少女傑イト

以医寝満

第1話 初夜 

 こんな世界は大嫌いだ。


 驚きのあまり声を上げる事すらできなかった。驚きが明確な恐怖に変わったころ、私はどこかの岩場で男たちに押し倒されていた。

 

 手を縛られ、男に担ぎ上げられて運ばれたらしい。

 運ばれている間、口を塞がれてはいたものの目は開いていたというのに、私はここがどこなのか、馬車からどれくらい離れているのかも分からなかった。

 辺りが暗かったからか? いや白状しよう。恐怖故だ。

 恐怖で何も分からなくなってしまった。

 しかし、暗闇に目が慣れた今、私がこれからどうなるのかは明白だ。

 こんな闇夜の中にあって尚、火を見るよりも明らかだ。

 男たちの期待と興奮の入り混じったような下衆な笑みが、縛られた両手を私の頭の上で押さえつける汗ばんだ掌のじっとりとした感触が何よりも雄弁に語っている。

 犯される。

 逃げようと先ずは両手に力を込めた瞬間、ものすごい力で締め上げられた。

 夜目が効くようになって以降続いた不自然なほどの冷静さを保っていられたのはここまでだった。

 痛いどころじゃない! 腕が! 潰される!!

「おっと、あんまり動くんじゃねえぜ? 服が脱がしづれえからよぉ~」

「手が滑って肌まで切っちまうかもしれないぜ? 嫌だろ?ハハハッ!」

 私の顔の前でナイフをひらひらと振って見せた男は、そのまま私のシャツの襟をつかんで器用にも一太刀で全部のボタンを切り飛ばした。

「な? 大人しくしてりゃその可愛い顔にゃ傷、つけねえからよぉ」

「ヒュ~! この顔にこの肌! それにこの黒髪ときたもんだ! これで初モノならいうことなしだな!」

「おい、生娘ならヤるんじゃねえぞ。その方が高く売れるんだからな」

「へいへい、わぁーってるよ。ったく――で? どうなんだよオマエ」

 一番小汚い男が私を問い詰める。口を覆っていた布はもう取り払われているのだがそんなことは関係ない。声なんて出ない。体が震えて、息を吐くのがやっとだ。

「処女かどうかって訊いてんだけどよお! チッ! まあいいさヤッてみれば分かるってもんよ。へへッ」

「だからそれじゃ値が落ちちまうって!」

「うるせえな、これがこの仕事の醍醐味だろうがよ! なあに、売るときゃ初モノって言い張ってりゃバレねえよ」

 男は私の上半身を剥いた。


 もう、ダメなのか――


 恐怖と不明感情の濁流が押し寄せ、全身の力が抜けていく感覚を覚えた。

 男が私の左右の膝をゆっくりと押し開く光景を目の当たりにした。

 いよいよ考えることを止めた。

 五感全てが消えるように、意識を遠く、薄くし始めたその刹那。

 強烈な光が私の目を潰した。

「アッづあ!ああ!!あああああああああ!!!」

 鋭い光と鈍い悲鳴に意識を取り戻した私の目の前で、私を犯そうとした男の肩から上が火に包まれていた。

「ああ!あああ!ああああ!!!あ……ア……」

 男の悲鳴がうめき声に変わって炎と共に消え、顔面から地面に倒れこんだ。

 視界が再び闇に呑まれ、今何が起こったのかさえ整理できず呆気に取られていると、シュボッという音とともにまた光が私を照らした。

 さっきの光ほど強いものではないが状況を把握できる程度には周囲を明るく照らす光。

 いや炎だ。掌の上で炎が揺らめいている。

 訳も分からず視線を上げるとそこでようやく私は一人の女の姿をこの目に捉えた。

 彼女の掌の上で人の頭を包めるくらいの炎が揺れていた。

 どうやら、助かったらしい。

 緊張、緩和。そしてまた緊張と緩和。

 加減の利かなくなった肉体はどこまでもどこまでも脱力し、下限を失った意識はどこまでもどこまでも降下していく。

 深く深く沈んでいく。


「散れ」


 赤い髪をした彼女、エンナのこの言葉より後のことはよく覚えていない。


    ●


 つい数時間前のことである。肌寒さで目を覚ました。あまり心地よい感覚ではない。起き上がって辺りを見回した。


 私は崖の上に立っていた。

 眼下には信じがたい光景が広がっている。

 遥か下の方に見える谷底には、ところどころ蛇のように水が流れている。

 山と呼ぶにはあまりに細く尖った無数の岩山が、剣山のようにそびえ立つ。

 その山々の隙間から、視界の果てに沈む陽が大地を濃く、空を淡く染めている。

 沈みゆく太陽を追うように、大小4つの月が浮かぶ。

