第161話 冒険者ギルドで相談
冒険者ギルド。
新たに誕生したダンジョンの調査についての報告としてベルトとメイルはやってきた。
受付嬢に案内されてギルド長の部屋に通される2人。
「それでは、少々お待ちください」と退出しようとする受付嬢。
ベルトとメイルは、その様子を不思議そうに見ていると……
「あっ、すいません」と戻ってきて椅子に座る受付嬢。それから――――
「今は、私がギルド長代理でしたね」
彼女の言う通り、冒険者ギルドの最高権力者は彼女自身なのだ。
ちなみに先代のギルド長は更迭された。
その原因は、ソル・ザ・ブラッドという男にある。
今は、反逆罪で処刑され故人であるが、この男――――
ギルドの実質的な最高権力者でありながら、人類最大の裏切り者と呼ばれている。
なんせ、ギルドの権力者であるという事を隠し、魔王と接触……つまり、魔王軍と冒険者ギルドは協力関係だったのだ。
ソルの最後は、自ら告発して、機関に自首。……それで終わるのだが、問題は残された先代ギルド長だ。
多くの冒険者に敬意と羨望を寄せられていたギルド長の正体が、ただの傀儡だった事は冒険者ギルドの信頼を落とした。
いくら彼が、「脅されてやっていた事」と弁解してもギルド長の続投は不可能。
その彼の代りとして選抜されたのが冒険者ギルドの勤務年月が長い受付嬢さんだった。
そんな彼女ではあるが……
「やはり、慣れませんね。 今でも自分が普通の受付嬢と勘違いして振る舞ってしまいます。やはり、私なんかが務まる役職ではないのかもしれません」
なんて、ため息交じりに呟いている。
「受付嬢さんが中心になって、ギルドを盛り立てていこうとしているのは、多くの冒険者は理解してますよ」
メイルは笑顔で言う。 彼女の本心から出た言葉だったのだが、
「きゃ! やっぱりメイルちゃんは良い子ね!」
「はっわ!?」
「家に連れて帰って妹にしたいわ」
余程、強いストレスにさらされているいるのだろう。 受付嬢、あらためギルド長代理は全力でメイルを可愛がり始めた。
「だめです! せめて義兄さんが見ていない時に!」
どうして、俺が見ていない時ならいいのだろうか? ベルトは、そんな事を考えながら、出されたお茶をゆっくりと飲み、ギルド長代理が落ち着くのを待つ。
しばらくして、
「なるほど、行方不明になっていた剣の勇者 カムイ様がダンジョンコアに取り込まれ、新たな6人の勇者候補の収集を依頼してきたのですね」
先ほどとは、別人のように自体を把握して、分析を始めるギルド長代理。
なんでも、脳の
おそらく、この能力とも言える判断力を買われてギルド長代理という大役を任せられたのだろう。
まさか、本当に年功序列で受付嬢を代表にするわけがない。 そう信じているベルトだった。
「先ほど、預かりました勇者分布の地図。これから判断するに、まずは北側にいる勇者宅へ訪問したほうが効率的ですね。……これからギルドも全面バックアップいたします。 まずは、国々の王族相手に資金面の交渉を……」
こんな感じで、今後の方針も1時間足らずで決定した。
「今日、決定した計画は政府に連絡後、さらに精査します。また明日、来てください」
ベルトとメイルは冒険者ギルドを後にして、我が家である『薬局カレン』に帰宅することにした。
『薬局カレン』のオーナーであるマリアへの連絡は……
「いや、マリアに連絡しなくても、今日も家に遊びに来ているだろうな……」
「そうですね」とメイルは苦笑した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます