すみれ September Love

大木 奈夢

第1話  すみれSeptember Love

すみれは言った。

「貴方は台風のような人ね」

「……」

俺には意味が分からなかった。


それは九月のことだった。

そりゃあ台風の一つや二つは来るだろう。そんな季節には違いない。だからと言って俺が台風などとはどういうことなのか?


「突然現れると回りに甚大な被害をもたらして、一夜の内に過ぎ去っていく……それが貴方よ」


俺がすみれと最初に出会ったのは八月の終わり。連れと一緒に季節外れの湘南へとナンパ海水浴に行った時だった。


俺も連れも埼玉県出身である。湘南へと繰り出したのは俺達にとっては大冒険だった。


俺はその時、中古車とはいえハイブリッドカーを用意していた。当時かなり溢れた車種ではあったが初期のイメージを引きずっていて、まだそこそこのステータスを誇っていた。


海でナンパして、即お持ち帰り。まさか……信じられない思いを抱きながらも、ほぼ車のお陰と連れと歓びあっていた。


俺とすみれ、連れとすみれの連れ。自然とカップルは成立していたのである。


それなのに……。


九月になると大型台風の襲来と共に、俺とすみれの間に溝が出来た。


誘惑の摩天楼は長続きしない。それは砂上の楼閣。君は夢か幻か。


September Love


台風は俺じゃなくて君の方だ。そして一夜の内に去っていく。俺の心に甚大な被害をもたらしながら……。

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すみれ September Love 大木 奈夢 @ooki-nayume

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