第21話今日は、私達の……

クリスの部屋の前、リズル少佐とアーベル大佐が、兵隊から連絡を受けていた


「そうですか…」


「連絡、感謝する」


「はい。それでは、失礼します」

 兵隊は敬礼をすると、二人のもとを後にする

二人は浮かない顔で、兵隊を見送っている


「どう思います?」


「わからん、とりあえず上の言うとおりにするしか…」


 その時、ガチャっと音と共に、部屋が開くとクリスがひょこっと顔を出す

「二人ともどうしたの?」

 不思議な顔で、二人を見る

「なんでもないよ」

 リズルが、ニコッと笑い答える

「ふーん…」



 ちょうどその頃のノーツ医師

「ったく、擦り傷ごときでギャーギャーと…」

 医務室に戻る途中、隊員に切れていた

「この国のトップクラスの魔術使いが集まる場所ってのに…」

 文句を言いつつ、部屋の前に着くと足を止めた

「あれ…?誰もいない?」

 医務室の前にアリスの為にいたはずの隊員達がいない

不信に思いつつ医務室を開けると、部屋には不穏な雰囲気が漂っている


「…なにが?」



同じ頃、クリスは何故かまだ二人の顔をジィーっと見ていた

「クリス、どうしたの?部屋に入ろう」

 リズルが不思議そうにクリスに話しかける

「なんだ?お腹すいたか?まだ10時…昼前だが何か食べるか?」

 クリスの部屋の時計を確認しつつ、アーベル大佐がクリスに話しかける 

「えっ?」

 クリスがアーベル大佐の言葉に反応する

「もー、アーベル大佐…」

 呆れ顔で、アーベル大佐をみるリズル

「じゅう?」

 クリスが静かに呟く


「お腹が空いてはなんとやら、と言うじゃないか」

 アーベル大佐は、ははっと笑う

だが、クリスは笑うことなく、何か考えている

「クリス、どうした?」

 そんなクリスの様子に気づいたリズル

「あれ?今日…」

 クリスがまた呟く 

「今日?」

 リズルはクリスの顔をみる

「リズルさん、今日…」

 クリスもリズルの顔をみる



 ノーツ医師がアリスがいたベットに近づき、布団をガバッと取り出す


「アリスがいない!」



 クリスも何かに気づき、二人の顔を見る

「今日は、私とアリスの10才の誕生日!!」


「えっ?」


その時、ドンッ!と大きな音と共に、地鳴りが本部全体に起こり、大きく揺れ動く


「何が起こった?!」

 リズルが叫ぶ

「10才の誕生日…」

 アーベル大佐が呟く

「まさか!」

 リズルが気づく

「今日、双子の災いが?!」



ビービービー、と警報が本部全体に鳴り響く


<医務室より、アリス・ルーグが行方不明。至急避難を開始せよ。繰り返す>



 不快な音と警告が本部全体に鳴り続け

がらがらと建物が壊れていく

医務室から少し離れた場所から人影が表れた


『クリス…どこ?』

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