第121話 集団戦/吉奈の切り替え

 魔女のリーダー・吉奈は、二者択一に迫られていた。


 一、当初の計画通り、お笑い生徒会長の未柳を狙うのか。


 二、別の狙いに切り替えるか。


 一つ目の選択肢を選んだ場合、ファイターの奥義バニシングソウルに対処できるかどうかが問題になる。


 移動スピードが倍になっているし、HPの自動回復も始まっていた。


 あれを落とすには、最低限でもアサルトライフルを三発、いや四発はヒットさせないといけない。


 ほぼ外したら、この集団戦で負けると思ったほうがいいだろう。


 無理に奥義を発動した未柳を狙わずとも、他のターゲットに切り替えてもいい。


 東源高校には、他にもHPが削れているキャラが複数いる。


 しかし問題は、未柳のファイターが前に出て、タンクの役割を強引に果たしたことにより、そのHPの削れたキャラを狙うことが難しくなっていた。


 まさしく、集団戦のロジックだ。


 敵チームで、もっとも倒したい相手は、DPSキャラだ。


 だが、そのDPSキャラに届かせるためには『タンクを迂回するなり、吹っ飛ばすなり、安全策で前から削ってタンクを倒すか』しておかないと、届かないのである。


(二者択一。どちらが正解かしら……!?)


 正解、という単語が浮かんでから、すぐに別の感情が浮かんできた。


 正解かどうかよりも、FPSゲームを克服できた証が欲しかった。


 子供時代における対戦ゲームの経験値が足りていなくても、高校生になってから集中して練習すれば、追いつくことができるのだと証明するために。


 魔女のリーダー・吉奈は、未柳のファイターに集中砲火することにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る