第21話 ダメだよ

「茜、どうしてあの人と一緒にいたの?こんなに遅い時間まで」

家に帰った後、トトに問いつめられた。問いつめられた、というには優しい口調だった。けれど、私がどこにいるときにでも聞いてくるので、やっぱり問いつめられているのかもしれない。

「森を散歩していたら、たまたま会っただけだよ」

「本当?たまたまなら仕方ないけれど。でも、もう会ったらダメだよ。茜があの病気になったら、とても悲しいから」


トトは私のことを心配してくれた。

でも、レレさんの話を聞く限り、うつるようなものでは無さそうだし……。

「でも大丈夫そうだよ。普通に話せたし。結構いい人だったよ」

「話したの?」

トトは信じられないというように目を見開いた。

「茜、あの病を患っている人には話しかけちゃダメなんだよ。茜だって見たでしょ?正気じゃないことは明らかだもの。何をしてくるか分からない。今回は茜に怪我がなくて良かった」

トトは私のことを考えて言ってくれているのは分かっていた。でも、レレさんは発作さえなければ、普通のいい人なんだ。

私は、レレさんの一面しか見ないで判断しているトトに、少し不満を覚えた。

「トト、あのね、あの人は本当は普通の人なんだよ。たまに、ああいうふうになっちゃうだけで。トトだって、1回一緒に話せば分かるはずだよ」

「でも……次会ったときに大丈夫な保証はないでしょ?大人はみんな近づこうとしないよ。だから、茜もダメ。もう近づかないで」

「分かったよ……」

本当は全然分かっていない。でも、トトに何を言っても伝わらなそうだと思った。トトは長年、言い聞かされているんだから。

しょうがないんだ。


私はレレさんに会いに行くときはトトに内緒で行くことに決めた。

幸い、この国は他人にあまり干渉しないから、大丈夫だろう。

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