反転

「叔父上、我軍はなぜ蛮族征伐程度で1年掛けているどころか…沿海州まで失陥しているのです?」


天幕の裏から聞こえる声。


「アンドレイよ、控えていろ。」

「しかし、叔父上の帝国は世界に冠たる覇権国であるはず!叔父上御自身がそうおっしゃっていたではありませんか!」

「これは大人の話だ…!」

「我がロシア帝国の誇るコサック騎兵隊で、一瞬にして轢き潰してしまえばよいのです!それが、原住民たった一族を駆除する程度でなぜここまで躊躇を??」

「っ…!」

「叔父上はわたくしめに一体嘘をおきになられたのですか!?」

「軍と怠惰な民衆どもが朕を騙しているからだ!!」


ツァーリはたまらず怒鳴る。


「朕はこんなにも真摯に国を想い、政治まつりごとに打ち込んでいるのに!奴らは無償で送られてくる戦争物資をいいことに、それを浪費しながらだらけて遊び呆け、挙句の果てには『蛮族相手に負けました』というふざけた言い訳を寄越して退却し、さらなる物資を要求するのだ!」

「なっ…!」

「奴らは朕のような純粋でひたむきな愛国心などこれっぽっちも持ってなどおらん!主君に殉じてこそロシア臣民を名乗れるのに、奴らはただただ朕の民という名誉と朕の恵みを浪費しているだけなのだ!」

「そ、そんなことが…」

「義務を忘れ、権利だけを厚い顔で堂々と要求する。それが最下層の民衆という存在なのだ!」

「ッ、許せません!」

「だろう!?それに付け込まれ、他の列強共に足元を見られたどころか…、あの劣等人種どもが調子に乗り出したのだ!我がロシア軍を、撃破したと、大嘘を声高に!」


歯軋りするツァーリに、大公も同調する。


「卑劣なッ!!ど、土人風情が、我ら精強なるロシア帝国軍に敵うとでも!!」

「そうだ!忌々しいジョンブル共めから支援を受けておきながら、我軍の不忠をいいことに我が物顔で朕の帝冠の地を闊歩しているのだ!これほどの屈辱を、これ以上、朕に耐えろとでも言うのか――!!!」

「我慢なりません!わたくしが直接、知能の低いマカーキどもに教育を施さねば!」


大公は立ち上がる。


「叔父上!わたくしは直ちに極東へ行きます!」

「……なんだと」

「不忠なる愚衆と将兵どもの綱紀粛正と、とてつもない勘違いにつけあがったゴブリンどもに人間様の力を見せつけてやるのです!」

「ならん、高貴なるロシア皇族が蛮族征伐ごときに手を汚すなど、末代までの恥」

「叔父上!」


大公はそこでとどまる。

一旦溜飲を下げてから、至極冷静に、されど強く意思を込めた声でこう続けた。


皇帝陛下ツァーリ。醜悪なる愚衆なれど、陛下の所持物。それを適切に管理することは皇族の義務。私は、ロシア大公として指導に出なければならないのです。どうか、お察しください」

