カメラ

Dogs Fighter

第1話 友人

 深夜に電話が鳴り、友人が相談があるというので家に呼んだ。

 次の日休みという事もあり、呑みながらだらだらと話した。


 友人は高校からの知り合い、高校大学が同じで、卒業後はたまに会う程度だった。

 その友人が、子供の時はサッカー選手に憧れたとか、中学で諦めたとか、自分語りを続けている。

 偏差値順に並べて、はいれそうな大学に入り一緒にどれだけ楽をして単位を取るかに一番努力したとわらった。大学は退屈ともいえたが遊んですごせて良い時間でもあった。

 そして労働条件だけで選んだ会社に入り、結局高校と同じ満員電車にのって同じような日々を繰り返し。気がつけばお互いもういい齢だと。


 友人の話は続く。

 だいぶ前の話なのだが、ある日の出勤中にその日の予定とか思い出しながら歩いていると、いつもの風景に違和感がある。

 いつもはサラリーマンしかいない早朝の駅前に、いかついカメラをもって、通勤風景を撮影してる女子大生風の女がいる。

 若い以外は特徴のないような風体だが、サラリーマンの流れに抗うように動くので目に留まる。


 ふらふら動きながら時に声をかけてシャッターを押している。


 自分の方にも寄ってきてシャッターを押されたが、面倒なので無視して通り過ぎようとした、そしたらその女が横に並んでついてくる。


 「あなたの残り人生あと二年です」

って、いきなり言われてカメラのモニター見せられた。モニターの俺のとこに数字の2が書いてて、朝から質の悪い冗談だなと思ったんだけど、

 「おかしぃよなぁ」

 友人には一部の人しか知らない特技がある。

 嘘を完全に見破れるというもので、ナンパの時に効果を絶大に発揮した。

 この『おかしぃよなぁ』って口癖は多分本人も知らないだろうけど、嘘をついてるはずなのにほんとのことを言ってるようにしか思えなかったときに友人が言う口癖。


 「その女、心底心配するっていうか、憐れむような顔してんだぜ」

 納得いかないという態度で友人はいう。

 それから思い込みなのか、本当に体調を崩すようになり常に疲労を感じるようになったという。

 それが一年以上前の話という。


 そんなこんなを話て、気が済んだのか、ソファーに伸びて寝てしまった。

 いびきをかきはじめたのを見てると、もう若くないってことだろうって思ったが、気持ちは当時のままだしなと思わずにはいられなかった。


 次の日、朝起きたらもういなかった。


 たまに、電話がかかってきて、「やっぱり体調がおかしい」「病院行ったけど原因不明」とか言っていた。病理なんてわからないから、齢だからだろとか答えるしか無かった。


 しばらくぶりに電話が来たと思ったら、違う友人からだった。

 あいつが心不全で亡くなったという連絡だった。


 意外にも冷静な自分がいた。


 棺桶の中で横になってるあいつを見て、亡くなったって全く信じてなかっただけだと気がついた。

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