第678話 お土産

「――では、その人物が見つかればサミルは」

「ええ。原因不明のブラックアウトや、目眩などは起こさなくなるでしょう」


 戻ってきたお父さんとハウロンが話している。それを他の家族がじっと見つめながら聞いている。ハウロンの隣にはクリス、少し離れて俺たちも。


 なお、該当する人物についてはハウロンが確認することになっており、身体的特徴については言及していない。まだ顎の話題は出していない。


 とりあえず血筋の者からってことになってて、ほぼクリスが顔を覚えてるからね! それで面接してみて、ダメだったら他にも目を向けるってことで、その時に顎の話をして募集する方向です。


 ――どうやって募集するんだろ。顎に自信のある方! みたいな感じだろうか。血族内で見つかってくれるといいよね。


 具体的な手順に関しては食後ということになり、いったん話し合いは終了。サミルの不調は原因が原因なのでまた起きるけれど、今まで病弱だからどうしようもないものと思っていたものが、解決できるかもしれないと判明して雰囲気は明るい。


 俺的には急に目の前で倒れるみたいになったんで、無駄にドキドキしてるんだけど。


 クリスの精霊もだけど、なんか無駄に対抗して撫でる速度を上げたりするんだよね。たぶん今回のアレもクリス――の顎精霊――に対抗した感じなんだろうな。


「お迎えした早々申し訳ない。十分なおもてなしができるかわかりませんが、希望があればなんなりとクリスにお申し付けください」


「みんなから色々いただいたよ!」

クリスが話題を変える。


「俺たち冒険者仲間からは魔物の毛皮や皮。こんなんで土産になるのか迷ったが、クリスがこちらでは珍しいと言うので」

ディーンがクルクルと巻いた毛皮と皮を出す。


「この辺りで魔物の毛皮を持つことは一種のステータスなんです、大いに自慢させてもらいましょう」

笑うクリス父。


「ディーンは一緒に切磋琢磨して、僕と同時に最近金ランクに上がったんだよ。レッツェは銀、彼がいたから魔の森の奥にもいけたんだ。アッシュとは最近知り合ったのだけれど、とても真っ直ぐでいいヤツなんだ!」

きらきらしながら紹介するクリス。


「で、こちらは大賢者ハウロン。そして、ディノッソとノート、ディノッソの奥様のシヴァ。王狼バルモアと影狼、氷雪のシヴァと呼ばれる伝説の冒険者さ!」

大袈裟なジェスチャーつき。


「なんと……っ!」

のけぞり、いっぽ下がってディノッソたちを見るクリス父。クリス母はその隣でキラキラした顔でディノッソたちを見ている!


 オーバージェスチャー親子! 


 こっちにくる前に、バルモアの名を出していいかクリスが確認してるんだけど、しっかりした紹介になる前にバタバタしたんで今です。


「大賢者様だけでなく、大輪の聖女をのぞくほとんどのメンバーが我が家に集うなど……っ! なんと光栄な!」


 胸を押さえてよろめくのはやめてください。クリス父は感極まるとクリスよりオーバージェスチャーな気配がする。


「扱いは普通で頼む。今のところ前みたいに大きな依頼を受ける気もないしな」

特に動じていなディノッソ。


 隣で何故か鼻高々のディーン。バルモアへの賛辞というかオーバージェスチャーが嬉しいファンか。


「ティナとエン、バクはまだ冒険者の卵だけれど、将来名前を聞くことになると思うよ!」


 ちゃんと子供たちにも一言添えるのがクリスらしい。


「そしてこちらは商人のジーン。冒険者としても強いんだよ!」


 なお、俺の紹介をどうするか迷った挙句商人になりました。手土産に磁器を用意したのがみんなに分かったら、冒険者じゃ説明できないだろうって。島では商売もやってるし、商人で間違ってはいないです。


「いつもクリスにはお世話になってます。これ、大陸で最近流行り始めた食器一式なんで使ってください」

食器の入った箱を差し出す。


「おお、開けさせていただこう」

クリス父が受け取って、箱を開封する。


 蓋を開けると大鋸屑おがくずがいっぱい。陶磁器やガラスを運ぶ時は、大鋸屑や藁を緩衝材につかったり、泥で包んだりする。


 ちなみに泥で包んだものは大抵一旦泥を落として綺麗な箱に詰め直される。すごく高価なものは布と綿でいっぱいにするみたい。


 大鋸屑の中から布に包まれた磁器を取り出し、机の上で開封。


「……なんと」

「綺麗……」

クリス父と母が一言漏らしてあとはしゃべらず、磁器に見入っている。


「……」


 いや、全員が見入っている。


「おい。真っ白な食器って言ってなかったか?」

「白はありがちかなって。クリス色に彩色してもらった」

つついてきたレッツェに答える。


 最初は真っ白な磁器の予定だったんだよね。ただ、クリス家に訪問する前にやたら売れてしまったんで、変更しました。


「そっと変更するのやめろ。白いんで十分高ぇ」

「――白い磁器は、財があっても手に入れるために数年待ち。貴族間で銀器を持つよりも遥か上のステータスになっているはずでございます」

小声で言い合う俺とレッツェに執事が参戦。


「売ってるほうなんでなんかいっぱいな気がしてた」

すみません。


 確かに順番待ちでした。オーナー特権的なもので俺が最優先なだけで。


「これ、王族が持つレベルじゃないのかしら。真っ白な地にこんな綺麗な発色みたことがないわ……」

ハウロンが言う。


「大陸で流行ってるんです」


 にっこり笑って言い切ってみるテスト。

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