第20話 移住計画

「真悟人は嫁は娶らんのか?」


「ん?嫁か?‥‥まだ、ここへ来て日が浅いからな。知ってる女性はトゥミしか居ないし、歳が合わん!牙猿たちは論外だしな!はははっ。」


「歳?真悟人は幾つになる?」


「俺はもう、40過ぎだよ。トゥミとは親子位になっちまう。」


「40過ぎ‥‥真悟人はエルフの血を引いておるのか?」


「はっ?何言ってんだよ?遠いとこから来たんだ。そんな訳ないだろうに!」


「ふむ、人間の40過ぎなら、そんな見た目じゃないだろうから、てっきりな。」


「何?若く見えるって?嬉しい事言ってくれるねぇ。まぁ飲んでよ!」


「ん?うむ。(自覚は無いということか?)‥‥40過ぎならトゥミとも合うと思ってな。」


「ん?トゥミと合う?そりゃないだろ?どう見てもトゥ‥‥」


「トゥミは今年45じゃ。もう、今年で成人の筈じゃな。」


「はっ?えっ?どういう‥‥?」


「エルフは寿命が長い。人間の3倍くらいかの。だから若い期間が長いんじゃよ。子を産める期間が長く無いと絶えてしまうからの。」


「そうか、そうだったかぁ~‥‥子供と思っていたが、だからあの危機管理だったかぁ!年頃の女性なら当然だよなぁ~。」


「なんじゃ、トゥミを子供と思っておったか?ほっほっほ!」

「儂から提案があるんじゃが?受けてくれんか?」


「提案?俺が出来る事なら‥‥まぁ、先ずは聞いてからだな。」


「ここに何人か、儂らの仲間を住まわせてくれんかの?」


 提案は、こうだった。

 これから、ココと仲良くして行きたい。

 しかし、現状は真悟人と牙猿たちしか居ない。

 だったら、エルフも入れて、村として大きくしないか?

 と、いうものだった。提案としては悪くない。しかし‥‥‥


「でも、好き好んでココに住みたがるヤツなんて居るかなぁ?」


「それは心配に及ばんよ。すでに1人住みたがってる奴もおる。ほっほっ」

「何人来るかは、帰ってからの相談じゃが、決まったら追って使いを出す。どうじゃ?受けてくれるか?」


「分かった、牙猿たちにも聞いて見るから、反対されたら諦めてくれ。」


「うんうん。それで良いぞ。」


 そうやって、エルフ移住計画が始まった。

 村への第1歩である。

 ヴィトンたちは、翌日の昼にはここを出て、村の皆に詳細を話すらしい。

 夏に向かって、野菜の収穫も始まるから、移住計画を早く進めたいのだろう。


 翌日の朝礼で、牙猿たちからは特に反対意見は出なかった。

 そして、いつもの約束事の唱和!


 それを遠巻きに見ていたヴィトンたちは、ひどく感心していた。


「こんな方法で、全員への連絡と気持ちの統一が図れるのか!是非うちでも‥‥」


 大げさである。

 こんなことで気持ちの統一は図れない。ここは特殊なのだ!

 まぁ、言わないが‥‥‥


 朝は大鍋で味噌汁を作った。

 いわゆる豚汁であるが‥‥肉はイノシシ?っぽい何かのようだ。

 肉もジャガイモも人参もネギも有るが、コンニャクは無い。

 コンニャク芋の入手を考えなければ!心のメモに書いておいた。


 味噌汁を飲んだヴィトンたちはここでも、


「この汁の味付けは?‥‥‥いったい?‥」


 ブツブツ言ってるようだが、まだ大豆の栽培が確認されてないから無理だよ。

 ちなみに、トゥミと従者二人は、


「お代わり!♪この汁はヒジョーーに美味い!♪」


 気に入ってくれて何よりである。

 ここで、ふと気付いた。‥‥彼らは、塩は?どうしてるのだろう?

