第83話 東源高校、ついに追い詰められてしまう
東源高校において、最初に花崎高校の中央突破に気づいたのは、お笑い生徒会長の未柳であった。
未柳は、複数の足音を聞いた。
だがその音は、四つ目の宝箱が出現する直前にも聞いていたので、そこまで厳重に警戒していなかった。
いつもの未柳なら、もう少し不安に思ったり、仲間に質問したりしただろう。
だが、今回にかぎっては、尾長と俊介、チームの核となる二人のメンバーが無反応だったので、気にしなかったのだ。
だから真正面から、花崎高校の五人のプレイヤーキャラと、恐ろしいほどに大量のカエル型歩兵が突撃してきたとき、頭が真っ白になった。
「敵がきた!」
こう叫ぶので、精一杯だった。
未柳は、花崎高校の織り成す突撃の津波に飲み込まれて、一瞬でダウンした。
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未柳がダウンしたことにより、ようやく俊介&薫・尾長&加奈子も、花崎高校が中央突破してくることに気づいた。
だが、時すでに遅しである。
部長の尾長は、青い眼鏡がズレ落ちそうになるほど、驚いていた。
「そんな、バカな……」
と、ぼやいたときには、すでに花崎高校の全戦力は、東源高校の本拠地に密着していた。
いくら本拠地防衛用のワニ型歩兵たちが、必死になって応戦しようと思っても、数が違いすぎた。
まるでアリの大群が、パンケーキを食らいつくすように、うわーっと東源高校の本拠地はダメージを受け続けて、無残にも崩壊していく。
俊介と薫は、声にならない声をあげながら、本拠地に向かって走っていた。
尾長と加奈子も、間に合わないかもしれないが、でも間に合ってほしいと思いながら、本拠地に向かって駆けていた。
eスポーツの宿命。追い詰められたチームは、会話が減る。
ただでさえ【MRAF】は試合中の会話が、近くの敵に聞こえてしまう仕様だから、しゃべる回数が減りがちだ。
それに加えて、ほぼ敗北が確定したチームは、急激に雰囲気が悪くなって、誰も喋らなくなる。
東源高校も、誰も喋っていなかった。
こういう窮地で逆転できるのは、各自の個人技も、連携も優れた、良いチームだけである。
それを知っているのは、プロチームと対戦したことのある俊介だけだった。
だから俊介は、萎える気持ちを振り絞って、叫んだ。
「諦めたら、ほんの一ミリあった逆転のチャンスがなくなるんですよ!」
もしかしたら、気休めの言葉だったのかもしれない。
だが、大切な言葉だった。
チームの会話が復活して、なにをやればいいのか明白になった。
もはや、敵に作戦内容を聞かれようと、最終的な結末は一緒なので、尾長も叫んだ。
「こちらもすべての戦力を結集して、本拠地回りの敵を効率よく倒すんだ。それが成功すれば、あちらの戦力が空っぽになって、今度は我々が有利になる」
BO3の一本目をかけて、東源高校と花崎高校は、運命の集団戦を開始した。
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