 連なる月と月の間や山々の頂の周りを、夕陽を受けてキラキラ光る何かが飛んでいる。


 見たことのない景色だ。

 いや見れるはずのない景色だ。

 後ろは見渡す限りの草原。前は鮮烈な彩度の絶景。上は全天が見渡せるし月が4つも見えている――。

 ああ、きっと夢だ。目覚めたつもりがまだ夢の中なんてよくあることだ

 たしか疲れてソファーで寝てしまった……ような気がする。

 もう十分だ、早く目覚めろ。今日は早いんだ、寝過ごすわけにもいかない。

 いつまでもこんないい景色を見ていられるほど私は暇じゃない。そんな余裕はない。

 最後にもう一度夕陽を拝むからそれで目を覚ましてくれ。

 強烈な光を放つ夕陽が私の目を焼いてつぶせばきっとこの夢から覚めるだろう。

 そんなおぼろげな考えで現実へ戻ろうとする私に、そうはさせぬと言うかの如く崖の下から風とともに現れた何かが私の視界を埋め尽くした。

 驚いて尻もちをついた私をよそに巨大なそれは下から上へ、下から上へとどんどん登っていく。

 ようやくその全体像を捉えたとき私は恐怖で立ち上がることも出来なかった。

 上空で浮揚しているそれがとてつもなくデカいからでも、その羽ばたきが起こす風があまりに強いからでもない。

 目が合ったから。

 私がそいつの目を見たとき、その大きな二つの瞳も確かに私を見ていた。

 恐怖で固まる私を数秒見つめたそいつは瞬きをしたかと思うと、シューっと空気を吸い込んで大きく長く吠えた。

 今まで聞いたどんな音よりも力強い音。

 数十、数百の猛獣が一斉に吠えたような音。

 地響きのような低音とヴァイオリンのような高音が一緒に出ている。

 鼓膜だけじゃない、物理的に全身が震えている。衝撃波そのものだ。

 怖い。失禁しそう。

 太い爪の着いた手と足。手と言うより前足かもしれない。二本足で直立できそうなプロポーション。

 なんというか、そう、図鑑に載ってる肉食恐竜に鱗と翼を付けたようだ。

 目の位置も露わになっている歯の鋭さも肉食動物のそれに相違ない。


 喰われるのか――⁉


 しかし私に長い咆哮を浴びせ終えたそいつは一度羽ばたくのを止めたかと思うともう一度大きく羽ばたくき、私の頭上でぐるりと翻り夕陽の方へと飛び去って行った。

 鈍色の鱗でキラキラと夕陽を反射させながら。

 ああ――ああ――。

 あれが、ドラゴンか。ドラゴン、龍というより竜。その二つに違いがあるのかどうかは知らないが重要なのはそんなことではない。

 問題なのはこの感覚、夢と言うにはリアルすぎる感覚。

 大きな音を聞いたせいだ、まだ耳がおかしい。

 流石にただの夢とは思えない。

 だってこんなにリアルな感覚を伴う夢は見たことがないのだから。

 では現実だと言うのか?

 今目の前にあるこれが全て現実のものだと言うのか?

 理解が追い付かない。

 ようやくゆっくりと立ち上がることが出来たのに、フラフラする。

 一体……何がどうなって私はこんなところに――。

「おーい!」

 痺れていくらか曖昧になった鼓膜が揺れた。

 声だ! 人間の! 女の声!

 後ろから聞こえる。

 振りむいて声の方をよく見ると草原の中にこちらへ近寄ってくる人影が一つ見える。

 ああ人間だ。きっと知り合いの人間ではないだろうが、少なくともドラゴンと違って人間なら見たことがある。なんというか、その、良かった。

 安堵した私はぽけえっとその人影が走って来るのを眺めている。

 この様子だとここに来るまでそう時間はかからないだろう。

 段々と近づいてくる。やはり女のようだ。少し慌てたような表情をしている。

「大丈夫かよあんた。竜の声が聞こえたけど平気だったのか?」

 女は走ってきた割に息を切らすこともなく、男勝りな口調で私に言う。

「その様子じゃあお説教喰らっただけで済んだようだけど。これに懲りたらおいそれと竜の縄張りに入ったりしないこったな!」

 バシバシと私の肩を叩いてケラケラ笑いながらそう言った。肩がちょっと痛かった。

「でもまあ、気持ちは分かるぜ? 綺麗だもんな、ココ。特にこの時間帯のこの眺めはなあ。ここからじゃないと見れない景色だぜ……」

「はあ――はッ⁉ ク……ぐふんッ!」

 私は声をだそうとして失敗した。

 なんだこれは⁉ なんだこの違和感!

 声を出したらとたんに裏返るような……喉が空っぽのような!

