第2話 始まり

平日の真っ昼間に、第5係は事件現場に呼ばれた。

現場は郊外の山林だという。最初に臨場したのは、警視庁捜査一課強行犯捜査第5係刑事の磯城神朔也巡査部長だ。バディの小鳥遊恵巡査部長も一緒にいる。

すると、

「あ、先輩!」

 と男性の声がした。

「お疲れさん、古岸」

 来たのは警視庁捜査一課強行犯捜査第5係の古岸廉巡査だ。バディの伊藤紀巡査もいる。見習いの藤原浩一巡査も一緒だ。

「俺たちに臨場要請って、また厄介な事件か?」

 聞くのは磯城神だ。

「いや、違う」

 否定したのは後から来た係長の茅野良輔警部補だ。

磯城神が

「じゃあ、何で第5係(俺たち)に要請が来たんです?」

 聞く横で頷く古岸、小鳥遊、藤原、伊藤。

「実は被害者の身元がね…」

 茅野の歯切れの悪い口調に

「何なんですか?早く言ってくださいよ」

 藤原が急かす。

すると柄澤が

「警察官なんです」

 茅野の歯切れの悪い理由の種を明かす。

「え?警察官が殺されたんですか?」

 恵が思わず聞く。

「はい」

 言いながら渡したのは警察手帳だ。

「白井…和明…警視監…?」

 受け取った藤原が証票を読み上げる。すると伊藤が

「確か警視庁で警視監と言うと部長か副総監ですよね?」

 と聞き、

「ええ、そうね」

 と頷くのは恵だ。

「警視庁のお偉いさんに白井なんてヤツいたか?」

「いえ…」

 と苦い顔をした柄澤が否定した。

「警視庁じゃないんだよ」

 茅野も苦い顔だ。

「警視庁じゃない?」

「警察庁なんです。警察庁刑事局長」

「はっ?!警察庁?!」

 すると

「お疲れ様です」

 入ってきた刑事二人がいた。労う声につられてその方を向くと、男女のペアが臨場した。

「誰だ?」

 磯城神が聞くと

「確か警察庁刑事局に新設された係の人ですよ。私も詳しくは分からないですが」

 恵が答える。

すると鑑識課の小鳥遊 結愛巡査長が報告を始めた。

「死亡推定時刻は今朝の4時前後と思われます。死因は、足を滑らせたことによる転落死でしょう」

「それなら、事故じゃないんですか?」

「いえ、奇跡的にあった防犯カメラをチェックしたところ、ある人物が白井警視監を落とした映像が残されていました。被疑者の身長は大体160センチ前後だと思われます」

「うーん…これじゃあ男か女かわからないですね」

「ああ」

「あ、それと、第一発見者があのバンの中にいます」

 と結愛がその車を指す。磯城神と恵と伊藤がその車を目指す。後から残りの面々がずらずらとついてくる。

閉めてある車のドアを開き、

「混乱しておられるところすみません」

 と磯城神が前置くが、

「?!」

 第一発見者の顔を見て伊藤が驚く。

「沙織さん?!」

「え?」

 と恵、古岸が言い、車の中を見る。

「お、大塚さん?!」

 と藤原を除く驚く一同。

「お知り合いですか?」

 藤原が聞くと古岸が藤原の腕を引っ張り、

「元警察庁公安局長の娘さんで、伊藤くんの元恋人だよ」

 耳打ちする。

「え?!伊藤さんの恋人?!」

「「元」な。元」

 磯城神に言われる。

「さ、沙織さんが何でここに?」

「何でって第一発見者だからだろ」

 と磯城神が突っ込むが

「違いますよ、何で山林にいるのか聞いてるんですよ!」

 質問の意図を言う。すると沙織が

「恋人に言われて来たの」

 と答えた。

別れたためか、沙織に恋人ができたことに動じない伊藤。

「で、その彼氏さんは?」

 と恵が聞く。

「呼び出されたからわからないの」

「彼氏さんの身元は?」

「宮下…悟」

「宮下?!」

 と藤原以外のメンバーがまた驚く。

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