第208話 新しいPT メイルの困惑

「それでは出発しましょう」


メイルは緊張を隠せずにいた。 


(本当にいいのでしょうか? この中で一番、実力が劣っているのは私なのですが……)


 3人PT メイルは思う限りの最強パーティーを揃えた。


 ベルトのかつての仲間である勇者PTのメンバーも候補として考えもしたが、彼等も勇者カムイのために動いているそうだ。


 その結果、メイル以外のメンバーは3人。 少数精鋭となった。

 

 まずは――――


 最強の暗殺者であるベルト・グリムの直弟子。 そして嫁でもあるカレン・アイシュ。 


 さらにメイルの実姉になる。


 その実力は、単純戦闘能力なら勇者や魔王以上と言われたベルトの上位互換と言えば、想像がつくだろうか?


 次にエルマ――――


 戦闘能力は、不明だがベルトの師匠にあたる暗殺者。


 弱いはずはないが……


「あの……」とメイルは勇気を出して訪ねた。


「どうして、給仕メイド服のままなんのでしょうか?」


 彼女は、給仕服のままだった。 武器を持っている様子もない。


「あら? それなら、貴方のお姉さんもよ?」


「え?」と振り向くと姉であるカレンも給仕姿に変わっていた。


「い、いつの間に着替えたのです!? もう出発するって言ったじゃないですか」 


「あら? メイルちゃんもどう? 意外と着心地は良くてよ?」


「駄目です! そんな、どんなに危ない目に会うのかわからないのに!」


「えー メイルちゃんの服装と、あまり変わりがないのに?」


「え? 私のこれは聖女としての正装であって……」


「まぁいいではないか」と姉妹の掛け合いに給仕も入り――――


「どうだ? このさい、お前も着てみたら」


「わ、私は結構です!」と強く拒否するメイルだったが……


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・・


「うっ……う……恥ずかしいです」


結局、メイルを含めた3人は給仕服で街を歩く事になった。


「あらあら? 似合っているわよ?」とカレン。


「うむ、素材がいい。 落ち着いたらうちで働かないか?」とエルマ。


それぞれ、ご満悦の様子。 しかし、彼女たちの意見も的外れではない。


通りすがっていく人たちから視線を受ける。


メイル、カレン、エルマ、それぞれが人目を止める魅力がある女性たちだ。


もっとも、それを意識していていないのはメイルだけ。


カレンとエルマは遊び感覚で魅了を振り向いているようだった。


しかし、これから冒険に出るには相応しい恰好ではあるまい。


「町を出て、魔物が出現するような場所につく前には着替えるがな」


 エルマの一言にメイルは


「――――っ!」と顔を真っ赤にして言葉にならない抗議の声を出した。


 その内面では――――


(こ、この調子で、私が頭目リーダーで大丈夫なのでしょうか?)


 メイルが不安を抱くのは当然だろう。


 彼女だけが現役の冒険者。ならばと頭目に選ばれたのだ。


(いいえ、義兄さんとの冒険の数々。初めての頭目ですが……できるはずです!)


「メイルちゃん! 町を出た瞬間に魔物が現れましたよ」


「あぁ、戦闘だ。すぐさま切り替えろ!」


 いつの間にか町の外まで歩いていたらしい。 給仕服のまま、武器を手にして戦闘態勢になっているカレンとエルマ。


「~~~っ!」とメイルの精神はぐちゃぐちゃにかき回されていた。

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