SSSバグヒーラーはハチミツまみれの幼女を夢見るのか?

「これが、お菓子祭りの醍醐味です。負けたとしても多くの生クリームをかけられた少女は、厄が祓われると言われています」


 何で少女限定なんだ、聞くのも野暮だろうか。


 妙に艶めかしい胸の染み方をしたフィフィオの青ブラは透けていているので、彼女は片手で胸を隠しながら、「すみません、後退します」と後方に下がる。


 彼女曰、胸や顔、太もも周辺などに極度に食品を塗りたくられた場合、自己判断で負けを申告する紳士的なゲームだ。エリィレベルでチョコとクリームを塗りたくられると、負けたか生きてるかを認めるのも大雑把なお祭りらしいルールだった。


「よし、エリィはチョコに気を取られて、自分で舌で舐め取っていますね。馬車を目指すならいま」


 俺は後方部隊の支援を受けつつ、馬車まで走り出す。


 馬車には色とりどりの材料やお菓子が積まれており、これらを自軍のキッチンにもっていき少しでも多くのお菓子を作ったり、並べたりすれば勝ちなようだ。


「何が必要なのか……」


 正直お菓子は全く分からない。


 お菓子祭りのルールで馬車半径一メートル以内には、アタッカー役は攻め込めないらしい。だから悩み過ぎると彼女たちは攻撃可能範囲に集まってきてしまう。


「ホットケーキしか作れないから、小麦粉でいいでしょう!」


 小麦粉あれば何でもできるし!


 あと牛乳!


 牛乳瓶一本とホットケーキ用小麦粉(これもしかしてホットケーキミックスっていうものでは?)を手にして、小さい体で走り出す。


 襲い来るスクール水着軍団を右によけ左にかわし、時には小ジャンプで頭の上を飛び越える。


 力はないがすばしっこさがあるこの身体は、こういったクエストの時は非常に有利で役立つ。


「ん——!」


 俺の耳と尻尾が同時に反応し、テイマーだったころの《獣の勘》で、バックステップでその場を飛びのく。


「やっぱりミキネちゃんは、簡単には墜とせない。そういうわけね」


 先ほど投げられたのは粘着性のある黄色いねばねばしたもの。


 俺は指を伸ばしてペロリと舐める。


「これは——ハチミツッッッ!」


「そうわたしはハチミツを手に入れている。これでミキネちゃんをどろっどろのねばねばにして、毎晩思い出して寝る——!」


 俺の前で仁王立ちしているのは、旧型スクール水着を生クリームでところどころ汚している、なぜかスタイルだけは良い、異世界転移最強残念バグヒーラー、相沢奈々菜、その人だった。


 腰にはハチミツが詰められたツボを漁師のように括り付けている。


 奴はマジだ。こういう時だけ。


 どんな手段を使ってでも、ケモミミ美幼女である俺にハチミツを手で塗りたくる事だろう。


 そういう人なのだ。


 けど、負けるわけにはいかない。特に暑い信念もない。世界を救う話でもない。だが祭りと聞いて身を引いちゃあ、男が——幼女道が廃るってものです!




 お菓子祭り二番勝負。


「「いざ尋常に——勝負!」」

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