「おいおいほんとに大丈夫かい?」

「ええ、はい――。少しむせただけです」

「本当かい? 妙に薄着だし。ていうか服がぶかぶかじゃないか。そんなんじゃ体が冷えるだろう。風邪でもひいちまったんじゃないのかい?」

「いえ、ほんとに大丈夫……」

「ならいいんだけどね。で、あんた足はあるのかい?」

「足?」

「どうやってここに来たのかって訊いてんのさ。辺りにゃ馬もないようだけど?」

「それは……」

「訳アリってかい? ハァ……ったく。しゃーねーなあ。アタシの馬車に乗せてやる」

 話が急すぎる。ちょっと落ち着いてからにしてもらいたいのだが……。

「じきに夜になる。急がねえとここら辺は冷えるんだ。このままここにいると朝になるころには凍え死んじまうかもしれないぜ。最も、それより先に竜の炎で黒こげにされちまうかもしれねえけどな。それともアンタ、寒くなっても丸焼きにされるなら暖かくて結構だ、なんて言うつもりじゃないだろうね?」

「……凍えるのは嫌です。丸焼きも」

「良かった。じゃあついてきな。馬車は向こうの道に停めてある」

 ここはこの女の言うと通りした方がよさそうだ。それにしてもこの女私より背が高い。

 ブーツを履いているから多少高く見えるだろうがそれ抜きにしてもきっと私より高いだろうな。

 よく見ると変なブーツだ。そもそもこの女の格好が変だ。

 長くて赤い髪を後ろで一つ結びにしてフード付きのマントを羽織っている。

 マントて。

 なんて考えていると女が急に立ち止まった。

「おっとそうだ。アタシはエンナ。エンネルージュ・アラドワズ・テストライト・ジーグントってんだ。立派な名だろ? エンナでいい。あんた、名前は?」

「……名前、私の名前は伊都(いと)府郎(ふろう)です」

「は? イトフロ?フルネームで名乗りなよフルネームで」

「いや、これでフルネーム……ですよ」

「はあっ? 短い名前だねえ……もしかして北の出身かい?」

 “北”とは方角のことではなさそうだったが、それ以上は分からなかった。

「まあいいさ。いいよ気にしないさ。あれ? とするとどこまでがあんたの名でどっからが家の名だい?」

「えっと――『イト』が家の名前で『フロウ』が私の名です」

「ああん? それじゃ、『イトフロ』じゃなくて『フロイト』じゃないか。まどろっこしい! ――フロ、だけだと短くって呼びづらいね、当分はフルネームで呼ぶけど、いいだろう? フロイト」

「ええ、構いません」

 馬車につく頃には私はフロイトなんて名前を付けられてしまっていた。

 フロイト、か……。まいいんだが。

 しかしなんだこの女。フルネームで名乗れとか名前が短いとか。

 妙なことを。それがどうしたと言うんだ。

 まあこうして馬車に乗せてくれたし、見たところ水も食料もある。

 積荷で多少狭いだろうけど暖かいから、と帆の貼ってある荷台に乗せてくれた。

 親切な人間であることには変わりないし、感謝こそすれなんとやらだ。……おやどうやら先客がいるらしい。

「……こ、こんばんは」と、恐る恐る挨拶してみた。

 荷台の先客は褐色の肌に白銀色の髪、紅い瞳が良く映える小さな女の子だった。女の子は声を出さずコクリと頷くだけだった。

 不思議な子だな。

――待てなんだこれは。

「しかし、フロねえ……。アタシ、北にも行ったことあるから分かるんだけど」

 私はエンナの言葉を聞くより早く積荷の中にあった鏡に映る自分の姿を見て絶句した。


「アンタ女のくせに男みたいな名前してんだね」

ああ……私は本当に異世界転生してしまったのか。


    ●


 自称行商人の女、エンナの馬車に揺られながら、私は現実を受け止めきれずにいた。

 疲れ切って帰宅して、目が覚めると異世界で転性していた……。

 信じたくない。こんなバカなことがあるか。

 しかし目の前の鏡には確かに男物のシャツを着た女の子の体が映っている。私が腕を挙げれば腕を上げるし拳を握ると向こうも握るし、掌を鏡に向けると鏡の中の女の子の掌が良く見える。

