Data.15 ギルドマスターの脅威
ギルドマスターイバンだって?
ギルドの名前からして完全に悪者っぽいが、聞き覚えはないな。
「フフフ……なんも知らねぇって顔してるな。じゃあ、この三人を見たらどうだ?」
イバンの後ろから現れた三人組は……忘れるはずもない。
俺からメダルを奪ったやつらだ!
「あんたが泥棒の頭ってわけだな」
「人聞きが悪いぜ。俺はあくまでゲーム内のルールにのっとり、メダルの効果でメダルをいただいてるだけだ」
「ま、そう言われると論理的には言い返せないんだが、感情的にはぶっ倒したいくらい気に入らないね」
「それはこっちのセリフだ。せっかく偽の脇道まで作っておびき寄せたんだ。クロガネのついでに奪った強奪の勲章も返してもらう。あれはなかなかレアなんでな」
「やれるもんならな!」
「ふんっ、さっきから話してるお仲間が近くにいない割に強気だな」
お仲間?
あ、チャリンのことか。
どうやらイバンは俺が遠距離会話のメダルでも使って仲間と連絡を取っていると勘違いしているらしい。
確かに仲間ではあるんだが、最初から戦力ではない。
『もどかしいんだにょ~ん……。私にも戦えるボディが欲しいにょん……』
「問題ないさ。お前らぐらい俺一人でもな!」
「はっ、減らず口を! 野郎どもかかれ!」
俺を取り囲んでいたギルドメンバーたちが一斉に襲い掛かってくる。
数だけは多いな、数だけは。
「コレクトソード・ジェミニ!」
二刀流だからこそできる新たな技をお見せしよう!
「破断粉砕撃!」
俺の体が高速回転を始める。
コロシアムではシュレッダーブーメランにこのスキルを適応したが、ブーメランはそもそも回転しているので俺が回転する必要がないことが判明した。
流石同じモンスターからゲットしたメダルだけあって、ブーメランとこのスキルは相性が良いようだ。
今はコレクトソード・ジェミニにこのスキルを適応した。
以前は不安定だったが、剣が二本になったことで回転が安定し、動きも制御しやすくなった。
さらに剣を地面に対して水平から少し斜めにすると……。
「うわあああああああああ!? こいつ飛んでるぞ!?」
そう、剣がプロペラの役割を果たして少しだけ浮遊することが出来る。
飛びながら迫って来るのはなかなか恐ろしかろう!
「ひ、ひるむな! スキルを放て!」
ギルドメンバーたちはどんどんスキルを発動する。
しかし、素早く動いていればほとんど当たらない。
これがスキルメダルの弱点だ。
スキルメダルは威力が高い分、回避しやすいように設定されている。
攻撃範囲が大味なんだ。
とはいえ、数が多いので何発かは剣に当たる。
その時はスキルを吸収し、威力を二倍にして敵にお返しするだけだ。
ギルドメンバーという名の雑魚戦闘員たちは三分ほどでほぼ片付いた。
「そういえば、ガラハドもあんたらの仲間だったんだな。今日はいないようだが……」
「ちっ……あいつはギルドを抜けた。俺に礼もなくな。手早く強くなるために利用しただけだとぬかしやがる……ッ!」
「そりゃよかった! こんな薄汚いところで初心者に嫌がらせして慣れ合ってるだけのギルドは、あいつに似合わないと思ってたんだ」
「ガキが……生意気言いやがって! 下っ端どもを倒したくらいでいい気になるなよ!」
さて、雑魚戦闘員の後はいよいよ今週の怪人のお出ましだ。
先手必勝と言いたいが、何のメダルを持っているかわからない相手にこちらから仕掛けるのは得意じゃない。
コレクトソードは進化しても受け身の能力であることは変わらない。
「一撃で仕留めてやるぜ! 俺のクロガネのメダルでな!」
「なにっ!?」
「
イバンが発動したスキルは、地獄の番犬ケルベロスの姿をした黒い炎だった。
熱量が尋常ではない。
間違いなく今まで俺が見たスキルの中で最高威力だ……!
でも、スキルである以上コレクトソードの前には無力!
「
ケルベロスの三つの首のうち、一つが消滅する。
同時に俺のコレクトソードの一本が黒いオーラに包まれる。
しかし、まだ一本が……。
「そういうことか……!」
「そうだ。その顔だ! 俺はもう一度同じ効果を発動! もう一本も封じさせてもらう!」
二本のコレクトソードが黒に包まれる。
まずい、メダルコレクトが使えない!
「三つ首の獄炎の基礎攻撃力は999! 二つ首が減ると333になるが、魔法と火の属性を持つスキルだ! ただ硬いだけのアーマーじゃダメージは殺しきれないぜ!」
アルマジロアーマーだけではマズイってことか。
しかし、今はこれしかアーマーをつけていない!
メダリオン・オンラインはPK許可エリアでメダルの再セットは行えない!
今あるメダルで何とかしなければ……。
火炎旋風の代わりに入れたスキルメダル【
炎には勝てない。
ハイジャンプでは避けきれない。
ヒールポーションは意味がない。
破断粉砕撃はインターバルのせいで使えない。
いっそのことコレクトソード・ジェミニの基礎攻撃力に賭けるか。
意を決し、一歩前に踏み込んだ。
その時だった。
バァン……ッ!
俺の真横を何かが通り抜けケルベロスに命中。
黒く燃える炎を消滅させた。
通り抜けた何かはそれだけに飽き足らず、イバンの頬をかすめてダメージまで与えた。
「う~ん、俺って天才的っすねぇ~。バカ犬をかき消して悪党に天罰を! でも、命令通り殺しはしない! 絶妙っす!」
「よくやったハルト。もう下がっていいぞ」
俺の隣に現れたのは仮面の男、それとハルトと呼ばれたキャップを被った子どもだ。
いったい何者だ……?
攻撃力が下がっているとはいえ、基礎攻撃力333もあるスキルを一方的に打ち消したぞ……。
「グ、グリフレッドか!? あの仮面のグリフレッド!」
「いかにも」
「あんたみたいな奴がこんな田舎に何の用だ……?」
「この男に用がある」
グリフレッドは俺を顎で指し示す。
「下がれイバン。ここで下がれば今回は見逃してやる。お前たちのやっている行為は私としても気に入らんがな」
「へ、へへ……そうさせてもらうか!」
イバンと生き残ったギルドメンバーたちは洞窟の中に引っ込んでいった。
「さて、こちらの話をしようか……シュウト」
「は、はい! 何の話でしょうか……」
なんかオーラが違うぞこの人……。
アバターなのに威圧感がある。
ど、どうされるんだ俺……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます