第22話
翌日の放課後。エンタメ部の活動初日を迎えたこの日、なんの因果か掃除当番になっていた。
「赤井さん、ごめん!今日は掃除当番だったの忘れてた!
部屋だけ開けに行くから着いてきてもらっていいかな?」
僕がいないとコンピューター室は開けられない。
仕方がないので教室の片隅で赤井さんに話しかけていた。
「そういえばそうだったね~!気にしないで?一緒に行こ!みんなには説明しとくよ」
なんてことがあり、ついさっき赤井さんを連れて部屋を開けて戻ってきた。
もちろんクラスメイトがそんなシーンを無視するわけもなく、
「水面ってさー、いつの間にか赤井さんと仲良くなってね?」
同じ掃除当番の須藤が興味深げに聞いてきた。あー、やっぱ目立ってたかな…
「夏休み中に偶然会ってさ、それからかな?」
「ふーん。赤井さん、結構競争率高いからがんばれよ!」
からかわれるのかと思ったら、そんな応援をされた。
競争率、高いのか。
でも僕はコスプレしてる赤井さんも知ってるし部活も同じだ。
クラスで僕だけがそれを知っていると思うとちょっとだけ鼻が高い。
「頑張れって、どういう意味で?」
「とぼけんなって、お前が自分から女子に話しかけに行くなんて見たこと無いし、そういうことだろ?」
そういうこと、なのかな?
「どうだろうね、まだちょっとわかんないや。でも、ほんとにかわいいよね、赤井さん」
「あれ?ちがったか?そのうち分かるようになるといいな!」
あんまり話したことなかったけど須藤くんいい人だな。バスケも上手いしモテるのかな。
掃除を終えた僕は自分の気持ちがなんなのか考えながら、コンピューター室に向かっていた。
考え事をしていて注意力が散漫になっていたのだろう。なにか声が聞こえた気がした。
「ま、まって~~!そこどいてーーー!!!!」
「え?」
顔を上げたら目の前から黒い物体が僕の方に向かってきていた。
思わず受け止めようとしたのが失敗だった。
「いたたた…水面くん、大丈夫だった?」
ああ、赤井さんの声が聞こえる。これは幻聴かな…?
でもこの手のひらの感覚、なんだろう。やわからい……
僕はその柔らかい感触を堪能するかのように、撫でたりもんだりしていた。
「ひゃ…みなもくぅん、そこ…だ、め……」
やっぱし赤井さんの声だ。
ああ、ここは天国なのかもしれない。赤井さんの声に、この柔らかい感触。最高だ。
「み、みなもくん…ほんとに、だめだよお。そこおしり…」
「え?」
お尻という単語で僕は覚醒した。
も、もしかしてこの柔らかいのって赤井さんの…!?
驚いた僕は自分がどういう状況になっているのかを認識した。
たしか、黒いのが突っ込んできて受け止めようとして一緒に倒れたんだっけ?
それで柔らかかったからそのまま…?
「っ。ご、ごめん!」
「やっとやめてくれたぁ…もう、お嫁にいけなくなったら水面くんに責任とってもらうからね!」
「え、えっと、その……喜んで?」
「え……?も、もう!冗談なんだからほんきにしないでよ~!ばかぁ…」
僕はなぜか赤井さんに怒られていた。
ああ、それにしても柔らかかったなぁ……
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