 そう、女の子だ。

 自分の体が本当に鏡に映っているそれなのか、何度もこうやって確かめた。

 あどけなく弱弱しい容貌の女の子。どうやらそれが今の私ということで間違いない。

一体何故こんなことになったのか……。

 これ以上鏡を見ていても仕方ない。かえって気をおかしくしてしまいそうだ。

 馬車の中で、私は両膝を抱いて顔を伏せ、うずくまるより他はなかった。

「なあフロイト。なあってば!」

 荷台の外からエンナの声が聞こえる。

「返事くらいしてもらわねえとこっちは聞こえないんだ――よっと!」

 馬車が止まった。

「フロイト。……寝ちまったのかい?」

「……起きています」

 相変わらず発声には違和感が残る。喉がくすぐったい。

「そりゃよかった。しかし残念なお知らせだよ。今晩はここで野宿だ」

 それがどうした。どうでもいいだろうそんなこと。

「本当なら今頃目的地についてるはずだったんだけど、お客様がご乗車なさってたんじゃ思うように飛ばせなくってねえ」

 私のせいか。

「そーゆーわけだ、あんたも手伝いな。まずは火をおこすよ」

 馬車の後ろへ回ってきて荷台の扉を開けて言うエンナ。私はうずくまったままだ。

「そのへんに薪が積んであるだろ? おろして持ってきとくれよ」

 …………

「火を起こさないと飯も食えない。明日には二人そろって冷たくなっちまってるよ」

 ……腹は減ったな。おなかと背中がくっつきそうだ。それに寒いのもごめんだ。できればもう少し気分が落ち着くまでこうして石のように固まっていたいのだが、背に腹は代えられないというやつか。

 いや、いっそのこと空腹で背と腹がくっついてしまえば、どうだろう、代えられるようになるんじゃないか?

――いやきっとダメだ。何を考えているんだ私は。

 空腹で腹が痛い。吐き気まである。ついでに頭痛も。

 仕方ない。薪だったな。

「やっと動いた。見かけによらず随分と重たい尻だねえまったく」

 力なくよろよろと立ち上がった私にかける言葉がそれか。セクハラとかサイテー。私の会社だったら即クビにされているぞ。

「そんな目で睨むなよ~。いいだろ? 女同士なんだしさ」

 そうだった。今の私は女だった。この場合セクハラに……なるのか?

「薪、馬車の横におろしといてくれよ」

 エンナは念を押すと小走りで馬車から少し離れていき、あちこち地面を物色し始めた。何をしているんだあの女は。まさか遊んでるんじゃないだろうな。

 先ほどまでの草原とは打って変わって、辺り一面砂と石でごつごつとした、正に荒地といった感じの場所だ。

 荷台に乗っていたので気づかなかったが、いくらも移動しないうちによくもまあこれだけ異なる植生の土地に来たものだ。

 と。あの女こっちへ戻って来るな。――なるほど石か。

 エンナは手ごろ……とは言えない石を抱えている。腕いっぱいにごろごろと。

 あいつ本当に女か? 男の私でも運べるかどうか……。

 いや女だった。私が。クソッ。

 ええいもういい。薪だ薪。荷台の薪を降ろせばいいんだろう。

 どこだ薪は……これか。

 私のすぐ横に積み上げられた荷物の一番上、と言ってもちょうど顔の高さぐらいにある包みの隙間から薪らしいものが覗いている。

 これを。こう。おろして……おろ……

 ――動かないな。どうやら見かけより重いらしい。腕の力だけで動かすのは一苦労だが手ごたえはある。無理ではなさそうだ。一度抱えてしまえば全身で支えられる。

 もう一度、今度はもっと力を入れて――

 あ、うごい――た⁉

 お――重い重いおもいおもいオモイオモイ!

 なんだこれは! なんだこれは! 支えきれない!

 倒れる……!

 ドゴッ――と鈍い音がして私の体は薪の包みと一緒に荷台の床へ叩きつけられた。

 嘘だろ。何かの間違いだ。

 鉄や土じゃない。薪だぞ。たかが薪。乾いた木。

 それがあんなに重いなんて……。

 腕だけじゃない、全身を使って持とうとした。体に力は入っていた。それなのに持ちきれなかった。こんなことってあるのか……。知らないぞ、こんなんの。

「おい! 大丈夫かい⁉」

 荷台の天井を見て呆けていた私の視界に血相を変えたエンナの顔が入ってきた。

「すごい倒れ方だったよ! 怪我は⁉」

「は、はい。特に、怪我は……ない、です」

「立てるかい?」

「えっと……はい」

「ならいいけど、一体どうしたんだい?派手にぶっ倒れて」

「いえ、薪が、その……重くて」

 ここまで言うとエンナはきょとんとした顔になった。

 多分、私もきょとんとしていた。

 かと思えばエンナが急に声をあげて笑い出した。

「いやあ、悪いねえ! 馬鹿にしてんじゃないんだ。ただ、でも――クッハッハハハハハ! 薪が重いときたか! ダメだ、止まらねえ! アッハハハハハハハ!」

 何故笑う? ゲラゲラと、何がそんなに面白いんだ。

 エンナがひとしきり笑い終わるまで私は呆けたままだった。

「はあ~笑った笑った、久々だよこんなの。あんたもしかしてどこぞの令嬢かい?

