第119話 幕間③ 不記憶の村
こんにちわ、メイル・アイシュです。
今日は大変な事が起きました。
始まりは、あるギルドからの依頼を受けた事から始まります。
問題は、その依頼内容が思い出せないという事です。
どうしてでしょうか?
ここが目的地である村という事は覚えています。
ベルト義兄さんと一緒に村へ入った所も覚えています。
しかし、私の横にベルト義兄さんはいません。
不安です。非常に不安です。
正直、依頼なんて放り投げて帰りたいのですが、そこは冒険者として矜持という奴です!
そう私は冒険者。そして、職業は聖女! 聖女なのです!
例え、依頼でなくとも困っている人を見捨てる事のできない性質だからこそ、私は聖女として選ばれたという事を私は知っています!
しかし、問題は、そうやって自分を奮い立たせても何も解決しないという事です。
ではでは、問題解決のために状況を整理してみましょうか?
重要なのは記憶の一部が失われている事でしょう。
確かに記憶を改ざんする魔法は存在しますが――――ここまで魔力の痕跡を残さない魔法を私は知りません。
ならば、超常的な現象でしょうか?
現在は魔法の発展によって幽霊や超常現象といった不可思議な事は解明さていますが……
それでも、怖いものは怖いです。 それでも、人類の魔法では解明さていない事は、まだまだあるのです。
ブルブルと震える自分の体を抱きしめて、無理やり震えを止めます。
幸いにして、まだお日様は空高く昇っています。
村には、よそ者の私を牽制するようですが、ちゃんと村人がいます。
大切なのは観察です。 洞察力の大切さと言うのはベルト義兄さんから嫌と言うほど仕込ませました……
ベルト義兄さんから嫌と言うほど仕込ませました。
……中々、卑猥なフレーズですね。
油断していると口元が緩みそうです。ついつい「ぐへぐへ……」と笑い声を漏らしそうになります。
それは乙女としては酷いマイナスポイントです。気を引き締めていきましょう。
さて、観察開始です。 私はキョロキョロと周辺を見渡します。
村の入り口にある柵にもたれ掛かっている小さな影を発見しました。
なんていう事でしょう。
死角に隠れていましたが、人が意識を失って倒れていたのです。
私は駆け出しました。
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