第58話

「忘れてるって、何をですか?」


美咲先生の指摘に思い当たることが無くて思わず聞き返す。


「何ってシナリオよシナリオ。最終形をどうするかまでは聞いてないから分からないけどゲームってことはシナリオ必須でしょ?」

「それは、忘れていたんじゃなくて他の素材が揃ってから進めようと思ってるんです」


確かにここまでシナリオの話はしていない。

学校紹介っていう作りなので紹介する場所が決まらないとシナリオを作るのは難しいからだ。

その旨を美咲先生に伝えると…


「なるほどねぇ。確かにそれは理由としては十分ね。でも、プロットくらいなら作れるでしょう?」

「痛いところを突いてきますね。その、僕だけで作るならやっちゃってもいいんですが、みんなと一緒にやりたくて、プロットも後回しにしてるんです」


そんな回答を聞いていたからか


「ちょっと水面?そんな話初めて聞いたわよ?」

「うん、初めて言ったからね」

「そういうのはみんなで共有しなさい!気づかないところであんただけ負担になってるとか嫌だからね?」

「その通りだ水面。お前はもっと俺らを信頼してくれ」

「信頼してないわけじゃないんだけど、一度にあれやこれややってもらうのもどうかと思って。楽しくない!とか思われたら本末転倒だしね」


「「「はぁ……」」」


僕の言葉に一同ため息。

え、なに?なんかダメだった?


「水面くん、みんなのこと思ってくれるのはとても良く伝わってるよ?でもそれが大変だとか無理だとか決めるのは私たちだよ。

 それに、1人じゃないんだから辛かったら助け合えばいいんだからね?それこそ今の水面くん支えてる私たちみて何も思わないのかな?」


赤井さんの言葉にはっとする。1人で出来ないならみんなで助け合えばいい、確かに今の僕の状態そのまんまだ。


「はい、話はまとまったわね?水面くん、あなたのそれはいいところでもあるけどもっと周りをみて、一緒にやるといいわ。

 それこそが青春…!」

「先生、いいこと言ってるかもしれないけど滑ってるからな」

「ちょっと和田くん?そこは気づいても言わないのが大人ってもんよ?」


美咲先生からそんな言葉が出るとは思わなくて、笑い声が響いた。

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