 そりゃあアタシは伊達に行商人なんてやってないから腕っぷしには多少自信があるよ。薪だの石だのは軽いもんさ。

 並みの女にとっちゃ薪は軽いもんじゃないってのはさしものアタシも分かってるんだけど、それにしたって倒れる程とはねえ! こりゃあアタシがよっぽど馬鹿力か、アンタが筋金入りの箱入り娘かのどっちかだよ」

 まあ本当に筋金入りってんならそんなにナヨナヨしてないんだろうけどね、と付け加えてエンナはまた クスクスと笑い出した。

私もさすがにイラッとして、そこまで言わなくても、と言いかけたが、

「でもよかったよ」

 とエンナに遮られてしまった。少し、口調を改めて

「あんた美人だからねえ。綺麗な顔に傷がつかなくて、よかった」

 意外過ぎる言葉に私は一言も返すことが出来なかった。

 それどころか、長めの髪で隠れていたエンナの左頬に大きな傷跡があるのに気づいてしまい、彼女の顔から目を逸らしてしまっていた。火傷の痕のようだった。

 こんな時に気の利いたよ言葉を掛けられればよかったのだが、あいにく私はそんな色男ではない。男ですらなかった。

 薪はもういいから暫くそこで休んでな、と気を使われてしまった。私は馬車の荷台に戻ろうとしたが、中から褐色銀髪の女の子がじっとこちらを見るので何となく避けてしまった。馬車の車輪にもたれるように座り込んで、焚火の準備をするエンナを眺める。

 辺り一面荒れ地と言ったが一応均された道らしい道はある。

 馬車はその端に寄せて停められていて、そこから少し離れた場所で火をおこすようだ。

 涼しい顔で人の頭ほどの石を円く並べていく彼女を見ていると、成る程これでは私の非力さがさぞ可笑しかったことだろうと思えてくる。

 力には自信があると言っていたがどうやら本当のようだ。

 それから手際の良さを見るに相当慣れている。動きに無駄がない。焚火なんて造作もないってわけだ。

 自称行商人というのも実のところ眉唾モノだったがいよいよ疑うべくもないか。

 この調子ならすぐに暖を取れるだろう。陽はすっかり落ちてしまっている。エンナの言った通りだんだん寒さが増してきた。

 しかしこうも力の差を見せつけられると中々にクるものがある。

 例え異世界に転生したての右も左も分からない状況であってもだ。

 転生と言うよりは転移に近いか。転生ならばこの世界に生を受けるところから始まって然るべきだ。私は赤ちゃんにはなっていない。

 かつて敏腕経営者で一流のビジネスパーソンだった私の今の体は、どう見ても十代後半から二十代前半といったところのうら若き乙女そのものだ。

 転性してしまっている。以前の私の肉体的特徴は現状何一つ確認できない。

 生まれ変わったと言ってしまって差し支えない程度には私の肉体は変質してしまったのだ。そういう意味では転生とも言えるのか?

 転生と言うより転移。転移しつつ転性。そこまでいったらそれは最早転生。

 もう面倒なので転生でいいか。

 はあ……へこむな……

 別に以前は筋骨隆々なタフガイだったわけではないが転生した結果腕力を失ってしまったという喪失感を感じずにはいられない。

 ……いや待て。己の無力を嘆くのは時期尚早かもしれない。

 なんといってもここは異世界なのだ。私の常識では計れないことがあって当然では?

 例えば私が持てなかったあの薪。元の世界ではあの程度の薪なら女性の力でも充分に運べたように思われる。

 では何故私は持てなかったのか。

 私の腕力が並みの女性以下であるから、若しくはあの薪がとんでもなく重かった(・・・・)からではないのか。私の体は女の子になってはいるが、健康そのものだ。か弱さは否めないが虚弱というわけじゃない。

 体を動かした感じだと、まあ体調の悪さは感じるがそれを考慮しても特に重いとは感じない。自分の体を支えるだけの力は間違いなくある。この肉体に見合った筋力は備わっている。この肉体が病的なまでに非力であるというのは不自然だ。

 ならばやはり、あの薪が元の世界の物より重かったと考えるのが妥当じゃないか?

 そうなると問題はエンナが今ひょいひょいと薪を棒切れのごとく扱って焚火の用意をしていることだが……。

 まあそれはあの女が本当に男顔負けの力持ちってことだろう。

 薪くらいなら普通の女でも持てると思ってたとかなんとか言っていた気もするが、きっとエンナの感覚と一般的な女性の感覚がひどく乖離しているにちがいない。

 随分と適当なことを言ってくれたものだ。

 私は普通で、エンナが馬鹿力。きっとそうだ。そうに違いない。そうに相違ない。そういうことにしておこう。

 この話はこれで終わりだ。

 ところでその馬鹿力のエンナは妙なことをしている。

 円く並べた石の中心にもう薪を組んでいる。

 てっきり木の棒か何かをすりすりして火種を作り始めるころだと思ったのだが。

 一から火を起こす時は普通火種を作るところから始めるんじゃないのか?

