短編
@sa1k1san
わたあめ
ばーちゃんが死んだ。
ばーちゃんとの思い出はあまり多くない。遠方に住んでいた俺は、年に一度家族と共に里帰りする時しか会うことは無かった。幼い頃の夏休みは、1週間近く泊まっていたこともあったのだが、部活を始めてからはそれもなく。大学に入ってバイトを始めてからは、親と共に里帰りすることも少なくなり、思えばもう何年も会っていなかった。
おぼろげな記憶の中のばーちゃんは、いつも優しく笑っていた。欲しいと言えば何でも買ってくれていたような気がする。そんなばーちゃんのことは、子供心に好きだったように思う。それなのに、ばーちゃんの
(冗談じゃないよね?)
これは最初に思ったことだ。電話を握る母さんを見る俺の顔がよほど
「本当だって」
と、何も言わないうちに念押しされた。
「そうか・・・年だもんな・・」
思わずポツリと呟く。
何を言っていいか、何を思っていいのかよく分からなかった。
葬式は、身内だけを集めた小さなものだった。50歳を前に若くして自殺した叔父さんの葬式は、参列者100人を超える大きなものだったというのに、寿命を迎えるまで生きたばーちゃんの葬式はこんなに小さなものなのかと、少し
「年を取ると、友達や知り合いも先に
そう話す母さんは、
顔を
ばーちゃんの遺体はしわくちゃだった。昔からしわだらけだったけど、冷たく生気のない顔だと、より一層しわくちゃに見えた。
(こんなもんなのかな。)
人の死は、もっと悲しいものだと思っていた。
長く生きて寿命を迎えた人の死は、自然の流れとして、人は静かに受け入れるのだ。
お
風に乗って
ふと、幼いころの思い出が
急に、胸を突く寂しさを覚えた。劇的でもなく、心を揺さぶられたわけでもないけれど、なんだか
お葬式のすぐ後に祭りに
(わたあめだけ買って戻ろう。)
遠くに見える明るい屋台の光の中に、幼い自分とばーちゃんの姿が見えた気がした。
短編 @sa1k1san
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