3章4話 昼前、そしてお着換え(2)



「シィはいいわね~、胸が大きくて」

「きゃ、アリス、揉まないでよ~」


 親友同士のスキンシップなのか、アリスがシーリーンの胸を揉む。手に収まりきらず、しかも指が沈むほどの大きさとやわらかさであった。

 それを確認すると、ますますアリスはシーリーンの胸を揉むが、シーリーンの方は満更でもなさそうである。


「アリスだって充分、大きいと思うんだけど」


「そうだけど……シィっていわゆるロリ巨乳でしょ? だから、その……ロイもシィみたいな身体の方が好みなのかなぁ、って、思ったのよ」


「ふふっ、そんなことないと思う。ロイくんなら、人やエルフを外見で判断しないよ?」


 こんな様子のシーリーンとアリスの隣では、イヴとマリアが同じように着替えていた。

 2人とも、白磁のような肌を、ここには女の子しかいないということで、惜しげもなく晒している。


「わたしも、将来はお姉ちゃんみたいな身体になるかなぁ……」


「わたしが言っても嫌味にしか聞こえないかもしれませんが――人であろうと、エルフであろうと、成長というのは各々、自分のスピードでいいんですからね?」


「うん……」


 下着姿のイヴを、同じく下着姿のマリアが、背中から抱きしめた。

 発育がみんなより少し遅れている妹に、心配いらない、と、そのように言外に伝えているようである。


「まったく、お兄ちゃんには絶対こういう相談はできないよ」

「弟くん、イヴちゃんはこういう悩みに無縁、とか、ちょっぴりだけ考えていそうですからね」


「もぉ、お兄ちゃんはバカだよ。お兄ちゃんのためにお姉ちゃんみたいな身体になりたいのにぃ〜〜!」

「クス、相談したいことがあれば、いつでもお姉ちゃんに言ってくださいね?」


 そこにウソや偽りはなく、イヴとマリアは誰の目から見ても仲のいい姉妹だった。

 よくよく、ロイとイヴ、あるいはロイとマリアという人間関係の図式が成り立ちがちだが、イヴとマリアも充分に姉妹として仲がいいのだ。


「ヴィキーさん……、おっぱい、でかい……」

「う……ん、……、そ……う、だ……ね」

「ありがとうございますわ♪」


 ヴィキーはシーリーンと似たような体型、いわゆるロリ巨乳だった。

 身長が低い割には胸が谷間を、それも、深い谷間を作るぐらい大きい。


 そのたゆんたゆんな胸を前にして、リタもティナも言葉を失うしかありえない。

 余談だが無論、この3人も下着姿である。


「ヴィキーさん! おっぱいを大きくする方法って、なにかある!?」

「そうですわね……医学的に証明されているのは、自慰行為をすると女性ホルモンが分泌されて、胸が大きくなり、他には、肌が綺麗になると言われていますわよ」


「? ティナ、自慰行為ってなに?」

「~~~~っ」


 この上なく危険な発言を、あろうことか一番対処が下手なティナにぶん投げるリタ。彼女の質問にティナは顔だけではなく首、加えて、ギリギリで鎖骨のあたりまで真っ赤になって慌てふためく。

 実はティナもとある異性を想って1人で自分を慰めたことがあるのだが……まさかそれに関する知識をリタに喋るわけにはいかないだろう。


「しっ、っ、し……知らない! ワ、ワワワ、タシ! したことない……もん!」

「そっかぁ、でも、ヴィキーさんはしたことあるよね?」


「うえっ、わたくしに振るんですの!?」

「その、ジーコーイ? を、するとおっぱいが大きくなる可能性が高くなる。だったら、おっぱいが大きい女の子は頻繁にジーコーイしているはず! そして! ヴィキーさんはおっぱいが大きい! ふっふっふっ~、証明完了! アタシって頭いい!」


「おバカですわ! おバカさんですわ!」


 と、このタイミングでヴィキーとティナにとっての救世主が現れる。

 少しこめかみに怒りマークを浮かべたクリスティーナ(下着姿)だった。


「リタさま~? 流石に少々、TPOを弁えていただきたく思うのでございますが?」

「ひっ、クリスの笑顔が怖い!」


「無垢なのはよろしいですが、雰囲気で、質問したら2人とも困ったぞ、と、わからないものですか?」

「うぅぅ……」


「あとでたっぷり、わたくしが教育して差し上げます♪」

「勉強はキライなのにぃいいいいいいいいいいいい!」


   ◇ ◆ ◇ ◆


「お待たせ、ロイくん♪」

「ロイっ、どうかしら?」


「お兄ちゃん! どう、どう?」

「少し恥ずかしいですね」


 ロイが未だ考え事をしていると、シーリーンとアリスを始めとして、続々と美少女たちがこの地域の民族衣装を着て、更衣室から出てきた。


 普段とは違うみんなの服装。いつもとは異なる新鮮なみんなの一面。

 意識していないのに、ロイの胸は一瞬、ドキッとして、顔が熱くなる。


(ボクの前世で言うところの、ロシアの民族衣装、サラファンに近い衣装なのか)


 白いブラウスに、その上から着た赤いジャンパースカートには、緑や黄金こがね色の刺繍で瀟洒しょうしゃなデザインが施されていた。

 少し大きめの帽子や、ブラウスの胸元に付いている赤いリボン、ジャンパースカートに描かれた花の模様なんかは、女の子らしくて実に可愛い。


 ゴスロリや甘ロリに次ぐ、第3のロリータファッション、ロシアンロリータとして世間に認められてもいいぐらいの衣装である。

 この世界にロシアという国はないがロイは内心、それぐらいみんなの可愛さを褒めちぎった。


「センパイ! アタシが一番可愛いよね!?」

「ぁ……ぅ……は、恥ず、か、しい……」


「メイドの身でございますのにこのようなご立派なお召し物を――ヴィキーさま、ありがとうございます」

「メイドとはいえ、こうして一緒に遊んでいる時ぐらい、対等に極力近く扱うのは当然ですわ!」


 と、サラファンもどきを着たまま豊満な胸を張るヴィキー。

 すると彼女はシーリーンとアリスをしり目に――、


「ほらっ、ロイ様! 次のお店に行きますわよ!」


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