 先に薪を組んだんじゃうまく着火しない筈だ。

 火種を作り、そこから徐々に大きな薪に火を移していくのがセオリー。

 それを無視しているということは……ああ成る程。

 着火剤みたいなものがあるわけだ。

 実は原始的な風貌の馬車のせいでこの世界の科学の水準を随分と低く見積もっていた。

 月並みな異世界らしく中世ヨーロッパ的な世界だろうと予想していたのでライターだとかマッチだとかはそもそも期待していなかったし、良くて火打石かと思っていた。

 ほら。現にエンナは簡単に火をつけてしまった。

 手元までは良く見えないが少なくとも大変そうな様子ではなかった。

 組み上げた薪に強引に着火できるほど継続的に火炎を出せる道具が存在するとなればひょっとするとかなり近代的な異世界なのかもしれない。

 原始的だと思っていたこの馬車も質素なだけなのかも。

 ――焚火の用意ができるまでまだ少しだけ時間はありそうだ。

 ここはひとつ、この異世界の全容を把握するための調査といこう。

 手始めにこの馬車と積荷を調べてみるとするか。

 非力さと言う単純なコンプレックスを解消したことで多少前向きになった私は、それでも尚残る未知の異世界に対する不安を知らず知らず裏返して、知的好奇心の旺盛な子供のように軽率に行動を起こした。