「ぐっ」

「隷下の帝室竜騎兵を従えて往きましょう。劣等民族マカーキは馬など持ってすらいないでしょうから、精鋭の我が竜騎兵で鎧袖一触。」

「確かに我が帝室の竜騎兵は世界最強だが…」

「蛮族相手をロシア皇族直々手を下すとなれば過剰戦力でしょうが、僭越ながら出征させて頂きます。わたくしが直々に行くからには、必ずや勝利を授けましょう」


ツァーリが明確な返答をしないうちに、彼は憤然と歩みだす。

帝室竜騎兵一個連隊。800騎の皇室直属の精鋭とともに、一人の若き大公が極東戦線へと出陣したのは、1904年2月10日のことであった。




・・・・・・

・・・・

・・




「いまの帝国極東軍に大公様など抱える余裕はないぞ!?」


2月24日。報せを受けた帝国極東軍の総司令、グリッペンベルクはそう叫ぶ。


「しかし、もはや到着3日前で…肝心の大公殿下の戦意は燃え上がっていると」

「クソッ、こんな戦線に竜騎兵など、大公殿下は自殺されに来られたのか…!」


拳を握りしめて唸る彼に、ウラジオストクの包囲形成を終えて帰還した第2シベリア軍団の軍団長・クロパトキンが肩をすくめる。


「その感覚は我々と前線の将兵以外には理解できまい。騎兵は役に立たないなど、いくら言っても無駄だろう。」

「…この前線を見せても、無理か?」

「だろうな。どこかの騎兵を引っ張り出してきて突っ込ませ眼前で壊滅させなければ、騎兵の時代は終わったなど、大公殿下どころか、列強のどの軍人も信じまい。」

「補給さえ足りていないというのに…!誰が帝室の親衛をやるのだッ!」


モスクワ方面から急遽シベリア鉄道を貸し切って護送されてくる若き大公の帝室竜騎兵は、帝国極東軍の補給線を絶賛遮断中だ。


「っ…、苦肉の策だ。極東軍の総司令部をウスリースクへ移す。」

「前線に出るつもりか」

「危険は承知の上だが、大公殿下に傷を負わせるのはもっと拙い。」

「……了解だ。すぐ私も向かおう」


こうして、招かざる客のために、極東軍の中枢は図らずとも最前線へと踊り出る。



__________

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        ③▲

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

①ウスリースク ②アルチョーム ③ナホトカ

◎ウラジオストク市街




爆音が響き渡る。

2月28日。アルチョーム最前衛、七三ななじゅうさん高地の北堡塁だ。


ズガガガガ、と絶え間なく続く銃撃に、ロシア歩兵は物量に任せてただやみくもに突撃を放つ。弾幕が薄まった瞬間を狙って、最悪の脅威となっている機関銃陣地を最優先で制圧しにかかる――第一次大戦初期の無益な犠牲を膨大に積み上げた――戦法である。だ。

一斉掃射に前列の100人が血肉を捧げ飛ばして、続く二列目が数メートル進みまたも屍の壁となる。


「……相変わらず熾烈だな」


双眼鏡を下ろし、ルーデンドルフはそう溜息づいた。

それにヒンデンブルクも頷き返す。


「列強同士ならともかく、極東の最辺境でこのような戦争とはな」

「なぁ、ヒンデンブルク。一体我が国は――」

「ぬかせ。…東洋特有の事情だ」


そう自分に聞かせるように、ヒンデンブルクは踵を返して立ち去る。

その後ろ姿を見送りながらルーデンドルフは憂鬱げに呟いた。


「東洋特有の事情、か」

「とてもそうには思えませんけれどね」

「…誰だ?」


ルーデンドルフが振り返った先には、一人の青年将校がわけもなさげに佇んでいた。


「マックス・ホフマン陸軍中尉であります。在籍は参謀本部のロシア課。」

「参謀本部、だと?」

「もちろんバイエルンの方ではなく、天下のプロイセン参謀本部です」

「…なるほど。出世街道只中のエリートというわけか」


いえいえ閣下には及びませんよと、ひとしきりホフマンは謙遜する。

して、彼がそれから本題へ切り込もうとしたとき、後ろから今度はまた別の男が英語で喋りかけてきた。


「おっと、ドイツ軍人のおふた方。ひとつお聞きしたいことがあるのですが」


その軍套の隙間より見ゆるは星条章。合衆国軍人の最たる証明だ。


「おっと私が先客ですよ、植民地人さん」

「……言ってくれる、旧大陸の遺物が」


流暢な英語で啖呵を切ったホフマン。二人はバチバチと応酬を始める。

それもそのはず。帝国ライヒと合衆国は世界で最も急速な発展を遂げている二新興国だ。この間も鉄鋼生産で合衆国が帝国ライヒに追いつき世界1位の座を奪取、負けじと帝国ライヒは船舶の総トンで合衆国を抜き去り大英を追いかける。遠く離れているにも関わらず二国は世界覇権を狙って競争を繰り広げているのだ。


「と、そんなことをしに来たわけではありませんでしたね。」


男はこほんと咳払って、二人のプロイセン軍人に向き直る。


「私はアーサー・マッカーサー陸軍中将。合衆国観戦武官としてジャパンへ」

「ルーデンドルフ陸軍少佐だ。……です。最初はロシア軍付であったが、紆余曲折を経て皇國側観戦武官の任を拝命しています」


ひとしきり手を握り交わして、マッカーサーを名乗った将官は尋ねる。


「なぜ両軍ともに騎兵を使わないのでしょうかねぇ?」

「……と、言いますと?」

「いいや、単純に…あのような鉄の塊に駆動輪を付けた珍妙な兵器を使わずとも、軽くて速い馬を使えばいいのではと思いまして」

「失礼ですが、この弾幕を騎馬がくぐり抜けるとでも?」

「おやおや、ヨーロッパの方々が騎兵を否定されますか。騎士は我ら白人の在るべき姿、前線を疾く戦場の華でしょうに。」

「軍馬とて裸の動物なのですよ?」

「この程度をくぐり抜けられぬ騎兵隊しか持てないようでは、列強失格でしょう」


自信満々にマッカーサーは笑ってみせる。


「非白人国家の三等国が騎兵を持っていないのは理解できますとも。しかし、あれだけ世界最強だと吹聴して回っていたコサックを、ロシア帝国が出さないというのはいかんとも理解し難い」

「それは先年の戦いで――」

「待て!」


口を出そうとしたホフマンを、ルーデンドルフが止める。

ホフマンが抗議の声を上げる前に彼は素早く耳打ちする。


「…とおっしゃいますと?」

「皇國側にいた各国観戦武官は急速に北上していく最前線に追いつくことができず、ロシア側にいた観戦武官は、大抵のロシア軍前線が丸々パニックになってしまったものだから観戦どころではなかった。」


彼は静かに息を継ぐ。


「運良く皇國軍装甲部隊の正面に配置されていた我らドイツ帝国観戦武官団だけが、容赦なく蹂躙されていくロシア騎兵の有様を見届けられたのだ。

 すなわち、日露以外で騎兵の脆弱性を理解したのはプロイセン軍人だけなのだ」


この発見を他の列強にみすみす漏らすのはあまりにも勿体なさすぎると彼は言う。

ホフマンも、なるほど、と頷いて引き下がった。

しかし、それで事は済まなかった。


「おっと、ようやく騎兵の登場ですか」


ふと聞こえたマッカーサーの呟きに、二人のプロイセン軍人は振り返る。


「「っ…!?」」

「ほぉ、これは…」


マッカーサーが感慨の溜息を漏らす横で、彼らは硬直した。

突然ロシア軍陣地に現れた騎兵。ここまで来て今更騎兵を出すのかと、二人はロシア軍司令部の正気を疑った。が、その騎兵隊に掲げられる家紋を目に入れて、今度こそひっくり返る。


「あれは…、"双頭の金鷲"!?」

帝室ロマノフ紋章ということは――皇族、だと!」


「帝紋の騎士が戦場へ舞い降りる。間違いありません、あれはロシア帝国の誇る精鋭『帝室竜騎兵』。」


ふふと不敵に笑うマッカーサー。


「騎兵の出てきたここからが本番です。ロシア帝国の本気、見せてもらいましょう」



・・・・・・



「はぁ、随分と苦労させられたものだ…」


若き大公は苛立ちを隠さない。


「極東軍のあの腰抜け度合いよ。司令官から参謀まで余を止める。それも『騎兵は終わった』だか『無駄死にになる』だかふざけたことを、この余が率いる帝室竜騎兵に喚き散らす。これだから下民共は嫌いなのだッ!」


