第211話 砂漠。 魔法攻撃?

 「ちょっと、これは過酷すぎじゃないか?」


 全環境適応型改造メイド服を装備した師匠エルマだったが、流石の彼女も顔をひきつらせていた。


「だから、せめて行先は事前に聞いておいてくださいと……」とメイルはため息交じりに呟いた。


 しかし、エルマの感想もわからなくもない。 なぜなら、彼女たち3人の前には広大な砂漠が広がっていた。


「ねーねー メイルちゃん?」


「はい、何でしょうか? 姉さん」


「あの、土属性の勇者候補生は以前にいたでしょ? 砂漠に関わる勇者ってなに?」


「土属性……イサミさんですね。 別に砂漠だからと言って住んでいる場所に関わっているわけではないと思いますよ」


「ちなみに、なんの勇者なの? それも、もうわかっているんでしょ?」と師匠。


「えぇ、今回の勇者は……水の勇者です」


「水の勇者? あー だから砂漠に住んでいるんだね」


「……確かに、水に困る事がないから砂漠に住んでいると考える事も出来ますが……」


「だからって、好き好んで砂漠に住もうなんて人はいないでしょ。過酷過ぎるわ……少なくとも私にとってはね」


「エルマちゃん、そんな変な服着てるからね」


「ちょっ! 貴方ね! うちの店の制服を変って言わないでよ。それに、貴方もさっきまで喜んで着てたじゃない!」


「まぁ、珍しい服だったからね。着てみたかったのは事実だよ」


「な、なんのよ! 貴方!」


「し、師匠も姉さんも騒がないでください。 この辺りには―――――あれ? 地震ですか?」


 メイルの言う通り、地面が揺れる。


「んー だんだん揺れが強くなっているね。 少し避難した方がいいかも!」


「いえ、違うわ」


「ん? エルマちゃん、どうしたの?」


「……貴方も暗殺者でしょ? 気配ってものを読みなさい。これだから天才ってやつは!」


「気配、気配……あっ! これまずいタイプだ」


「あの……お2人だけで話を進めてないでください。一体、何が起きているんですか!?」


 混乱したメイルが叫んだ瞬間だった。 一際、地面が大きく揺れて――――


 巨体が姿を現した。


 「魔物! でもこれは……ひぃ!」とメイルは短く悲鳴を漏らした。


 出現した魔物は巨大な土龍……つまりは――――


「ミ、ミミズの化け物です!」


 メイルの叫び通り、ミミズをそのままに巨大化させたグロテスクな全貌。


 それは彼女の戦意を消失させるには十分な要因だった。しかし――――


「わぁ、本当に大きなミミズだね。ねーねー、早く倒さなくてもいいの?」


 カレンは怯む事はなかった。むしろ、戦い気持ちが抑えきれない様子。 


「貴方は、浅い考えを改めなさい。 馬鹿弟子はどういう教えを……いえ、指導者ならその才能を才能のまま伸ばして行きたいってのもわかるけれども!」


「ん~? よくわからないから、行くよ!」


「あっ! 待ちなさい!」と師匠エルマが止めるもカレンは聞かない。


しかし――――


「あれ? もう、攻撃を受けてない? このミミズ」


「むっ! 確かに何者かの魔法攻撃を受けている可能性がある」


2人の言う通り、土龍は急に動きを停止したかと思うと倒れ始めた。


「え? こっちに倒れてきていませんか?」


「そーだよ。メイルちゃん、走って走って!」


「判断が遅いな。 そのままじゃ、巻き込まれるぞ」


「え? ちょっと、待ってくださいよ!」と既に距離を取っていた2人に追いつくようにメイルは走りだした。


  


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