百文字語 ~ぴったり百文字の物語~

芝犬尾々

2019年

4月

2019年4月7日 「嘘つき」


「嘘をついたら死ぬ病気だって?」「この病気は感染するらしい。もしかしたらお前もかかっているかもしれないから気をつけてくれ」「まるで嘘みたいな話だがわかった。親友のお前の言うことだ、信じるよ」彼は死んだ。




2019年4月14日 「春代官」


「お代官様お風邪ですか?」鼻水とくしゃみの止まらない代官は真っ赤な目をこすりながら「アレじゃ」ほほぅと納得顔の越後屋。「私もですよ」と大きなくしゃみを一発二発。にやりと代官。「越後屋、お主も春よのう」




2019年4月21日 「連れて行く男」


びーびーと泣く女の子を父親が抱き上げ連れて行く。その後ろ姿を見送った数分後。青い顔をした男性が写真を見せ僕に尋ねた。「娘を見てませんか?」さっきの女の子だ。この人が父親なら、あの男の人はいったい誰だ?




2019年4月28日 「野鳥観察」


4月。大学キャンパス内では新入生をめぐるサークルの勧誘合戦が熱を帯びていた。だが、バードウォッチング部の周りは閑散としている。部長がうつろな目で双眼鏡を取り出し言った。「みんな、閑古鳥かんこどりの観察を始めよう!」

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