いっぽんのえんぴつ

瑞野 蒼人

いっぽんのえんぴつ

      一本のえんぴつ。


      一冊のノート。


     殴り書きの汚い文字。


   そこに、僕のいびつな前頭葉。



これで、準備は整う。

授業中の退屈で単調な時間。

そこが、俺のリングになる。


思いつく言葉。リリック。

考えるままにノートに書き連ねる。

アイデアの宝箱ができていく。



そのうち、長い休みが来る。

戦いの舞台は、ノートからパソコンに移る。


血糖の少ない頭をぶん回して、

ありったけの熱量で、

五十音を好きなように配置していく。

右でキーボードを乱れうち

左で頭を鼓舞するように指をもがく。



        書け。


   頭が熱を出すまで書き続けろ。


      俺の頭と手よ。



そうやって書けば、そこに世界が生まれる。

そう、僕は小さな世界の創世者。



     気分はどうだい?


      ああ、最高だ。



どんな至福の時間にも勝る最高の快楽。

文章は、自己表現の骨頂。




誰も待ってないかもしれない。

期待なんて誰もしてないかもしれない。

でも、それでいい。


誰も見ないなら、やりたいように。

誰かに見てほしいなら、強いメッセージを。

誰かが見てくれるなら、誰も見たことないものを。


やらない後悔よりも、やる後悔。

やれなかった未練より、あきらめる辛さを。






そうして、夜が来る。


  そうして、朝が来る。


    そうして、僕は命を燃やしていく。

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いっぽんのえんぴつ 瑞野 蒼人 @mizuno-aohito

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