 気になったら聞いて見る。


「塩か?商人から買っておるが、近くの山から少量の岩塩が採れる。余り質は良く無いが、それで賄っておるの。」


 そうか、塩や香辛料は昔から貴重品立った筈だ。

 日本だって昔は、塩は専売公社で値段を決められて管理されてたと聞いた。

 俺が塩を持ち込んで売るよりは、岩塩の精製方法を調べてみるかぁ。


「商人から買ってるのか。海は近くないのか?」


「海はココと逆の方向じゃな。丁度同じくらいの距離じゃろ。」


「海があれば塩が採れるだろう?」


「海の水から塩が採れるのは知っておるが、方法を知らん。人間も厳重に秘密を守っておる。‥‥それに海には魔物が居る。やたらと近づくと襲われるの。」


「あぁ、そうか。分かってても近づけなきゃ試しようも無いよな。」


「そういう事じゃの。分かってても中々思うようにならん。今回、真悟人が来てくれて、それが大きな前進じゃろう。」


「そうか‥‥期待に添えるように色々考えて見るよ。」


「ほっほっ、無理はせんで良い。先ずは少しづつ進めて行こうかの。」


「あぁ、分かった。エルフ移住計画。こちらも進めておくよ。」


 そんな話をしてるうちに出発の時になる。

 トゥミは絶えず何か話したそうにしていたが、なかなかそんな機会が無かった。


「それじゃ世話になったの。」


「いいや、またいつでも来てくれ。ここに住む皆が来るとき一緒に来るんだろ?その時また一緒に飲むべ?」


「あぁ。そうじゃの。楽しみにしとるの。」


「真悟人‥‥‥」


「トゥミ。お前は来るのか?」


「真悟人!来るよ!絶対来るから!」


「おぉ!楽しみにしてるからな!イイ女になって戻って来いよ!(やべ!余計な軽口を)」


「!!うん!絶対イイ女になってくるから!(キャーキャー♪)」


「では、ありがとうございました。またお目に掛かるのを楽しみにしております。」


 従者二人は相変わらず固いなぁ‥‥でも弁当にした肉を見て、

 めちゃめちゃテンション上がってたのを俺は知っている‥‥くすっ



 エルフ一行は来た時と同じようにヴィトンがユニコーンに乗って帰って行った。

 ‥‥‥所で、ユニコーンって誰が面倒見てたんだ?


「はい!イエローとピンクです!」


 最近知ったが、どうやらイエローとピンクが雌のようだ‥‥‥って、

 雌って言い方がどうも良くないらしく、牙猿(♀)たちもちゃんと女の子扱いしないと拗ねてしまう。牙猿(♂)たちも困惑してるようだが、どんな世界でも雄(♂)が雌(♀)に敵う訳はなく、牙猿世界も改革の波が来ているらしい。


 一番大きなところは、牙猿(♀)が羞恥心を持った?

 ある日、牙猿(♀)が全員でやって来た。彼女たちは牙猿(♀)なので、当然、乳房がある。それを隠したいと。牙猿(♂)の視線がイヤらしく感じるとの訴えだった。


 あ~、人間(♂)の俺には女性の気持ちは分からない。

 男性は女性を性的な目で見るが、女性はそうと限らないのは聞いたことがある。

 牙猿(♀)の話を聞いて、アダムとイヴの創世記を思い出した。禁断の果実(リンゴ)と、身体を隠すイチジクの葉!‥‥彼女らに創世記到来か!!!


 なんて、大げさなものではなく、身体に巻き付ける布が欲しいと。単純に胸元から膝上までに巻き付ける布。‥‥‥実は布も反物で用意してた!

 一反(1.12mx46m)と言うモンを用意してたが、問題は色である。

 用意してた色は10色‥‥誰がどの色を使うかで揉めた。

 女性のファッションに対する情熱はどんな世界でも変わらない。

 ましてや創世記を迎えたばかりの牙猿(♀)たちも例に漏れず、拘りを主張している。


 しょうがないので、俺の居た国の話だが、色によって位を決める職業があった。

 偉い順に、赤⇒紫⇒緑⇒黄⇒水⇒茶⇒黒 と、教えたらすんなり決まった。

 ボス嫁1が赤、ボス嫁2が紫、ボス嫁3が緑、以下それぞれで決めたようだ。

 その後、牙猿(♂)達もこの波に飲まれるのである。


 ちなみに、イエローとピンクは、黒の布に黄色のリボンと、黒の布にピンクのリボンを付けていた。‥‥これが後に大ヒットするとは、今はまだ知らない。


 閑話休題

 イエローとピンクはユニコーンの世話をしてくれていた。

 伝説では、ユニコーンは処女にだけ心を許すと‥‥彼女たちは‥‥ゲフッゲフッ

 ユニコーンよ、牙猿でも良いのか?‥‥遠い目になってしまった。

 しかし、ヴィトンのおっさんを乗せてきた(いきなりオッサン扱いか)と、言う事は、周囲に処女が居て命令すれば、‥‥チッ!しょうがねぇな‥‥と、いう事を聞くのか?‥‥‥この場合は、トゥミだろうなぁ‥‥

 オッサンのしょうもない妄想は続く‥‥‥


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