第15話 帰還

 川で石を拾った。

 山で木を拾った。

 山の恵みも拾った。

 木も、水も、土も、石も、草も、動物も、山から分けて貰った。


 日本から異世界に来て、もうすぐ1ヶ月!

 この世界にだいぶ慣れてきた。

 この世界の『道具』たちに助けられて、トイレも作った!風呂も作った!竈も作った!畑も作ってる!水道も作った!‥‥‥これが一番大きいだろう!

 最初は湧き水から水路を引こうと思ったが、一日に100リットル余りの水じゃ、風呂にも入れない。

 川から水を引く?離れすぎてて論外!

 実は道具棚には、『井戸掘り』の道具があった!


「おぉーー!!これは!!何とかなるかも知れない!!」


『井戸掘り』は『ハンドオーガー』と言うらしい。これで向かいの畑の脇で、ゴリゴリと掘っていく。パイプを何本か繋げて、5mくらい掘った時にいきなりジャリジャリと柔らかくなった。ゆっくりとパイプを抜いていくと、穴から水がせり上がってきた!


「いやった~~!!水が出たぜぃ~~♪」


 後は、周りを石で囲んで、パイプを突っ込んで、家と風呂場にパイプを引く。

 畑の方が家の位置より高いので、台所の水瓶にも、風呂場の泥船にも、ジャバジャバと水が出る。

 これは!嬉しい!毎日の水汲みから解放されて、更にスライムも家に(風呂場に)居つくようになった!

 ちなみにスライムに聞いてみた。トイレなどの浄化槽にスライムが居たらキレイになるのか??

 答えは、イエス!‥‥‥ただ、それなりの広さと数が居なければ役に立たないらしい。話せるスライムの彼は位階が上がって、とてもそんなことはしないそうだ。また川にでも行って、浄化スライムをスカウトしなければ!‥‥‥スライムをスカウト!と言って一人で笑っていたら、とても可哀想な表情で見られてしまった。

 だって1ヶ月も一人で居たら、そんなもんだって!言い訳も空しかった。


 もうすぐ日本に帰れる。日本に帰ったら必要なもんを買い漁って、こちらに戻る準備をしなければ!必要なものはある程度書き出したが、まだまだ足りない気がする。

 婆さんの金は、有難く使わして貰おう!


『異界の指輪』に確認。‥‥‥ちゃんと帰れるらしい♪


 ヨシ!一旦帰ろう!

 ‥‥‥アイテムBOXに入っているものがどうなるか分からないので、一旦搬出!石は裏に積み上げて、水は裏の小川に流そう‥‥‥思ったが大変な事になりそうで、水は中に入れたままにする事にした。


 では、‥‥‥‥‥‥覚悟ヨシ!


 ・・・・・・・・・飛べ!・・・・・・・・・・・


 あの酩酊感と浮遊感・・・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 着いた?帰ってきた?

 窓の外を見てみる。‥‥‥帰って来たぁ~~!!

 懐かしい日本の街並みだった!ほんの1ヶ月なのに、ものすごい久しぶり感がする。


「帰って来たかい!」


「ゲッ!!婆さん!居たのか?」


「なんだい?ゲッ!って?ったく、失礼な子だよ!」


「あぁ、そりゃ失礼!それより、婆さんはずっとココに居たのか?」


 家の中を見回すと、小奇麗になっていて、ちゃぶ台まで置いてある。

 婆さんは座ってお茶を飲んでいる。


「まぁ座んな!今、お茶を入れてやるよ。」


「あぁ、すまんね。家の中が随分と奇麗になってるけど直したのか?」


「いいや、あんたが向こうで頑張ってるおかげだね。」


「ん?どういう事だ?」


「ほれ、お茶。」


「お。ありがとう。」


「あんたが向こうで頑張れば頑張るほど、こちらの家も改善されていくって訳だよ。おかげでトイレも出来たし、風呂にも入れるようになったね!当然、井戸からの水道も出るよ!‥‥‥頑張ったね!」


 婆さんに褒められた。人に褒められた事の無い俺は、嬉しいやら恥ずかしいやらで、どんな顔して良いのか分からない。多分、顔は真っ赤である。


「後は、『道具』達にちゃんと認められたのも偉いね!こんな早く認められると思ってなかったよ。」


「‥‥‥『道具』達は本当に助かってる。あいつらが無きゃ直ぐに死んでたろう。本当に感謝してるよ。」


「ほっほ!祖父さんもきっと喜んでるよ!大事に使ってくれて、役に立てば本望だってね!」


「ちょっと聞きたいことがあるんだが良いか?」


「なんだい?答えられる事なら教えてやるよ。」


「道具や工具って増やすことは出来るのか?例えばホームセンターで買ってきて置いておけば,同じ様に使えるのか?後は、電動工具やエンジン式の工具とかはどうだ?」


「物に因るね。変な安物置いておいても、同じようには使えないだろ。ちゃんとしたプロの道具なら、もしかしたら使えるんじゃないか?・・・・電動やエンジン式を持ち込んでも使えるだろうが、『道具』達とは同じようにはならないよ。チェーンソーや草刈り機かい?電動ドライバーとかだろ?やってみな?持ち込むことは出来るさね。」


