第22話 牙猿のお風呂トライ

 牙猿を配下に加えてある日‥‥

 ボス?お前臭くない?


「はっ?何時も通りですが?」


「お前たちって風呂入ったことある?」


「はっ?それは一体何者ですか?」


「だよね~!んじゃ、嫁3人呼んでくれる?」


「ん???ここにあの3人必要ですか?」


「あぁ。今後の為にも彼女たちの協力が必要だからね。」


「はぁ‥‥‥?」



 嫁3人を風呂場に呼んだ。ボスは不思議そうな顔をしている。


「今からね、お風呂の入り方を教えるよ。」


「「「「????」」」」


「ボス、ココに来て座って。」


「はぁ‥‥‥」


 湯船はお湯を満タンに張っておく。

 ボスを座らせて、嫁1を呼ぶ。

 ボスに頭からお湯を掛けてあげて。

 ‥‥‥最初は躊躇していた嫁1だったが、意を決してお湯を掛ける。


「主がそう言うんだからね?」


 お湯を掛けられたボスは、最初ビックリして声を上げていた。

 俺に黙って座っていろと言われて、黙って我慢している。


「ふぅ~~~~~。」


 何度かお湯を掛けられて、気持ち良くなってきたようだ。

 更にお湯を掛けて、今度は頭から順にそのまま洗っていく。

 ボス嫁3人に体中をワシワシと毛を濡らして洗われるのは気持ち良いようだ。

 そこで、シャンプーの登場である。

 十分濡らした毛を、今度はシャンプーでワシワシと洗っていく。


 この頃はボスはもう恍惚とした表情で、されるがままである。

 全身を嫁3人によりシャンプーで洗われて、気持ちの良くないハズはない。

 余計なトコまで気持ち良くなって元気になっている。‥‥デケェ

 そして全身をお湯で流される。

 終わる頃には完全に腑抜け状態になって、タオルでガシガシと拭かれた後は、もうすっかりふわふわのモフモフ状態で完成である。


 これには嫁3人が食いついた!!

 ボスが終わって次は嫁1の番である。

 洗い手に、次の女性No4が呼ばれる。そうやって順番にモフモフが完成していく。

 嫁1が出てきた時には、さすがの俺も抱き着いてモフモフしたかった!

 ボス怖いからしないけどね。


 女性達が終わった後は、牙猿(♂)達が、順に番の牙猿(♀)達に餌食になっていく。

 番の居ない牙猿(♂)達は、ボス監視の下、牙猿(♀)に洗われて行く。

 もう全員モフモフのフワフワ、ピカピカである。

 モフりたいが、そんな訳にはいかない。

 さすがに牙猿(♂)は嫌だし、牙猿(♀)をモフって番認定された日には、何か大切なモノを失いそうである。


 牙猿のお風呂トライがこんなに上手く行くとは思わなんだ!!


 これが、継続出来たら良いなぁと思っていたが、これは牙猿(♀)達が妥協を許さなかった!いろんな草を採取して、シャンプーになる?リンスになる?これはトリートメント?草や木の実などを混ぜ合わせて、香り良く?仕上がり良く?指通り良く?


 牙猿達に知恵が付く!なんてのを通り越して、俺より遙かに賢くなっている気がする。この研究熱心な彼女たちには戦慄を覚えた!


 そうやって様々な草や木の実を検証する中で、発見もあった! 

 そんな中にオリーブの実らしき物があったのだ!

 鑑定で見ても確かにオリーブの実である。

 ドコに有ったのか聞いたら、ものすごく遠かった‥‥そりゃ彼らの移動速度は、ハンパなく速いから、なんて事無い距離なんだろう。

 俺にはとても無理なんで、オリーブの木ごと移植する事にした。

 これが牙猿シャンプーとリンスのツヤツヤの秘密兵器かも?と期待している。


 そうして出来上がった、牙猿シャンプースペシャルと牙猿リンススペシャル!

 まだこれは、彼女たちだけで研究中なので外には出さない。


 後日、トゥミ達がやって来た時も、俺が用意したのはエコシャンプーとエコ石鹸などである。


 やはり、女性の力が素晴らしいのは認める。

 しかし、その後のボス達、牙猿(♂)達は、風呂には入るが、何となくゴワゴワである。牙猿(♂)達はどうもシャンプーで洗った後にリンスをするってのが面倒くさくて、石鹸で洗っている様だ。そりゃゴワゴワになるよね。


