第36話 スープ
「スープ」
メイドは同じように料理の種類を言うと一列に並んだ。
前回のじゃんけんで負けた順に選ぶことになった。つまり、私が最初に選ぶ。
どのスープにしようか迷う。どのスープも色、匂い全てが同じに思えるのだ。
ど・れ・に・し・よ・う・か・な?
変に考えすぎるよりも、適当に選んだ方がいいと思った。
全員が選び終え、食事の合図が出された。
2回目になると、1回目よりは口に運びやすい。
それでも怖いものは怖いのだが。
ええい、ままよ!
口の中に流し込んだ。
結論からいえば、私のものに毒は入っていなかった。
助かった……。確率は9分の1だが、奇跡のように思える。
スープはコーンスープだった。いつも食べているものなだけに、美味しさがよく分かる。味の深さ、こくが違う。いつまでも口に広がるほのかな甘味にすっきりとした後味。
毒が入っていないと分かれば、遠慮をする必要はない。
私はスープを勢いよく飲んだ。
私がスープを味わっていると突然スープの中に顔を突っ込んだ人がいた。髪が長い女の人だ。
スープから泡がブクブクと出ていたが、やがてそれも止まった。
今度は彼女が毒を……。
私は、当然ではあるが、食欲がなくなった。
私はスープを残した。
ヌヌが合図をすると、また次の料理が運ばれて来た。
1人が死に、次の料理が運ばれてくる。
この流れじゃダメだ。
このままじゃ、死ぬ。
私はこっそりココに声をかけた。
「最初にヌヌやテテが言っていたことって覚えてる?」
ルールに何かヒントが隠されてはいるかもしれない。内容を細かに覚えていればいるほど都合がいいが、しかしそんな人はそうそういないだろう。あまり期待はしていなかった。が、
「うん。記憶力はいい方」
と、意外な答えが帰ってきた。
「ヌヌは、食堂内にいるものは全員か席につくこと。毒入りの料理が1つあって、自分でどの皿がいいか選べることを話してた。
テテはヌヌが試練に参加することを指示した。ヌヌが必死に訴えたのに、死んだら次の試練で新しいメイドを支給するから問題ないって言われてちょっとかわいそうだった」
うーん。やっぱりヒントになりそうなものはないな。
しばらくすると、ココがなんだかそわそわし始めた。
「椅子、座るの疲れた。外に行きたい」
ココはまだ7才の子供だ。長時間座っているのは辛いだろう。ましてや、一定時間で死体が増える部屋となればなおさら。
部屋から出ちゃいけないからな。ルール違反をすればどんな目に遭うのか分からない。
私はココにもう少しの辛抱だと言って励ました。
なんだろう。私は何かを見逃してる気がする。
私は自分の思考をもう一度見直してみた。
ココはまだ7才の子供。長時間は辛い。死体が増える。部屋から出ちゃいけない。
……部屋から出ちゃいけない。
私はヌヌとテテの言葉を思い出した。
『ルール違反かどうかは私が決める』
『死んだら次の試練で』
そうか。
見えたかも知れない。
この試練の突破口。
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