アキノヨゾラ

こねこちゃん

秋の夜空

静寂。


暗闇の中。僕はひとり、交差点の真ん中で空を見上げている。


四角い夜空に映るは、クレーターまではっきり見える満月。


そして、この世のものとは思えない程の満天の星々。

絶え間なくどこかで落ちる、こぼれ星。


ジージー、リンリンと、様々な虫たちの声。

その声が、静寂を一段と静寂たる演出をしていた。



誰も、いない街。



……信じられるかい?

ここ、東京なんだぜ?



少し冷たいそよ風が僕の頬を撫でる。

「爽やかな」と表現したいところだが、お世辞にもそうは言えない事情があった。

風が運んできたのは秋の夜の匂いではない。


死の臭い。


目を凝らしてみよう。

よく見れば、ところどころに人骨とおぼしき物体がバラバラと転がっている。

これは、憐れな感染者の成れの果てなのだろうか。

それとも、更に憐れな、感染者の食事となった生存者のモノなのだろうか。

なんとなくそんなことを考えたが、どちらにせよ既に同じ死者である。

今となっては何の感情も湧かなかった。


ただ、自分がソレの仲間入りしないように気を引き締めていこう。

僕は手に持ったクロスボウを握りなおし、大型のナイフの持ち手部分が鞘から抜き取りやすい位置にあるかを目視する。


よし、進もう。


僕は気を引き締め直すと暗視ゴーグルを装着しなおし、そして目的地に向かって歩き出した。

10ヵ月ぶりの、我が家へと。



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