浜になっている。開けた場所の2/3は海で、周囲は断崖絶壁に囲まれた岩場である。

 水の中で外海に繋がっている様だ。


 あっけに取られている間に、人魚さんたちは居なくなってしまった。

 なんか、悪いことしたな。

 邪魔をするつもりは無かったんだが‥‥でも、言葉は分かった。

「人間よ!逃げて!」って事は、人間は彼女たちに危害を加える存在なんだろう。

 エルフとかが来れば、話は聞いてもらえるのだろうか?


 少し待ってみようかな。

 ・・・・・・・・・・・

 しばらく待ってみたが、人魚さんたちは戻ってこなかった。


 しょうがないか。

 外海に戻って、何か食うか。

 海の魚は久しぶりである。小鯵やメジナの小さいのでも捕れれば嬉しいが、幸い今は干潮の時間帯だから、潮溜まりで何か獲れないかな?


 周囲の岩場を巡って、何か居ないか探すが、小エビや小さいハゼやカニばかりで食えそうな獲物が居ない。

 リュックから折り畳みバケツを出して、『金串』や『バール』を呼び出す。

 膝くらいまでの深さの場所で、岩を持ち上げる。岩を起こすと言った方が正解か?岩の下に居る、ウニやトコブシ、アワビ、石蟹をバケツに集める。『バール』で岩につっかえ棒をして、『金串』でアワビなどを剥がす。あまり人間に荒らされて無いらしく大量である。

 時にはタコなんかも居たりして、テンション爆上がりで夢中になって獲った。

 他にもシッタカ貝やイセエビの影も!これは、触角を掴もうとしたら、一瞬で消え去ってしまった。‥‥残念。


 日本の海なら、荒らされまくって、プラスチックや流木のゴミだらけで、下手に貝でも獲ろうものなら、漁業権云々でしょっ引かれて犯罪者である。


 やっぱ異世界は良いなぁ~~!!と、久しぶりの海を満喫して思った。

 生物も、日本と余り変わりなく奇抜なものが少なくて良かった。

 中には、オウム貝?とか、こんな浅瀬に小型シーラカンス?が牙剥いて来たり、その辺にクジラもどきが近づいて来たりでビックリした!


 後は、遠くに跳ねた怪獣?ジュラ紀の恐竜?あれはヤバい!

 人が作ったジュラ紀の公園だって、あっさり破壊されたんだから、あいつらに構っちゃダメだろう。俺の心はそう叫んでいる。

 さっき、流された時にあの怪獣に見つかってたら、パックリ行かれたのは間違いない!海に出るときは、気配感知を最大限に警戒しないと生きて帰れない。

 帰ってトゥミやサラ達と幸せになるんだから、食われる訳には行かない。


 外海側に居て、美味しく頂かれちゃうのはイヤなので、人魚さん達の居た内海に移動します。洞窟通過は、当然、テーマソング付き♪


 まぁ、その辺は置いておいて、獲った魚介の鑑定から!

 うん!大丈夫♪美味しく頂けそうです!

 アイテムBOXは生き物入らないんだけど、ウニや貝は大丈夫みたいだ。

 エビやカニはダメみたいだね。茹でればOK!


 取り敢えず、シッタカ貝とトコブシを鍋で甘辛く煮付けます。

 タコは塩揉みして、海水でサッと湯がく。

 石蟹とアワビはタワシで、ガシガシ洗って、カニは味噌汁。

 アワビは当然、バター焼き!!


 岩場に料理を並べます。

 そういえば此処には、フナムシさん達はいないですねぇ~。良かった!

 海の幸を頂くには、やはり日本酒ですね!

 日本酒も出して、アワビのバター焼きの準備もOK♪


 一人で乾杯!と夕焼けの空を見ながら、くいっと行きます。


「く~~っ美味い!」


 次はタコの刺身というか茹でタコを一口!予想以上に柔らかく、それでも味はしっかりしたタコに大満足!ただ、醤油は有るけど、ワサビが無かった。

 シッタカやトコブシも安定の美味さですね。全体的に、素材の旨味が非常に強くて、こりゃ飲み過ぎちゃいますね。


 では、いよいよメインのアワビのバター焼き!

 バター持ってて本当に良かった!

 牛の姐さんのプレゼンの時に、結構使っちゃったけど、また大量に仕入れて来よう。自作バターは当分先だろうしね。


 フライパンも温まったところで、アワビの貝を下にして投入!

 グネグネと動く姿が少々グロい気もしますが、直ぐにバターも投入!

 蓋をして少し待って醤油を垂らすと良い感じに仕上がります。

 長く焼き過ぎると、固くなるので要注意!

 トコブシでやっても良いんだけど、アワビが獲れたからね!


 ナイフで切ってパクリと♪‥‥‥うまぁあああぁいぃ♪

 日本酒もくいっと♪


 ご機嫌にやっていたら、何かが近づいてきた!







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