 牙猿(♀)と入ってる間は、ちゃんとシャンプー、リンスをするが、牙猿(♂)が単独で入るようになると、面倒くさくて止めてしまう。

 これは、チャンリンシャン(ちゃんとリンスできるシャンプー)を開発しなければイケナイかな?ただ、需要はあるか?牙猿(♀)と相談しなくてはいけないだろう。


 牙猿たちが風呂に入るようになってから、嬉しい副作用もあった。

 風呂に入るようになったら番が増えたらしいのである。

 互いにツヤツヤピカピカになれば、牙猿たちの目にも魅力的に映るらしい。

 そうして番が増えるのである。


 と、いう事は、来年には出産ラッシュが始まるのでは?と、思っていた。ところが、牙猿の妊娠期間は半年くらいらしい。寿命も長くて50年くらいで長寿では?と、聞いたのは後の事。


 実際の繁殖時期はもっと早く、とっくに終わっている時期だが、風呂によって遅咲きとなってしまった。本来は秋に産むか春に産むかの筈が、真冬に産むことになってしまう。生活の安定した人間との暮らしでは、動物の繁殖期は乱れると言うのは本当なのかも知れない。魔物も動物扱いで良いのか?まぁ厳密な違いなんて知らないし、一緒で良いだろう。


 と、なると牙猿には家を作った方が良いだろう。雨風凌げて、安心できる暖かい家を。ベイビーの為には安心して暮らせる家が必須ではないかと思っている。

 基本的な牙猿の巣を手本にして家を作るのが良いだろう‥‥しかし、牙猿の巣って言っても、木の上でデカい鳥の巣と周りを囲う木の枝くらいで、さして変わった巣ではない。‥‥長屋の様な家を作って、たくさん住めるようにすれば良いか?

 水回りまでは考えないでも良いか?どうすれば、牙猿が満足出来る家になるかな?


 しかし、この後、牙猿(♀)達は今度はファッションに目覚めてしまう。

 お風呂でモフモフフワフワになった後、お気に入りの服を着る。

 これが彼女たちの琴線に触れまくった様だ!

 まだ、色も少ないし、更に格付けのために色の制約も多い。

 だが、俺自身が余計な事を言ってしまった!色を合わせる事を教えてしまった。

 メキメキと知識を吸収し色々な考え方を学ぶ彼女たち。

 そんな彼女たちにファッションを教えてしまったら、もう、止まる術はない。


 もう、猿〇惑星どころか、コ〇ネリアスもビックリな進化である!

 俺の『道具』達の中に裁縫道具があるか??これは‥‥確認するのも恐ろしかった。流石にお祖父ちゃんもお裁縫は祖母ちゃんに任せていた様だ。

 次回、日本に帰る際のリクエストが膨大な量になることは確定した。


 前回、日本に帰って、家にソーラー発電を乗せて、蓄電池も設置した。

 実際にこちらに帰ってからは、牙猿達との抗争と和解。

 さらに、トゥミ(エルフ)達との抗争?と和解。

 どちらも抗争と言うほどじゃ無いかも知れないが、俺の中では抗争である。

 真面に喧嘩すらしたことない俺が、殺生して口頭でも正当性を訴えた!

 ‥‥牙猿達相手ですが。

 有りもしない武力を誇示してエルフを黙らせた。

 ‥‥騙しただけですが。


 実際に牙猿達は遷移隊を返り討ちにしただけだが、今も遷移隊の二人は俺のアイテムBOXの中である。いつか頃合いを見て、ボスに話して墓でも作ろうと思っている。返り討ちにしたことは当然だと言ってくれた。強い奴が勝つ!と、しかし仲間の亡骸を持っているのは別問題だろう。首を刎ねられたのを見せられるのは尋常じゃ無いだろう。これは話さない方が、見せない方が良いのか?

 こっそり、ボスに相談だな。


 トゥミ達は、風呂に関して牙猿達に説明されると言うのが衝撃だったようだ。

 森では、エルフ以上の知識人は居なかった。それを、力では敵わないが、知恵では勝るはずの牙猿に教えられる。本来牙猿は魔獣で、本能で生きていた筈だ!それがエルフである我々に知識を教えるのである。こんな屈辱はない!

 だが、実際に、あの真悟人の周囲に居る牙猿達には全く叶う気はしない。ここで、プライドを捨てられるのが長老としてエルフを導いてる所以だろう。


 話を聞くと一言。真悟人様に教えられた。

 お風呂?真悟人様に教えて貰った。

 知恵?‥‥服や道具は真悟人様に教えて貰った。

 統率?‥‥皆で行動するのは真悟人様に教えて貰った。


 この日のヴィトンの衝撃は、計り知れない物だったろう。


 折角付けた太陽光発電は、まだ日の目を見ていない。


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