ガッ、と彼は後方を睨みつける。

わざわざ移転してきた総司令部とて、大公である彼を止めることはできなかった。


「揃いも揃って救いようのない無能ども。あのザマでは極東の物資が不足しているなど大嘘も甚だしいだろう。どうせ平然と物資を着服しているのだろうからな」


長い溜息をついて、最前線へと視線を戻す大公。


「しかし、この余が来たからには全て終わらせてやろう。

 腐った愚衆共も、後ろにしか歩けない軍人共も、つけあがった六等国も、余が全部踏み潰してやる。まずは醜悪な黄色の土足で白人様の庭を踏み荒らした汚物マカーキどもの消毒だ。」


人間様へ無様に命乞いをするチンパンジーの絵図を思い浮かべて、確勝の笑みを浮かべる大公。

次の瞬間、皇國陸軍が動いた。


「おっ?ついにこの皇族章を目に入れたか?今頃向こうはパニックだ…!」

「っ、大公殿下!アレをご覧ください!」


隷下の一人が一角の敵陣を指してそう叫ぶ。彼が引きつられて目をやると、陣地が撤去されて兵士たちが次々と後方へ脱出していた。


「ぷ…くくっ、おい、まさかなぁ?勝手に恐慌を起こして、自壊し始めたのかァ?」


市街地の方へ退却していく皇國陸軍を前に、不戦勝を飾る帝室竜騎兵。

最初の出陣であまりにも鮮やかな前進を収めた若き大公は、簡単に有頂天になった。


「クハはハァッ!余の竜騎兵ワイバーンを見ただけで震え上がって撤退とは!!

 所詮は知性のない土人、剣を交えることすら必要なかったなァ!!」


馬蹄を突き鳴らし、彼は配下の近衛たちへ叫ぶ。


「やるぞ、追撃だッ!明朝にはウラジオストク市街に入城する、凱旋だァ!!」

「「「はッ!!」」」




――――――――




ジリリリリリッ!


