第99話 花崎高校のポーク構成
実況解説コンビも、東源高校の選択した格闘家について、興奮気味に触れた。
『まさかの格闘家ですよ。使えるんですね、kirishunは』
『キャラクタープールは広いでしょうけど、まさかアーケードコントローラーまで使えるなんて。いやはや驚きです』
『てっきりバトルアーティスト使うのかと思ってたので、驚きましたね』
『本当ですよ。いやぁ、子供のころから、あらゆるゲーム大会に出てただけありますよ』
観客席も、どよめいていた。熱心なkirishunファンも、この変化球なら問題なく受け入れたらしく、うおおおっと声援を送っていた。
だが、対戦相手である花崎高校は、出鼻をくじかれていた。
● ● ● ● ● ●
「格闘家。そう、彼らは、ノイナール学園とも親しくなって……」
魔女のリーダー・吉奈は、ほぞをかんだ。
バトルアーティストを使わないことだけは、予測済みだった。
だが、格闘家という想定はなかった。
対格闘家用の練習は、ある程度はしてある。
だが、あくまでも、ある程度でしかない。
本格的な対策をやっていないから、咄嗟の反応が間に合わない可能性があった。
吉奈たちにやれることは、格闘家の真骨頂である、ノックバックスキルへの警戒心を強めることだけだった。
だがしかし、花崎高校の選択したキャラクター構成は、けっして不利ではなかった。
吉奈/ソルジャー
真希/ハンター
七海/重装歩兵
御園/マジシャン
優香/プリースト
ソルジャー。見た目は、FPSゲームの一般兵士みたいだった。武器もアサルトライフル一本のみ。防具もボディアーマーのみ。平凡な顔であり、平凡なモーションしかプログラムされていない。
だが、この平凡さこそが、このキャラクターの意図だった。
実況解説コンビも、ソルジャーについて、ちょうど触れていた。
『花崎は、ポーク構成ですよ。それもソルジャーを入れた、がっちがっちのポーク』
『おそらく今年の東京大会だと、初ピックじゃないですか。かなり癖ありますからね、ソルジャーは』
『せっかくですから、この大会を見ている親御さんのために、ソルジャーの特徴、解説しておきましょうよ』
『ソルジャーの特徴ですが、スキルを一切持っていないことです。このキャラは、FPSゲームのキャラクターを、そのまま使う感覚ですね。アサルトライフルの射程は無限で、ずっと狙撃できます。ただし、弾丸一発当たりの威力はそこまで高くないですし、リロードと弾切れの概念があるので、無駄撃ちできません』
『一般的な銃だと、アサルトライフルは近接戦闘向けなんですけど、【MRAF】の場合、スキルレンジがありますから。アサルトライフルの有効射程でも、十分に長くなりますね』
『このキャラは、長所と短所がはっきりしすぎています。なんせスキルないですからね。瞬間火力は低いし、逃げる手段もない。奥義だって覚えません。懐に入り込まれたら、終わりです』
『下馬評によると、花崎の選手たちって、FPS苦手だったはずですけど、よくこのキャラ使いますね』
『練習して、弱点を克服したんでしょう。これは面白い戦いになりそうです』
魔女のリーダー吉奈も、実況解説とほぼ同じことを考えていた。
弱点を克服したから、ソルジャーを含んだポーク構成を選んだ。
自信はあった。
だが、東源高校の格闘家は、予測できていなかった。
しかし、恐れる必要はない。
「みんな、格闘家を警戒する必要があっても、恐れる必要はないわ。懐に飛び込まれる前に、こっちが視界管理で上回って、遠距離からポークでダメージを与え続ければ、絶対に勝てるもの」
吉奈は、魔女のチームメイトたちに、声をかけた。
「すべては全国にいくために」「がんばろう~、吉奈ちゃーん」「勝ちましょう、部長」「ポーク構成で、ピックアップ構成に勝とうよ」
格闘家を含んだピックアップ構成と、ソルジャーを含んだポーク構成の戦い。
この戦いは、俊介の格闘家が、吉奈のソルジャーの懐に、綺麗に飛び込めるかどうかで、決着する。
もし飛び込めなければ、花崎高校の遠距離攻撃をねちねち食らい続けて、東源高校は敗北することになる。
両校ともに、キャラクター構成の強みがはっきりしているため、勝利条件が明白であった。
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