 何も考えず、とりあえず馬車をぐるりと一周見てやろう、と、裏に回ったところですさまじい力で腕を引っ張られ声を上げる間もなく羽交い絞めにされた。

 数人の男に囲まれていると気づく前に、私は口を塞がれ刃物を突き付けられていた。

 私を羽交い絞めにしている男が耳元で囁く。

「暴れるんじゃねえぞ……へへッ……」


    ●


 パチパチ、パチィッ、と。とても心地よい音がする。

 背中が暖かい。おなかの方は冷たい。寝返りを打つとおなかの方が暖かい。背中にはまだ暖かさが残る。

 とても心地よい。

 目を閉じていても分かる。光を感じる。

 はあ。なるほど。

 火の傍で横になっているようだ。

 段々意識がはっきりしてきた。しかし、目を開けても大丈夫なものか……。

 私は攫われて犯されそうになって、助けが来た、というところまでしか覚えていない。

 ひょっとするとあの後、彼女は返り討ちにあって、目を開ければあの男たちが私の体を弄んだ後だったなんてこともあるかもしれない。

 或いはこれから、私の意識が戻ってから犯すつもりなのかもしれない。

 どちらにせよ確かなのは、こうして目を閉じている限りはおぞましい現実を目の当たりにすることも、それが襲い来ることもないということだ。

 たかが瞼を開くだけのことで、この心地よさ失ってしまうかもしれない。とても怖い。

 出来ればもう一度気を失ってしまいたい。もし私が何かされるというならその間に全部済んでしまっていても構わない。

 もう少しだけ、安らいでいたい。

「目が覚めたかい?」

 聞き覚えのある女の声がした。

 私は黙ったまま、ただ小さく頷いた。

「良かった。もう心配いらないよ。起きれるかい?」

 心配はいらない。恐怖に後ろ髪を引かれながらも、その一言に背中を押されて私は恐る恐る目を開いた。

 視線の先ではやはり焚火が燃えている。

 焚火の傍で横になる私と、その傍にもう一人。私の頭の横に腰掛ける女がいた。

 エンナ。荒野で一人でいた私を拾ってくれたおせっかいな女行商人。

 ちょっとした石に座って焚火に向かっていた彼女は私の目が開いたのを見届けるとゆっくり話し始めた。

「どこか痛むかい?」

「……背中が少し」

「そうかい。でも傷はないよ、どこにもね。安心していい。じきに引くさ」

「そうですか」

「気分は?」

「……大丈夫です」

「そいつぁ答えになってないよ」

「……お腹がすきましたかね」

「腹か。フフッ。結構! 晩飯ならあるよ、起きて食べな」

「ええ、もう少し暖まってから」

「……平気かい?」

 と、大きな薪を片手でひょいっとくべながら言う。

「今のところは。途中から覚えていないので」

「……何もなかったよ。私があいつらを片付けた。それ以外のことは何もなかった」

「……そうですか」

「ここいらじゃよく出るんだ。ああいう野党崩れみたいな連中が人さらいの真似ごとをしてるのさ。女子 供は狙われやすい。特に、アンタみたいな美人は高く売れるからね」

 さっきくべた薪、ちょっと大き過ぎやしないか? 燃えないだろあんなの。

 そう思った矢先、彼女が焚火に向かって手をかざすと、掌から火炎が噴き出した。

 おお……薪が燃える燃える。なんだこの女、手に火炎放射器でも内蔵してるのか。サイボーグかよ。どうりで馬鹿力なわけだ。

 エンナが火炎放射を終えるころには弱っていた焚火は元の勢いを取り戻していた。

「見事なもんだろう?」

 依然として焚火から目が離せずに唖然としている私。その顔を覗き込む彼女は満面のニヤニヤ顔だ。

「いえ、あの、何をしたんです?」

「あん? 薪をくべたから火力を調整しただけだよ」

「いえ、そうじゃなくて、手から火が……」

 まさか本当に改造人間でもあるまい。炎のサイボーグ行商人なんているわけがない。そんなはずがない。

「そうだけど……?」

 えぇ……そうなのか……そうなるともう

「もう訳が分からないです」

「なんだよ、そりゃ珍しいかもしれないけど、なにも見たことないわけじゃないだろ?」

「見たことあるわけないじゃないですか! 手から火を噴く人間なんて!」

「まあ自慢じゃないが、確かにここまでできる奴はそうそういないねえ。たいがいは体を強化するくらいが関の山だし」

「待ってください。その言い方だと身体強化を施された人間がウジャウジャいるように聞こえるんですけど、私の聞き間違えか何かですか?」

「ウジャウジャってなんだい人を虫みたいに……。でもまあその通りだよ。てかアンタだってそうだろ?」

「私も⁉」

「そうだよ」

 う、嘘だ! 私も改造人間だっていうのか? そんなバカげたことが――。

 いやでも、異世界転生してるわけだし、その過程でどえらい改造が施されている可能性は否定できない。

 というか肉体が成人男性からいたいけな少女になってるわけだから改造されていると言えなくもない――のか?

 そうだこれが改造でなくて何なんだ。おっさん→美少女、なんてスーパーカブを戦車に改造するのと大差ない。砲身はむしろ失っているが破壊力、制圧力は文句なしだ。魔改造と言っても差し支えない。

クソッ――なんなんだこれは。

 異世界転生。それは結局、願望の具現化だ。

 では私はこんなコトを望んでいたというのか⁉

 あのクソッタレの父親のようにはなるまいとただひたすら現実のみを見据えて生きてきた。元の世界では誰もが認める成功を収めておきながら、心の奥底ではこんなものを望んでいたというのか⁉

か弱くて、美少女で、サイボーグで、運よく強者に助けられて。

 私はそんなヒロインになりたかったってのか⁉

 私は――

「私は……改造人間だったんですね……」

 自らの内に忌むべき願いが潜在する可能性を突き付けられた。昏倒寸前の心境にあっても、あまりに不自然な沈黙にはやはり耐えかねてそんな言葉を漏らしたのだが、

「カイソウニンゲン? 何言ってんだい? アンタの髪は海藻に例えるにゃ綺麗すぎるってもんだろう。いきなりヘンなこと言うもんじゃないよ」

 なんて、音声入力に失敗したみたいな聞き間違えをしてヘンなことを言ってくる女のせいでせっかくの悲劇ムードはガン萎えである。

 海藻人間て。私は昆布マンか。いや、ワカメガール。いやいいやワカメガールはちょっとまずい。ワカメは美味しいが。ワカメちゃんなんて呼ばれやしないか気が気でない。

 願わくばもずくあたりの無難なところで手を打ちたい。

 もずくちゃん、ならきっと主役ではないが可愛さと美味しさを兼ね備えていて好感が持てる。恐らく彼女を助けるために主役の昆布マンが第二の変身を経て酢昆布マンへとパワーアップするのだろう。もずくちゃん、名脇役だ。

 海藻人間昆布マンの話はこれくらいにしよう。

 とにかく、私は悲劇のヒロインになり損ねた。

「海藻人間ではありません。改造人間です。改造」

「改造? 何の話だい?」

「いえ、あなたも私も改造人間だって話ですよ」

「益々何の話か分からない」

「たった今言ったじゃないですか! 私も含めて世の人間は身体強化マシマシで、特別製のあなたは手から火炎放射ブっぱなすって!」

「まあそんな感じのことは言ったがねえ」

「それが改造だって言ってるんですよ! あなたのその腕にも燃料タンクと噴射装置及び着火装置などなどが搭載されているんでしょう⁉ それともタンクはかさばるから胴体の方に搭載されているんですか? 容量は何Lですか、吸気はどうなっているんですかキャブレター式ですかインジェクションですか着火はやはりプラグですか⁉」

