第2話 決意!
「お目覚めになりましたか、奥様」
扉の向こうから侍女の声がする。
あ、そうだ。私寝てたんだった。それでベッドから落ちたんだった。
「ええ」
声を出すと、ひとりの侍女が入ってきた。
「おはようございます。…どうして床に座っているんですか」
「おはよう、サフィ。寝てる途中に落ちたの」
私がそう言うとサフィは頭を抱えた。
サフィは私の専属侍女だ。歳は私より2つ上の20歳。20歳にはみえないくらいしっかりしている。
「奥様、あれほど中央で寝てくださいと…」
「次から気を付けるわ」
「毎回そう言ってますが」
実はベッドから落ちるのは今日に限ったことではない。よく落ちる…というわけではないが、今回で3回目だ。つまりは1週間で3回。…うん、多かった。
私はサフィによって服に着替え、髪を整えられる。今日はシンプルなワンピースにカーディガン。今日はっていうか今日も。いつもこんな格好をしている。公爵夫人だからといって豪華なドレスをきたりアクセサリーをつけるつもりはない。だって、ドレスは窮屈だし、アクセサリーは付けると気になるし。
「ルイド様は?」
「…お仕事に行かれました」
「そうなのね」
ルイド様のことを尋ねると、サフィはむすっとしてぶっきらぼうに答えた。どうやらサフィはルイド様が好きじゃないらしい。
ルイド様は王様の側近として、いつも朝早くにお城に出仕する。夕方には帰ってくるが書斎にこもって今度は領主としての仕事をする。公爵ともなれば領地も多いしとても忙しいんだろうね。
帰りのお迎えをし、夕飯を一緒に食べる以外、私はルイド様に全く会わない。夕飯も会話はほとんどない。寝室?もちろん別々です。跡継ぎどうするんだろうね?
まぁ、つまりほったらかし。別にいいけどね。サフィいるし。サフィとは出会って1週間だけど、なかなかに仲良くなれたと思う。
そもそもなぜルイド様が私と結婚したのかというと、私の憶測でしかないけど、お見合いだ結婚だーって周りが騒ぐのが鬱陶しかったんだと思う。令嬢方も寄ってたかってくるしね。で、おとなしかった私が都合が良いと思って結婚。サフィや侍女長のソルディエにそれとなーく確認したらやっぱりそうみたいだった。
「公爵夫人て何すればいいんだろう?」
今はこの屋敷に引きこもって礼儀作法だったりダンスだったり読書だったりをしているけど、本来何をするべきなんだろうか。社交?…無理だわぁ。
なんか前世といい今世といい引きこもってばかりだなぁ。
「奥様はこのお屋敷に居てくださるだけでいいんですよ。何もしなくていいと旦那様もおっしゃっていたので、そのお言葉に思いっきり甘えちゃいましょう」
「それでいいのかしらねぇ」
確かに結婚するにあたって、ルイド様には何もしなくてよいって言われたけど。本当にそれでいいのかなぁ。
「ねぇサフィ」
「なんですか?」
「私、今日から生まれ変わるね!立派な公爵夫人になるわ」
いきなり前世の知識をフル活用すると、変な人だと思われる。「今日から変わるわ」と言っておけばある程度何やってもおっけーなはず!
それに、生まれ変わる、もあながち間違いじゃないし。せっかく前世の記憶を思い出したんだから、今までのおとなしい性格にはさよならよ!
「奥様…!奥様はこんなに立派なのに、旦那様と言ったら…」
サフィが涙ぐむ。最後何か怖かったけど、気にしないでおこう。
「そのためにはまず掃除ね!いくわよ、サフィ」
椅子を勢いよく立ち上がり、部屋を出る。
早速前世の知識を使おう!立派な公爵夫人になるために!
「え、奥様?…奥様!?」
知識と言ってもほとんどないけど、前世で見たことを見様見真似すればいけるよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます