自殺した少女は異世界に迷いこんだ
yurihana
第1話 自殺
時折そよ風が吹き、冷や汗が背筋を伝う。
私は今自殺をするために、ある高層ビルの屋上に立っている。
ここは人がめったに来ないことを、事前に調べておいた。
飛び降りた時に他の人を巻き込むようなことは起こらない。そして救急車を呼んでくれる人もいない。
飛び降りたら最後、死ぬ。
ここから飛び降りる……。
正直とても怖い。足が震える。
でも死ねば、解放される。
あの日々から……。
悩んでいても仕方がない。
覚悟はしてきたはずだ。
掴んでいた柵から手を離す。
と、その時、
トンッ
誰かに背中を押された。
頭から地面に落ちていく。
落ちる刹那、私は自分を押した相手を見た。
そいつは、私を、いじめていたやつだった。
かなりのスピードで落ちているはずなのに、なぜか時間がゆっくり感じる。
上下が分からず、死への恐怖から意識が朦朧とする。
徐々に、学校の景色が見えてきたような気がした。
誰かの泣き声も聞こえてきたような……。
あれは私だ。
ああ、そうか、これが走馬灯というやつなのか。
* * *
4月、まだ学校になれていなかった私はクラスの中で一番おとなしかった。
私が入学できた学校はなかなかの進学校だった。
そのせいもあるのだろうか。ストレスを抱えている人が多かった。
ほとんどの人はストレスを上手く消化していた。しかし、中には人にやつ当たりをする人もいた。
そういう人達の格好の的だったのだ、私は。
あいつらは、先生が気づくような方法は避け、私を上手にいじめた。
休み時間に一緒に話しをしてくれる人もいたが、あいつらが来ると、遠慮気味にいなくなった。
人は人、自分は自分。
そう割りきっているようだった。
話してくれる人がいただけましなのだろうが、私には耐えられなかった。
学校に私の居場所はなかった。
私の学校の成績はあまり良くなかった。
親はどうして点が取れないのか、とよく聞いてきた。
自分は必死に努力している。理由があるなら、聞きたいのはこちらの方だ。
だが、勇気を出して言い返しても怒鳴られてばかり。
私は内心で唇を強く噛みながらも、親には謝ることしか出来なかった。
私は時々声を殺して部屋で泣いた。
私の味方は誰もいなかった。
* * *
私は目を閉じた。
やはり私は間違っていなかった。
あの苦しい日々から開放されるのだから。
……おかしい。
いくら何でも長すぎる。
目を開けて周りをみると、真っ暗だった。
町の景色、ビルの壁。そういったものが何も見えない。
もしかして私はすでに死んでいて、ここは死後の世界なのでは?
でも私は痛みを一切感じていない。体がどこかにぶつかった感覚もない。
私はずっと落ち続けているのだと考えた方が、しっくりくる。
しかし一体ここはどこなんだろう。
私はどこまで落ちてゆくのだろう。
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