1章9話 美少女7人と寝台特急、そして到着(1)



 王都を出発したその日の夜、ロイとシーリーンは添い寝をした……が、それで済むわけがなくなかった。

 同じ客室でアリスとマリアが寝ているのにも関わらず、2人は愛し合った。


 各々のスペースにはカーテンを引けるようになっているものの、所詮は布1枚の壁である。

 シーリーンの〈終曲なき永遠の処女ハイリッヒ・メートヒェン・ベライッヒ〉で精力が100倍になったロイ。彼は彼女の毎日再生する初めての証を、その夜も破いた。


 そして、翌日の夜――、

 今度はアリスと添い寝する番のロイだったが、当たり前だが昨夜のことはアリスにバレていた。ちなみにアリスが魔術を使ってくれたおかげで、マリアにはバレずにすんだらしい。


 エルフ・ル・ドーラ家に伝わる性の魔術【夢のごとき御伽噺】イデアール・シュテルネンリヒト

 ロイとアリスはこの魔術を使い感度が100倍になり、一晩の間に何回も幸せになった。


 そして、移動最終日――、


「? なんか変な臭いがしますね……」

「っっ、き、気のせいだよ、ねっ、シィ、アリス」


「う、うん! なにも臭わないよね、アリス?」

「そ、そうよ、もしなにか臭うなら、機関車の煙の臭いじゃないかしら?」


「それとは明らかに違う気がするんですけどねぇ……」


 なんとかロイとシーリーンとアリスはマリアに事実を隠すことに成功する。

 で、 臭いの件は置いておいて、4人は隣の客室・ブースにお邪魔することにする。


 そこではもう1組の4人組、イヴとリタ、ティナ、そしてクリスティーナがくつろいでいた。

 そこでなんとなく、本当になんとなくということで、8人は1つのブースに集まって、機関車の旅をワイワイと楽しく過ごし始めた。


 ロイとシーリーンは車窓からの大自然豊かな景色を眺めて、

 アリスとティナは読書に勤しみ、


 イヴとマリアとリタはトランプをして、

 クリスティーナがメイドとして、主人と、その仲間たちの楽しそうな様子を笑顔で見守っている。


「ねぇ、ロイくん」

「? なに?」

「窓の外、綺麗だね」


 ロイの耳元で、甘い声で囁くと、シーリーンは彼にそっと寄り添った。

 彼女の胸がロイの腕にあたり、その心臓の高鳴りが腕に伝わってくる気がする。


 もう、シーリーンはロイのことが大好きで、大好きで、自分の全てを捧げてもいいぐらい愛していて、今、この瞬間が、心の底から幸せだった。

 大好きなロイとこうして旅に出られて、2人並んで窓からの景色を楽しめるなんて、数日前までは想像すらしていなかったのだから。


 温泉旅行のチケットを当てたイヴには、感謝してもしきれない。

 内心でイヴに礼を言いながら、次にシーリーンはロイの腕に頬ずりさえして甘えてみせた。


「ねぇ、シィ」

「ん? なぁに?」


「その……え、っと……、すごく気障きざなことを言うんだけど……」


「うんうんっ」

「……、……、景色よりも、その……シィの方が綺麗、だよ」


「あはっ、ロイくん、お顔が真っ赤だよ?」

「流石にしょうがないよ!? 口にするの、けっこう頑張ったんだし!」


「でも、ありがと。ロイくんに綺麗って褒められて、すごく嬉しい」

「~~~~っ」


「愛しているよ、ロイくん♡」


 シーリーンは優しくて、穏やかで、世界一女の子らしい、まるでヒマワリのように幸せそうな微笑みを咲かせる。

 ウソ偽りなく見る者全員の心を一瞬で奪うほど、可愛らしくて、愛らしくて、見ている方が溜息が出そうなほど幸せそうな微笑みだった。


 対して、ロイはそんな彼女の顔を、思わず直視できなくなり、赤面して彼女から視線を少し外した。

 そんなロイの照れた様子に、シーリーンは(シィ、やっぱりロイくんのことが好きだなぁ)と、なぜだか嬉しい気持ちになったのだった。


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