「訳の分からないことばっかり言うんじゃないよ全く。落ち着きなって。人体改造なんてそんな恐ろしいことしちゃいないよ!」

「じゃあなんだって火を噴くんです」

「そりゃアレだろうよ。ホラ、魔力的なアレをこうして肩のあたりがヌルっときたら腕をふわっとさせてあとは手のひらからボワ~っと――」

「今なんて?」

「ボワ~っと」

「その前です」

「ふわっと」

「その前」

「――ヌルっと?いやヌチャっとだったか? ビチャっと?」

「べチャっとでもチベっとでも何でもいいんです! その前! 魔力と言いましたか⁉」

「やかましいねぇ――言ったよ、魔力」

「あるんですか魔力が」

「無いわけないだろう」

「使えるんですか魔法」

「使えないわけないだろう」

「みんな?」

「みんな」

「あなたも?」

「アタシも」

「――――………………――……――………………――――――………………――……――………………――」

 喋ったり黙ったり忙しい子だねえと呆れているらしいエンナの声も上の空で、私は、脳裏でバチバチと思考が目まぐるしく大回転するあまり目を回していた。

 手から火を出す。魔法で。

 大概の人間は身体を強化するのが関の山。魔法で。

 魔法で手から火を噴ける人間はなかなかいない。

 魔法の源である魔力の存在は疑うべくもない。

 なんてことだこれならサイボーグか海藻人間の方がまだましだ。

 ここには、この世界には、この異世界には、魔法がある。

 魔法なんてものが存在する。

 まるでお決まりの異世界ファンタジーじゃないか! 幼稚で浅はかで見苦しいあの! 私が大嫌いな『異世界』! そのもの!

 竜を見た、美少女になった、この上魔法まであるのか⁉ しかもそれらすべてを私が! 他の誰でもない この私が望んでいたというのか⁉

 冗談じゃない!! そんな――こんな――


 こんなことが現実であってたまるか!


 そう強く思って、あとはなんだかよく分からなくなって、多分ひどく泣き喚いていた。


    ●


 焚火から炎が消えてただ赤く光っているだけになった。泣きつかれた私は気が付けばエンナに膝枕されている。ようやく落ち着いた。

 取り乱す、と言うのはきっとああいうことを言うのだ。自分の内で感情だけがどこまでも肥大化して弾け、その他全てを遠くへ飛ばしてしまったような、生まれて初めての感覚だった。

 ひどいヒステリーを起こしていたはずだ。エンナにはどう思われただろう。情けない。

 本当にどうかしていたな……。

「喋って黙って泣いてまた黙って、で? 次はどうするつもりだい?」

「もうどうもしませんよ」

「そうかい。じゃあこれからどうするんだい?」

「…………」

「家は?」

「………………」

「故郷は?」

「……………………」

「やっぱり黙るんじゃないか。その調子だと頼りの知人も友人もいないみたいだね……」

「――ええ、その通りです。私には名前と体以外何もありません」

「――ったく、仕方ない!」

 私に向けて言ったにしては少し小さく、独り言にしてはすこし大きいくらいの声で呆れてみせると、そっぽを向いてこう続けた。

「アタシと来なよ。しばらく面倒見てやるから。……フロイト」

 膝の上でもぞもぞと動いた私を目だけでチラッと見ながら、放っとけないんだよ危なっかしくてね、と彼女は付け加えた。

 フロイト。その名前、呼ばれるまで忘れていた。妙な名前を付けてくれたもんだ。

 まあそれはそれとして、この女なかなかどうして可愛らしいところもあるじゃないか。

 そういうことなら利害は一致してるんだ。

 仕方ないな。甘えてやろうじゃないか。

「はい。よろしくお願いしますね」

「おうよ」

「ふふふっ」

「なんだい今度は笑う番かい?」

「そうですね」

「ふんっ。そろそろ寝るよ。今日遅れた分、明日は早いんだ」

「どこで寝るんですか?」

「ま、荷台だろうね。マルタと一緒だ。狭くても文句言うんじゃないよ」

「狭いのは構いません。拾われた身ですからそれくらい我慢します」

「殊勝な心掛けじゃないか」

「でも寒いのは困ります。朝には冷たくなってるかも」

「……焼石でも置いといてやるよ。ちったあマシだろう」

「えぇ、石ですか? うっかり触って火傷しそうです」

「心配しなくてもそこまで熱く焼きはしないよ! いいからとっとと荷台に入りな」

「ふ~ん……まあいいですけど。確かにもう私と石くらいしか入りそうにないですしね」

「さすがにそこまで狭くはないだろう」

「いえいえ狭いですよとっても」

「文句は言わないんじゃなかったのかい」

「事実を述べたまでです」

「はいはい……」

「……それで、その。エンナさんは」

「エンナでいいよエンナで」

「――エンナはどこで寝るんです?」

「アタシはここで十分さ。火の番もあるしね」

「寒くないんですか?」

「魔力、火を出せるまであるんだよ? 一晩体温保つくらい楽なもんさ」

「? あぁ、そうでしたね、魔力魔力。――へえ。エンナは温かいんですね、覚えておきます」

「馬鹿言ってないで早いとこ休みな」

「ええ、おやすみなさい」

 荷台に乗ると既に例の女の子がすやすやと眠っていた。私が横になった少しあと、ゴトッと音がしてじわじわと荷台の中がいくらか暖かくなった。

 どうやら本当に熱した石を置いてくれたらしいな。足元に熱源を感じる。

 アツアツの石で足が熱い。もう少し離れようか。

 なんというかまあいろいろ分からないが寝るか。

 外から変なにおいがしないでもないが。

 まあねるほうが……ねたい。

 まあなんかあの。

 くさいなあ。

 ……。

 。

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