ネクタイするのがうれしかった

ネクタイするのがうれしかった

最初はうまく結べなかったけれど


真新しいジャケットは少し大きくて

清々しい匂いがした


毎日 毎日 着てるうち

体の形に添ってきて


毎日 毎日 座っているうち

お尻はテカテカになっていった


ネクタイを細くしてみたり

スカートの丈を変えてみたり


おしゃれ心のマイナーチェンジ

この世に一着だけの 私の相棒


お役御免になった今

タンスの奥でひっそりと眠る


あのころの私の抜け殻は まだ

三年間の思い出を夢に見てるのだろうか


一生で これほど着つづける服はない

頬にあてると 懐かしい匂いがした

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る