SSSの前準備

「良いんですよ、私一人でも。一応相沢さんは、お金はなくてもお客様なので」

 とりあえず外に出て、相沢さんと並んで歩く。

「言い方に棘はあるけどくそ英雄を★★★出来るなら、なんだって手伝うよ。あいつだけはこの世界に放置しちゃいけない——この異世界移転最強系女子高生ヒーラーが、奴の息の根を止めて見せます!」

「止めないでください」

 理由はどうあれ相沢さんが手を汚す必要は何処にもない。

「相沢さん、現実世界でもそのテンションだったんですか?」

「ううん、クラス端で休み時間に寝てるタイプ。誰にも起きてるって気が付かれないようにするのがコツだね」

「ボッチだったから異世界デビューしたら、そこまで頭のネジが外れたんですね」

「内面は元からこうだと思うけどね、ただ周りが合わなかっただけだしー。合わせるのにはもう疲れたの!」

「……それは一理ありますね」

 うん、と俺は納得し、作業現場に到着したので足を止める。

 見渡す限りの毒沼が目の前に広がっており、毒々しい紫色でゴボンゴボンと泡を生んでいる。

「うげえ、どうするのこれ、くそ英雄に飲ませでもしない限り無くならないんじゃないの?」

 湖の広さは結構ある。反対側の岸がかすかに見える程度だ。本来ならここに村があった時代は水源として利用されていたである。

「相沢さんに私のジョブ伝えましたか、そういえば」

「どうかなあ、めちゃくちゃ可愛いもふもふってことしか覚えてない」

 そういってしゃがんでいる俺の狐耳をやんわりと触る。

「ひゃん……っ」

「相変わらずふわふわだよねえ」

「か、勝手に触らないでください」

 妙な声出ちゃったじゃねぇか。相沢さんから距離を取るように、さささと離れる。

「ミキネちゃんはさっきから何書いてるの?」

「出口です」

「出口?」

「相沢さんも極彩色の魔女から、『異世界で生きるためのおまけ』貰いませんでした?」

「ああ、それか」

 相沢さんはそう言って、自分自身の恰好を見つめる。

「私は超絶美少女天才ヒーラーにしてくださいって言ったんだよね。あの頃MMOゲームでハマってたし。放っておいても皆、アイテムくれるし」

「姫ちゃんプレイだったんですね……」

 さぞ我がままでかわい子ぶった姫だったろう。だが貢いだ方もリアル女子高生だったから救われてるのか。

「ふーん、でそれが?」

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