第11話 お洗濯!
どてっ
「いった…」
おはようございます。落ちました、ベッドから。そういえば、疲れすぎて真ん中まで行かずに寝てしまった気がする。昨日の舞踏会疲れたなぁ…。前世からの引きこもりにはつらい。
「お目覚めになりましたか?」
扉の向こうからサフィの声がする。
「えぇ」
「失礼します。…また落ちたんですか?」
サフィが私の様子を見て、若干呆れながら尋ねる。またって失礼ね。これで4回目よ。
「そうよ。疲れすぎて端で寝ていたわ…おはようサフィ」
「おはようございます」
サフィによって着替え等の支度がなされる。相変わらず手際良すぎ。
「今日は何をされるんですか?」
「そうねぇ」
どうしようかなぁ。舞踏会も終わったし、今日から立派な公爵夫人修行再開よね。
「今日は良い天気なのでお庭でも散歩しますか?」
「それよ!」
良い天気!良い天気って言ったらあれしかなくない?そう!
「今日はお洗濯をしましょう!」
「あぁ…奥様…」
そうそう、お洗濯も家事の1つだったわ。いけない、私としたことがすっかり忘れていた。
支度も済み、朝ご飯も食べ、今私は洗濯スペースに来ていた。先にいた使用人さんたちが驚いているけど、気にしない気にしない。
「よーし、洗うわよ!」
「奥様…本当にするんですか…?」
「えぇ。これも立派な公爵夫人になるため」
そういって洗濯物が入っている籠から一着取り出して、洗い場に座る。この服は昨日のドレスの下に来ていたやつかな?
さて、どうしよう。そういえばこの世界には洗濯機なかったんだった。つまりは手洗い。手洗いってどうするんだろう?あ、前世で言う掃除終わった後の雑巾洗いみたいな感じ?確か、前世の記憶的に、みんな石鹸を雑巾につけて雑巾同士をこすり合わせていたような。ちなみに私は雑巾を洗ったことがない。そもそも雑巾がけさせてもらえなかったからなぁ。
水の入った桶の中に服を入れ、石鹸をつけていく。結構大変だなぁ。
「奥様、こちらの液体石鹸を桶の中に垂らすんですよ…」
え、液体石鹸?それもう石鹸じゃなくて洗剤じゃない!?というか、洗剤あるんだ…。
「あら、そうなの」
「はい。この石鹸は特に汚れが落ちない時に使用するものです」
「なるほどね。わかったわ」
洗剤…じゃなかった、液体石鹸を桶に入れ、その中に服を入れる。そしてその服同士をこすり合わせる。こんな感じかな?
「奥様…奥様のお召し物がすごく濡れているんですがそれは…」
「え?…あ、本当だわ」
サフィに言われて自分の今着ているワンピースを見ると、あちこち濡れていた。主に膝から下。洗濯ってこんなに濡れるのか…次から気を付けないと。
「…て、奥様。洗濯は使用人の仕事です」
「あら、そうなの」
使用人の仕事だったのかぁ。それなら奪うわけにはいかないよね。
…あれ?そういえば
「柔軟剤はつけないの?」
確か前世の記憶的に、洗濯回す時に洗剤と柔軟剤を入れていたはず。前世の母がそうしていたからきっとそう。それにテレビのコマーシャルにも柔軟剤のやつがあったし。
「柔軟剤?」
あ、この世界には柔軟剤ないんだ…。え、柔軟剤ってでも何だろう?いい匂いがするやつ?確か前世の記憶的に、クラスで持ち主のわからない体操服とかがあった時、この柔軟剤の匂いは〇〇君の!ってやっている人いたような。
「えーっと、服に匂いをつけるやつよ」
「服自体に、ですか?」
「そう。お洗濯をするときに一緒に良い匂いをつけるの」
この世界には前世と同じように香水がある。だから皆香水をつけるため、服自体に匂いをつけるということは考えなかったんだろうなぁ。私はどちらかというと、香水より柔軟剤の匂いが好きだ。だって香水鼻にきついじゃない…。
「それは初めて聞きました。…ですが、面白そうですね。あとで執事長に話してみます」
「よろしくね」
あれ、これ知識チートなのでは?前世の知識役に立ったのでは!?やったぁ、これこれ。こういうことをしていって、立派な公爵夫人になるわ。
さて、次はどうしよう。洗濯し終わった服たちはどうしてたっけ?…そう、そうよ。
「次は洗濯物を干す作業ね!」
「奥様ぁ…」
洗濯スペースを離れ、洗濯ものを干すところにくる。ちょうど今、他の使用人さんたちが干しているところだった。
「これを干せばいいのね」
使用人さんから借りた籠を見る。中には洗濯したばかりの服が入っていた。
さて、どう干すんだろう。前世の記憶的に…そうそう、確か前世の母はこのハンガーに服をかけていたわね。
服を籠から取り出し、ハンガーにかける。この服、男性用ね…形的にたぶんルイド様のかな?お、これって公爵夫人っぽいんじゃない?
「奥様、干すときに皺を伸ばしてください…」
「そうなのね」
皺を伸ばすってどうするんだろう?んん?
「こうするんですよ」
困っていたのを見かねたサフィがお手本を見せてくれる。パタパタと洗濯物を振って、ハンガーにかけ、さらに細かい皺を手で伸ばす。
ふむふむ、そうするのね。これでまたひとつ学べた。
新しい洗濯物を取り、サフィの真似をしてパタパタ振る。ハンガーにかけ、細かい皺を伸ばす。うん、いいんじゃない?
「どうかしら?」
「良いと思いますよ」
やったぁ、サフィに褒められた!この要領で籠に入った洗濯物を次々干していき、最後の服を干し終わったところでサフィが口を開く。
「…て、奥様。これも使用人の仕事です」
「あらそうなの」
これもかぁ。使用人の仕事は奪えないなぁ。…次は何しよう?洗濯物畳み…は今干したばっかりだから無理だよね。だとすると何かあるかなぁ。
「他に何かあるかしら?」
「洗濯関係はもうないと思いますよ」
「そうよね。うーん…」
どうしよう。これじゃ立派な公爵夫人になれないわ。困ったなぁ。
あ、服と言えば、そういや前世の母がよく巾着とかポーチとかエプロンとかクッションカバーとか作っていたような。はっ、これも立派な公爵夫人になるために必要なことだよね!そう!
「次は裁縫をしましょう!」
「よかった…やっと奥様らしいことを…」
「まずは巾着ね!次にクッションカバー!」
「え、ちょっと奥様…?え!?」
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