第25話弱き者、だからこそ

「い、いや…」


『大丈夫だ、痛みは感じない。すぐに終わるさ』

 恐怖に顔が歪むクリス

アリスは悲しい顔で、クリスをみる

『…いつもいつも、生け贄の者は同じ顔をするな…』

 アリスは、右手をクリスの左頬に手を添える

『むしろ喜んでほしいのだがな…ルーグ家の為、未来の為、己自身の為に…』


「バルドォ!」

 リズルが、アリス達に向かってきた

「リズルさん!」

 声に反応して、クリスも叫ぶ

だが、リズルは見えない壁に弾かれ、吹き飛んでいく

「くそっ!クリス!アリス!!」


「アリス、リズルさんが!!」

 アリスは無表情でリズルの様子を見ている

『ふん、やはり能力の無き者など無価値…こんな結界さえ破れんとは…』


「アリス…」

 クリスに呼ばれ、アリスはニコッと笑う

『…クリス、君がいるルーグ家は、この儀式…そう、君みたいな生け贄がいて成り立ってきた。見てごらん、この世界でとても、ちやほやされてきただろう?』


『君の大好きなパフェも、親もみーんなルーグ家の能力があってこそ…』


「そんなこと…」


『そんなことっ!』

 突然、クリスの言葉に語気を強め、怒鳴りだした

『この世は弱肉強食。力が無きものは生きていけない!弱いものはそこらで寝転んだり、地団駄でも踏んでおけばいい。だが、強くなる方法があるなら、誰だってそれを選ぶだろう?』

 

「いや、アリス…目を覚ましてよ」

 

『アリス?君の知っているアリスはもういないよ?この体の中、どっかに行っちゃったね、この体はもうバルト・ルーグだ…』

 クスクス笑うと、身体中を触り、納得したようすなバルド

『この体はとてもいいね、僕の波長とよく合う…このまま乗り移り生きようか…』


クリス達から少し離れた本部の壁沿い

リズル達が集まり、この状況を相談をしている


「くそっ!カフルさん!リリスさん!何か方法はないのですか?!」

 二人に詰め寄るリズル

だが、カフルは首を横にふり一言

「……ない」

と小さく答える

「ですが!」

 

「先祖代々儀式を終わらそうとしていた。だか、ここまで来ると誰も止められん…」

 カフルは自身の両手を広げる

その手にカフルの涙が一粒、二粒落ちてきた

「それにもう、私らも長年儀式をしなかった為、もうルーグ家として魔力は、ほぼゼロ…手がつけられん…」


「そんな…」



『さぁ、始めるよクリス…儀式の開始だ!!』

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