21.期待の鍛冶屋さん
お!まさかこれは!この子が鍛冶屋で働いてるとかで、助けた恩から特別な強い盾を作ってくれるとか、とっくに引退したお爺さんが盾を作ってくれるとか、そういう流れか!?
「ちなみに、なんの店だ?」
『それは勿論、魔物屋だよ。虎さん!是非来てください!美味しいちくわ沢山あげます!』
『ウー (ちくわは要らん)』
結局、フレンド登録だけ済ませてその場を去り、俺とビータイガーは鍛冶屋を探しながら歩いていた。
まさかね。そういう流れじゃなかったとは、驚きだよ。
『ウガウガ (もぐもぐ)』
「どうだ?貰ったちくわ美味いか?」
『ペッ。ウガ (めっちゃ不味いぞ人間よ。正直不味すぎる。封印魔法で封印しておくべき案件)』
「そうかそうか!美味しいか!」
『ウガ (会話が噛み合わないな。そうか、貴様は魔物の言語がわからないんだったな。それなら決めつけるな。このぽんぽこりんめ)』
しばらく歩いていると、鍛冶屋と書かれた看板が置いてあるのが見えた。
始まりの町の看板は絶滅したかと思っていたが、まだ残っていたか。何か看板に仕掛けがあるのだろうか。
そう思い、俺は鍛冶屋の看板を手で引っ張ってみる。むぅ、この看板、ガッチリと固定されているようで、ビクともしない。
その時、突然鍛冶屋の扉がガランガランと開いたかと思うと、どこか職人の雰囲気を醸し出している、白い髭を生やした背の低い年寄りのドワーフが出てきて叫んだ。
『か、かかか看板泥棒かっ!!』
ドッキーン!
「ち、ち、違います!」
『ウガァ』
・・・・・・・
『…という訳で、宿屋ブレイカーが有名になってから、看板を盗もうとする奴らが増えたのじゃ』
「あらま、そりゃ大変ですね。それより鉱石の素材から盾を作って欲しくて来たんだ」
『…素材を見せてくれ』
「こちらです」
俺は、中でも深いところで採ってきた水晶を選んでアイテムボックスから取り出して見せる。
『こりゃ驚いた。皮装備着てるもんだから低レベルの素材かと思えば、良い素材持ってくるじゃねえか。この素材なら大きい盾でも軽くて頑丈なのが作れる。大盾でいいか?』
「うん」
『よしきた。金額は3000Gだ。払えるか?』
「うん」
『よし、じゃあ、奥の工房で作ってくるから、しばらくその辺の椅子に座って待ってろ』
「うん」
鍛冶屋のドワーフ爺はそう言うと、奥の部屋、工房へ入っていった。大きい盾を作ってくれるのか。大盾は中々ロマンがあっていいな。
◇ ◇ ◇
『これほどの良質な素材。わしも腕がなるのう』
突如、ドワーフ爺の背後の工房の壁と天井が、ゴォォオッと炎で燃え盛り崩れ落ちた。
『な、なんじゃ!?』
ドワーフ爺は咄嗟に振り返る。吹き抜けた天井から見える空には、両手に炎を纏わせ浮遊している、悪魔のような男がこちらを見ていた。
『本物のドワーフまでいるのかぁ!』
『な、何者じゃ!!』
ドワーフ爺は、そう叫ぶと同時にアイテムボックスから右手に剣、左手に盾を装備する。
『俺か?俺は、炎帝ヴァロルドだ』
『!!どうしてこんな所に』
『黙れ負け犬が!ヘルフレイム!』
ヴァロルドが合わせた両手から、忽ち物凄い炎の渦が出現し、ドゴォォンと爆音を響かせながらドワーフ爺諸共工房を包み込む。
施設自体が溶けていく。凄まじい威力。ヘルフレイムは、魔力消費量を度外視した威力重視の上級魔法だ。
焼け焦げた工房から炎が引いていくと、正面に魔法で顕現した水の盾で攻撃を凌いだドワーフ爺が姿を現した。
『この炎を耐えきるとは!』
『黙れ青二才が。工房が燃えてしまったじゃないか。中々の威力の魔法だったが、次々と連発できるものでもあるまい。流石の貴様でも、ここで勝ち目はない』
『鋭い観察眼だな!だが、俺の魔力量は例外だ。いつまで耐えられるかな!ヘルフレイム!』
『何!?』
ゴォォオォォと音を立てながら、再び工房は辺り一面が炎の渦に包まれた。
◇ ◇ ◇
「はぁ」
鍛冶屋に入ってすぐの椅子に座っている俺は、そっとため息をついた。
「まだかなぁ。新しい盾、楽しみだなぁ」
『ウガー』
「しばらく待てって言ってたけど、どのくらいかなぁ。聞いとけば良かったね」
『ウガー』
ドゴォォン ドゴォォン
工房からは、何度も何度も激しい爆音が響いてくる。
ゴォォオォォ
ここまで爆音が響いてくるとは中々の職人技だ。この鍛冶屋に来て正解だったかもしれない。きっと、素晴らしい盾を作ってくれているのだろう。
ドゴォォン!
本当にすごい迫力の音だ!未だ嘗て、こんなに激しい鍛冶屋さんがいただろうか。いや、いない。工房から耳をつんざくような爆音が繰り出される度に、どんな盾が完成するのか、俄然楽しみになっていく。
「楽しみだな!俺の、新しい盾!」
『ウガ〜』
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