第27話 開催

広場には何百人もの人がいた。

性別や年齢はバラバラである。

私の右隣には同い年くらいの女の子がいるが、左隣にはかなりの年の老人がいた。

みんな緊張しているが、どこかわくわくしているようにも見える。

広場は地面が人工芝になっていて、周りには木がたくさん生えている。

どれも手入れされていて、とてもすっきりしている。

試練はあと5分後に始まる。


「えー、本日は! 『上奏権獲得試練』に参加してくれてありがとーう!」

開始時間と同時にお城の門のそばで女の人がマイクで叫んだ。

20代くらいだろうか。全身を黄色の服で包んでいる。銀行員のような格好だ。

「今から皆さんには、ルール説明をするよ! まず! 皆さんはこの門をくぐって、お城の中に入ってもらうよ! 皆さんに目指してもらう場所は最上階! 王座の間! お城はひっろーいので迷わないでね! 王座の間にたどり着けた人は王様に上奏することができるよ! 先着順だけど、人数制限はないからゆっくり来てくれても構わないよ!

でも、早く着いた方がお得だけどね!」

テンション高く話し終えた女の人は、ふうっと一息ついた。そして再びにっこりと笑顔を作った。

「みんなはお城に来たことはないよね? 当たり前だね! と、いうことで、お城の説明をしまーす! 

お城は大きく、控えの間、食堂、大広間、礼拝堂、寝室、更衣室、中庭、洞窟、居間、書斎執務室、王座の間といったふうに分けられるよ! 本当はもっと部屋があるけど、今日は非公開! その他、北の塔、東の塔、南の塔、西の塔があって、そこに行かなくちゃいけない人も出てくるかもね!

とにかく! 詳しいことは入ってすぐに配られる紙に書いてあるから、よく読んでね!」

参加する人たちは女の人の話を真剣に聞いていた。メモをしている人もいる。その一方で、「あの女の人、きれいだよね~」といった内容を話している人もいた。


「これにて説明は以上! いよいよ『上奏権獲得試練』が始まるよ!

さあさあ、門の中に……っと、その前に!」

女の人が指を鳴らす。

瞬間、地面から無数の巨大な針が飛び出した。

多くの人が刺し抜かれる。

幸運なことに私の立っている場所から針は出ていなかった。

だが、右を見ると先ほど見た、同い年くらいの女の子が針によって絶命していた。

私は状況を理解するのにしばらく時間を要した。それは他の人も同じだったようで、誰も何も言わなかった。

数秒後、1人が悲鳴をあげたことをきっかけに他の人も思い思いの行動をしだした。私自身も目の前の光景に耐えきれず、吐いてしまった。

なんでこんなことを?人の命をこんなふうに……!

私は混乱していた。

参加者の中に帰ろうとするものがいたが、衛兵に止められていた。

阿鼻叫喚が巻き起こる中で、その原因を作った女の人はどうでもよさそうに眺めていた。


「はいはい、黙ろうかー」

女の人は気だるそうに言うと盛大にため息をついた。

「毎回毎回、同じような反応をするねー、君たちは! 申し込み書に書いてあっただろう?

『王様に全てを委ねること』って!

君たちはそれに同意してここにいるんだろう? ならば何を今さら驚くことがあるのさ!

王様はこの国を支える唯一無二のお方! そんな王様に上奏するのが、愚か者では話にならないでしょ!

知力、体力、運。これら全てを兼ね備えた優れた者が王様に上奏することができる。

さあ! 試練乗り越えてみせな! 王様の愛する国民達よ!」

女の人が踵を地面に勢いよく下ろすと、門が開き始めた。

「申し遅れたね! 私の名はテテ!

王様の側近の1人だよ!

では行こうか、運の良い国民達!」

生き残った参加者達は、指示されるままにお城の中に入っていった。

前に進みながら、ちらりと後ろをうかがうと、大勢の死体が転がっている。


絶対に生き残って、王様に会ってやる。

私は心の中で力強く叫び、門をくぐった。


私の指先はまだ細かく震えていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る