第29話 探索

いなーーーい。


1人もいないよ。ちくしょう。


どれくらい時間が経っただろうか。

私はまだ、宝石の場所を知っている人に会えていなかった。すれ違うのは参加者のみ。

いい加減疲れてきた。

人を探している途中で、近くの引き出しやカーペットの下など、色々と探してみたが宝石はどこにもなかった。

他の参加者もなかなか見つからないようで、苦戦していた。

控えの間はテテが説明しているときは扉が閉じていたが、説明が終わるとすぐに開いた。

お城の外へと向かう方の扉は閉じたままだったが。

扉が開くと参加者達はそれぞれバラバラに探しに行った。

扉を出ると、左、右、そして前に廊下があった。

左右の廊下には部屋がたくさんあって、全ての部屋の鍵は空いていた。廊下を進むと何度も分かれ道があって、油断すると迷子になりそうだった。

前方の廊下には部屋はなかった。見通しがよく、向かって正面に扉が1つあるだけだった。

その扉には鍵がかかっていて、押しても引いてもびくともしなかった。


「あの、ちょっといい?」

参加者の1人が手を挙げて言った。

クリーム色を纏っている、私よりも少し年が上の女性だ。

「このままバラバラに探していても、埒が明かないと思うの。だから、皆で情報を交換しない?それぞれ探す場所を決めて、自分の宝石を見つけられたらそれで良し。他の人のものを見つけたら、鍵がかかっている扉の前に置く。

この方が効率良いと思うんだけど」

なるほど。確かにその方が隈無く探せる。

この廊下は思ったよりも広い。1人で探すのは骨がおれる。


「関係ないね」

男の声が聞こえた。声がした方向を見ると、20代くらいの男性が歩いてきていた。

手には宝石を握っている。

「ちんたらしてるお前らよりも速く、俺は宝石を見つけた。人の協力なんていらないんだよ。

それに、参加をしたとして、他のやつの宝石を見つけたら先を越されちまうじゃねえか」


提案をした女性はいらっとしたようで、男性の前に立ちはだかった。そしてきつい口調で言った。

「あなたは運良く見つかったかもしれないけれどね、まだ見つかっていない人がほとんどなの。

それに、王様への上奏は順番なんて関係ないと言っていたじゃない!」

男性は鼻で笑った。

「もしかして、あのテテとかいう女の話、全部信じてるのか。おめでたいねえ。

いきなり人を殺すやつのことを信じるとは。

上奏は最初にした方がいいに決まっているだろうが。

後回しにされたら、印象が薄まって、自分の意見を記憶に残してもらえなくなるぞ。

それに、時間制限があるのを知らねえのか?

『最初の人が上奏してから、1時間後に締め切る』って応募用紙に書いてあっただろ。

まあ、端っこに書いてあったから、馬鹿なやつは見てないだろうがな」

図星だ。知らなかった……。

「ここまで丁寧に教えてやったんだから、もういいだろ。どけよ」

女性は悔しそうに唇を噛むと横にずれた。


男性は扉に近づくと、自分の持っている紙を扉のポストのようになっている所に入れた。その後に、ドアノブの下の大きな穴に宝石を落とした。

ぴっ、と短く音がなると、鍵が開いた。

男性が扉の向こうへ行き、扉を閉じると鍵が閉まる音がした。


後には、悔しそうにうつむいた女性と、呆然としている参加者が残された。


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