「そうか‥‥‥じゃあ、この家にソーラーパネル乗っけて蓄電池置けば、向こうで電気使えるか?」


「使えるよ。使えるが、余りこちらの物に頼ると、きっと困る。自分でよく考えるんだね。」


「そうだよなぁ。じゃあ後は、あの謎結界!どっからどこまで謎結界の範囲なんだ?どんだけ持つんだ?」


「あぁ。ありゃあたしの結界だよ。家周辺に掛けたね。イキナリ死んじゃ困るからね!あたしの結界を抜ける奴は、そうそう居ないさね。‥‥‥ただ、1年だけだよ。1年経ったら結界は消える。必要なら自分で掛けられる様になりな!」


「あぁ。あれは、助かった。あの謎結界が無かったら、即死亡エンドだった。‥‥‥ありがとう。助かった。あの結界は、自分でも掛けられる様になるのか?」


「ふん。初心者特典って奴だよ!‥‥‥ちゃんと精進すれば、結界どころか魔法が使えるようになるかもな?ただ、全てお前さん次第だよ。」


「そうなのか‥‥‥魔法って・・・」


 コンコンコンコン!


「こんにちは~~!お婆ちゃん居る~~??」


 突然のノックに心臓が飛び出しそうな程、ビックリした!

 そう言えばここは今、当たり前に人が行き来する日本なのだ!


「あいよ!居るよ!開けて入ってお出で!」


「は~~い!お婆ちゃんコンニチ‥‥‥あっ!すいません。お客様でした?」


「大丈夫だよ。この子はあたしの孫でね。久しぶりに顔見せに来たんだよ。」


「あっ!お邪魔しちゃってごめんなさいね。」


「いえいえ、大丈夫です。祖母がいつもお世話になってます。」


 突然の事態に狼狽えながらも、ちゃんと話を合わして挨拶をする。


「お婆ちゃんに借りてる畑で収穫できたからお裾分けを持ってきました~。」


「いつも、すまないねぇ、今日は何が採れたんだい?・・・・・」


 やってきた奥様?と婆さんで話が弾んでいる。どうやら、広く買った土地は周辺の家に家庭菜園用地として貸し出している様だ。その伝手で周辺のお宅から色々便宜を図って貰えるらしい。

 婆さん、逞しいなぁ!思いつつも、楽しそうで良かった!。

 奥様が帰った後に、婆さんの手料理は食えないか聞いてみたら却下された。‥‥‥解せぬ。


『異界の指輪』で日本から異界に飛ぶには制限は無いようだ。異界から戻るには、今の俺では最大月に1回が限界らしい。この先増えるかは?日頃の行いという事だな。


 では、異界=異世界に戻る準備を進めよう。

 先ず、ソーラーパネルと蓄電池設備を申し込む。それが最短で2週間後らしい。後は、薪ストーブや薪風呂釜、畳の敷きなおしも頼んだ。新しい畳の匂いは最高だよね♪

 車も一緒に飛べるのが分かったので、預けて整備を頼んだ。タイヤやブレーキパッドも新しく、ポリマー加工もしっかりお願いしておいた。ガソリンの携行缶も大量に準備して、照明類も全てLEDに変更。車から電源取れるようにインバーターも準備。


 婆さんに、極力日本の物に頼るな言われても、異世界での生活が起動に乗るまでは頼らせて貰います。


 後は動物解体用の刃物や手袋やツナギの準備。刃物は良い物を!と、思って刃物工房にお願いして、動物解体と包丁と用途を伝えたら、直ぐに用意してくれた。‥‥‥刃に波紋がある包丁なんてあるんだ?日本刀ですか?ダマスカス鋼製で1本10万オーバー!わお!!でも、すっげーキレイ♪本物の刃物って、見てるとトキメキを感じるんだね!!大小の解体用ナイフと包丁で約50万‥‥‥ラノベで、剣が高価だって話は当たり前に書いてあるが、実際に日本でそうなんだね?!?使う人を選ぶってのも本当だろうね。本物の刃物を見てアワアワしてしまった。

 後は、金属類の準備。SUS304やSUS430、SS400の鉄板各種と網色々、アルミ6000系と5000系、鈑金挟みとドリルで加工できる範囲の物を準備。

 塩ビパイプや鋼管などのパイプ各種!これが種類多すぎて選定に悩んだ。


 こんなもんかなぁ?不足分は次に戻るときだね。

 前回は3月に行って、今は4月‥‥‥次は6月に帰って来れるか?

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