第14話 ナミ


 はぁ〜、疲れた!

 今日も三つの街と村を回って、ジールに頼まれた『人材』探し。

 今、必要なのは『大工』『石工』『とにかく力と体力がある者』だって。

 それと個人的に……ワープが使える人! もう、私一人じゃキツいのよ〜。


 でも、この村に来てから、充実してるわ。昔に戻ったみたいに。冒険もドキドキもないけど、ワクワクはある。この村が目に見えて発展して行くのが楽しいのよね。

 それに、子供達に魔法を教えるのも以外と面白いわ。

 ……特にルルー。あの子は才能がある。さすがマリアの子……。そうだ。ルルーがワープを覚えてくれればいいのよ!あの子ならきっと出来るようになるわ!


 あっ、ルルー発見!

「ルルー!そろそろ転移魔法ワープを教えてあげるわ!」

「?」

「ほらほら、前に、出来るようになるかな、って言ってたじゃない。今のルルーならイケると思うのよ」

「……あ、うん……。その……もういいの」

 え〜!?なんでぇ!?

 魔法は集中力が必要。本人がやる気にならなければ、習得出来ない。

「ルルー。ワープはね、スッゴく高度な魔法でね?選ばれた者しか出来ないのよ?貴重よ?便利よ?」

「うん、でも、今はお兄ちゃんが、村に居るから……」

 ヨハン?

 ────あっ。

「えっ? ……あらやだ、そうなの!?」

 私とした事が、気付かなかったわ!……あらぁ〜、まぁ、びっくりだわ!

「ナミ、内緒よ……!」

「はいはい、分かってますよ〜? うんうん、ルルー!頑張って!応援するわよぉ!」

「えへへ、ありがとう、ナミ!」

 ルルーは顔をピンクに染めて、走って行った。ふふふ、カ〜ワイ〜イ。

 ───あ。ワープ……。

 はぁ……しょうがない、やっぱり誰か他を探そう……。


 けど、あれから楽しみが一つ増えたわ〜。

 ふふ、ヨハンか〜。

 ちょっと年は離れてるけど、軽く許容範囲よね。お似合いじゃない!

 ……ヨハンなら、ジールに殺される事もないだろうし……。

 さて、今日はヨハンに探りを入れてみようかな?

 私は教会へ向かった。

「ヨハ〜ン!」

「……あ、ナミさん、こんにちは」

「も〜、ナミでいい、っていつも言ってるじゃない…… ゴメン、お祈りの邪魔しちゃった?」

「いえ、大丈夫ですよ。どうしたんですか?」

「えーと、ちょっとお話ししたいな、って……」

 うーん、いきなり『好きな子いるの?』とか……おかしいわよね。とりあえず他の話題から……。

「最近、ますます冒険者が増えたみたいね〜。モンスターも増えた、ってことだけど」

「……」

「あ、でもこの村は大丈夫よ!ジールが居るし。皆、戦えるし」

「え?……あ、うん」

 あれ?ご機嫌ななめかしら?

「ナミさん……、ナミさんが僕の年の頃って、ジール達と冒険してたんですよね」

「うん? ヨハン、今何歳いくつだっけ」

「二十二」

「あ〜、バリバリだったわ!一番、楽しかった頃かも……懐かしいわねぇ」

「色んなところに行ったんでしょう?」

「そうよ、魔王城目指してね。強いモンスターが居るって聞けば、すぐ腕試しだ!ってサミエルが飛び付くし、困ってる人がいればマリアが助けたい、って動かないしで、寄り道ばかりしてアチコチに……」

「……」

 いけない。私、色っぽい話から遠ざかってるわ!そうだ、ジールとマリアの恋のこいばなでも……。

 でも、ヨハンの様子が変ね。どうしたのかしら……。 あ……、もしかして。

「……ヨハン、もしかして、冒険に出たい?」

「! あ、ううん、そういうわけじゃ……」

 今、確実に動揺したわ。

 そうよね。考えてみれば、ヨハンはまだ若いんだから……辺境の村の神父じゃ、つまらないわよね。たしかジールと会った頃は、冒険者を目指してたみたいだし……。そっか。

「ヨハン。あなたの人生は一度きりよ? 何かに縛られる事はないわよ?」

「ち、違うよ、ナミ! 僕はこの村が好きだから!」

 ほら、やっぱり。

 この子は……ヨハンは、人一倍責任感が強くて、優しい。この村が好きなのは本心だろうけど、だからこそ、この村に縛られて──自分の気持ちを抑えてる。う〜ん……。

 でも……あら?

 うん、アリかも。

「じゃあね、ヨハン。今日はこれで帰るわね〜」

 私は自分の思いつきを検証すべく、教会を出た。


 私が思いついた事。

 ヨハンとルルーを一緒に冒険に出しちゃえばいいじゃない!

 ルルーは一通りの攻撃魔法を使えるはず。実践経験が少ないけど……。

 ヨハンは回復も蘇生も出来るし。こっちも経験は微妙かな……。

 あとは前衛が欲しいけど、それはこの村に来る冒険者から腕利きを見つければいい。ここは問題なし。

 ヨハンの夢とルルーの恋を同時にクリアだわ!

 ただ、一番大きな障害……ジール。

 ジールはどうしたら、ルルーを送り出してくれるかしら。

 ……まぁ、まずは。


「ルルー、ちょっと冒険しない?」

「えっ……冒険?」

 私はヨハンの様子と、私の計画を話した。

「すごい!行きたい!ううん、絶対に行く!」

「じゃ、次はヨハンね」


「え!?でも、僕は神父だし……」

「だから?」

「せっかく教会も建てて貰ったし……」

「行きたいの?行きたくたいの?」

「行きたいけど……」

「ああ、もう!じれったい!……ヨハン、何も冒険者になって、魔王を倒して来いって言ってるんじゃないの。ちょっと半年とか、一年くらい、ルルーと一緒に世界を見て来たら?ってだけよ。……行ってみたいんでしょ?」

「お兄ちゃん!」

「……うん。行きたい」

 よし。後はジールね。


「ああ、なるほど」

 ……あら?

 絶対、ダメだって言われると思ったのに……。まさかのオーケー?

「二人の気持ちは分かるからな。若いうちはそういうもんだ」

「いいの!?お父さん!」

「ああ、でも少し待ってくれ。とりあえず橋を架ける段取りまではしておかないと……」

 え!? 違う違う、そうじゃない!!

 ジールが付いて行っちゃあ、意味がないのよ〜!!

「そ、村長が長い間不在なんて、ダメよ!」

「うん……そうだな、村長はフレドに任せて……」

 ち〜が〜う〜の〜!ダメだわ、これはハッキリ言わないと。

「ジール!子供の冒険に親が付いて行ってどうするのよ!」

「……?」

「二人とも、もう子供じゃないわ。ジールが一緒じゃ……」

「なら、ダメだ」


 ええ、やっぱりね。




























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