響く受話器。

慌てて取ると一つの報告が入ってきた。


「ッ、それは本当か!?……あぁ、ああ!了解、次の段階へ移行する!」


「総長…?」

「喜べ、久しぶりの吉報だ」


首をかしげる雨煙別へ僕は笑いかける。


「市民をロシア領内ナホトカへ送り届けた最後の艀が本土への帰途についたらしい。『ダンケルク』は完遂だ!」

「……とすると」

「市内撤退へ移れ。粘りに粘ったこの七三高地の堡塁線ともお別れだ!」


普段感情を顕にしない雨煙別の口元さえも、ほんのわずかに綻んだ気がした。…いいや、気がしただけか。彼の表情はいつも通りどこか憂鬱そうだった。

けれどようやくだ。二百三高地もびっくりの激しい遅滞戦闘であった。


「503、504機動砲兵から撤退を開始。我ら指揮本部は突撃直衛隊と共に撤退の援護を行う。戦務参謀、出撃するぞ!」

「……はっ」


消え入るような声で頷いた雨煙別を背後に、指揮本部の天幕を飛び出して、騎馬に飛び乗った。

程なく別海大尉以下突撃直衛隊が現れる。


「召集完了、欠員なしです」

「了解。出陣だ」


本部と突撃直衛隊合わせて総員60名と2個小隊程度だが、白兵戦をしに行くわけでもないし、これで十分だ。


「重迫撃砲…、初陣ですね」

「あぁ」


重量 31.17kg、口径 75mm。

最大射程731mで下瀬榴弾をかっ飛ばす塹壕潰しの第一人者。


「直掩航空隊は使わないのですか?」

「対空陣地が設営されている。決戦を前にして、100隻弱しかない飛行船をここで溶かすわけにはいかないからな」

「航空戦力の温存というわけですか」

「温存ってほどでもない。むしろ、一度も実戦で重迫撃砲を使ったこともないまま市街決戦へ突入するのは自殺行為だからな」


精々腕鳴らし。所詮は退却の援護であり、敵の追撃を程よく挫かせればよいだけ。


「先鋒は頼んだぞ。ちょっとしたリハーサルだ」

「わかりました。……直衛中隊ッ、前へ!」


大尉章を輝かせながら前衛へ進む彼女の後ろ姿。

華奢ながらも、それはもう立派な陸軍将校の背をしていた。

あの別海べっかい睦葉むつはが、だ。


「……あのときは伍長だったのにな」


感慨深げに呟いてしまう。僕とてまだ齢24だと言うのに爺臭いことを考えるようになったものだ。いやこの職場周りおっさんばっかりだし仕方ないか。

おっと、本題から脱線しかけたな。視線を戻して雨煙別へと振り返る。


「さ。我々もそろそろ行くか、戦務参ぼ、……う?」


言葉を止める。いや、失う。

あのどこか影を落とした不動の無表情が、そこになかった。

いいや、それどころじゃない。


「おい?戦務参謀?」


顔を真っ赤に染めて、たった一点前方だけを見つめる雨煙別。

その視線は別海大尉を捉えて放さない。

いくら言葉をかけても応答がない。夢中になっている。

それはまるで、いいや、ここまで来たらもう確定的だろう。


「勘弁してくれよ……」


肩を竦めて空を仰ぐ。想定外もいいところだ。


「…決戦前にそれは、死亡フラグだぜ?」


それに、お前がその感情を抱く相手は――あのだとばかり思ってたぞ。



・・・・・・



ヒュルルルルルッ、ドゴォ!!


「というわけでな、雨煙別くんがどうやら…。」


一方的に迫撃砲を撃ち続けるだけののどかな撤退援護リハーサルの合間に、僕は本即応集団の『旗手』を務める少女へと話を振っていた。


「へぇ〜?にっしし、リューリってば色づいてきちゃってぇ…」

「…え?そういう反応?」

「反応?」

「いや、もっと不穏な方に行くんじゃないかと思ってたんだけどな」

「不穏…?ぁ…、あっはははは!白夜びゃくやが嫉妬するって総長さんは思ったんですか?ぜーんぜんそんな感情は無いですよ。」


晩生内おそきない白夜びゃくやはそう笑う。


「白夜とリューリは幼馴染ってだけ。ほんとーにそれだけなんですよぉ?」

「そんなもん、なのか?」

「幼馴染同士で恋に落ちるーっ、みたいな恋愛物語は王道ですけど、現実に一緒に育っちゃうと異性には見えなくなるんですよねぇ」

「なる、ほど?」

「白夜だって、子供の頃はそういうのに憧れました。けれど…それでもやっぱり、リューリは家族みたいなもので、感情も弟に向けるそれとほぼ変わりませんでした」


それはリューリだって同じで、だからこそ今あの子は…。と彼女は続ける。


「白夜はリューリを応援しますよっ!背中を押してあげるのはお姉ちゃんの役割ですから!」

「……はは、やっぱり人間関係読み取るのは難しいな」


満面の笑みでえへっとはにかむ晩生内に、完全に予想を外れされた僕はそう唸るしかない。この世界じゃ将校世間を渡り歩いていかにも対人関係上手いですよ風を装ってはいるが、所詮前世はコミュ障。陽キャごっこをしても実力は嘘をつけないわけか。


「あーっ、そういえば!総長さんに見せたいものがあるんでしたっ」

「?」

「これ、?」


晩生内は軍套の内側をまさぐって、こちらへ掌を出した。

その手に握られていたものを見た瞬間、銀色が視界いっぱいに反射した。


硬直した。

見事なまでの処理落ちだ。

どうして。どこで。


「……なぜ、貴官がそれを?」

「見つけましたよ。本当に偶然でしたけど」


いつ、どうやって。疑問はいくらでも湧いてくるが、それを尋ねるより早く。

僕は反射的に口をついていた。


「直ちに戻るぞ。」






―――――――――

出会いと別れの季節、春。短編を書いてみました。

精霊の女の子と少年の物語です。

これのせいで廻天の更新が滞っていたんですが、どうか読んでください…(懇願

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891905327

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