残酷な愛に満ちた話。ここまでの現象を引き起こすような複雑で深い心境を体験する人は、一体この世界にどれほどいるだろうかと考えてしまいました。辛い?いや、でも貴方⋯⋯虫は吐かないでしょう?
思春期における兄弟への複雑にして微妙な心情、愛憎を、幻想的な世界観で描いている。どう評してもチープな表現になるが、読了後まさにこの表現、構成、モチーフしかないと、すべてしっくりくるのがすごい。愛しい。
何でもかんでも俺よりよくできる双子の弟。そんな弟を羨み、憎みながらも、それを隠し続けてきた。ある日、弟がなんと虫を吐いた。口から大量の虫を吐いた。取り乱し苦しげな弟。哀れに思うと同時に、えもいわれぬ喜びが湧き上がる。しかしそのうち事態は思いもよらぬ方向へ進み出し・・・ヒリヒリ痛む生傷のような弟への感情を、えぐい虫の描写が加速させる。強烈で心動かされる一作。