MOM

茶々

第1話

Sexという言葉に教室がどっと湧いた。

保健体育の時間とはいえ私はそういう話を教えるのはどうなのかな、なんて思う。

速く終われ。そう思いながら時計を見つめていた。


そしてもう一つ、私がその経験者だと知ったらまたどっと湧くのだろうかー。


「おい!山田、起きろ!」

先生が山田くんを怒鳴っている。眠そうな山田くんの丸い背中を見つめながら私はふと思った。もう二度と一年前のあの日には戻れないのかなって。


山田くんはクラスの人気者で優しい性格だ。

背は男子の中ではやや低めでガッチリした体付き。顔はそこそこなはずだ。


山田くんに関してこんな噂が流れていた。

「山田くんのお父さんは、あの山田組の組長らしいよ。」 

山田組。この町のヤクザのような集団だ。この町のいざこざにちょくちょく絡んでくる厄介な集団。

その組長が山田くんの父親だという。

山田くんいわくそれはホントウみたいだ。

「でももう縁切ったから」

あの日、私に彼はそういったー。


あの日。それは自分の父親の正体を山田くんが知ったら日だ。幼馴染だった私達はお互いの家に遊び人行くことはたまにあった。

中学一年生になったとき、久しぶりに山田くんの家によってみた。

宿題でも一緒にやらない?と声をかけようかと思っていて行った。

しかし、私達は山田くんのお母さんから予想外の言葉を投げかけられた。

「いないって言ってたあなたのお父さんのことなんだけどー、」


自分の父親の正体は組長。

突然の告白に私達は恐怖に満ちた。


そして迷わず飛び出し、向かったのは渡しの家。

理由は特に無かった。

誰もいない私の家で私達は言葉も交わさず寝転がった。

驚きと戸惑いを隠すのに必死だった。隣で苦しそうな顔をしている山田くんをそっと抱きしめた。

「中学生に話すなんて早すぎるよね」

慰めるような本音を口にしてみた。山田くんが私を抱きしめ返した。

そのまま中学一年生の何も知らない私達が、大人の世界に溺れた。


今思えば、突然の行動とはいえ早すぎた。なんて思える。やっちゃったものはしょうがない、忘れよう。そう思っていた。


私達は、ここにいる誰よりも早く経験者になってしまった。


中学二年生になったいまでも毎日のように蘇ってくるあの頃の記憶。

早すぎた。早すぎた。


キーンコーン、

チャイムが鳴った。

山田くんの背中を見つめながら今日も思い出してしまったー。

もうわすれようーー。

     〜続く〜

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

MOM 茶々 @chachamaru0406

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る