第2話 ピンク色の部屋

「かわいい、この机!」

「新しい机買ってくれたら勉強するって言ったら、パパが買ってくれたの」

 うれしそうな咲ちゃん。普通のピンク色だと子どもっぽいけど、咲ちゃんが買ってもらった机は淡いピンクの大人っぽいデザインで、中学生になってからも使えそう。


「ベッドカバーとカーテンも、ピンク色にしたんだね」

「そう。机と合うように薄めのピンクにした。いいでしょ」

 ついこの前までは、黄色づくしで子どもっぽかったのに全然違う。ピンクの机の上にあるピンクの耳の長いうさぎのぬいぐるみは、小学生の女の子っぽいけど。


 咲ちゃんと私は、幼稚園のときからの親友だ。引っ込み思案の私と、いつも明るい咲ちゃん。性格は正反対だけど、ふしぎと気が合っている。そして、私は咲ちゃんの部屋に遊びに行くのが大好きだった。


 私のママは、私が幼稚園に行くようになってすぐに病気で死んでしまった。お父さんは一人で子育てを頑張っているが、そのせいか出世ができず、うちはあんまりお金がない。物語にでてくるみたいに、貧乏で食べるものもないってことはないけど、高いものは買えない。


 だから、私の部屋は咲ちゃんの部屋と違って、地味なものばかり。机も安物だし、色もグレーでかわいくない。椅子もセットの椅子でなく、てきとうに安売りしていたものだ。本棚は他人が使っていたものをフリマで買ったもので、白い塗装はところどころ剥げていて、傷もしっかりついている。


 お金持ちの咲ちゃんの家とは大違い。咲ちゃんのピンク色の部屋はまるでお菓子でできた部屋のようだ。


 咲ちゃんはいいなぁ。私もいつか、こんな部屋が欲しいな。


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