転生者を自称する幼なじみにツッコミが追いつかない。

江東乃かりん(旧:江東のかりん)

# 0. 何年何月何日何曜日!?

 つい数分前に気を失った幼なじみを、公園で膝枕しているときのこと。


 膝の上の彼が、突然目を覚まして飛び上がった。


「思い……出した!」

「え? なにを?」

「いまは何年何月何日何曜日だ?!」


 まるでタイムスリップしたタイムトラベラーが、現地人……ん?

 あれ?

 この場合は現代人?

 うーん、どっちでもいいや。


 とにかく、それは。

 タイムスリップした人間が現地人に問いかけると言う、古臭い映画とか漫画とかにありそうなセリフで……。


 え? なに? 突然どうしたの??


「は? え?」


 普段ゆるふわな雰囲気を飛ばす幼なじみが、いつもとは違った雰囲気で私に問い詰めにかかる。


「だから、いまは何年何月何日何曜日何時何分何秒、この星が何度回って、起点分岐誤差指数はいくつだ!」


 何を言っているのかな、この子は?


「え? えと……今日は石歴1999年、4月1日、赤曜日。何回回ったかは分かんないし、その最後のは……」


 ええと……なんていったっけ?


「なんてことだ!」

「え? なに?」


 なになに??


 この子、何も持っていないのに、両の手のひらを皿に空に向けて、叫んでるんだけど。


 と言うか私、最後に聞いた長い単語には答えてないんだけど。

 それ放置で良いの?


「ど、どうしたの?」

「俺は時を越えてしまったようだ……」

「はあ」


 深刻な表情をして何を言うのかと思えば。


 もしかしてさっきまでのん気に夢でも見ていたのかな。


「目を覚ましたら数分後にタイムスリップってこと? そりゃそうだよね。だって気絶してたんだもん」

「違う、そうじゃない。……そうじゃないんだ」


 幼なじみは気取ったようなポーズを取った。


「なに、そのポーズ?」


 あれ、この子こんなに痛いポーズ取る子だったっけ?


「俺は、いわゆる転生者ってやつだ」


 引っ込み思案で何をするにも、私のあとを追いかけてくる。


 そんなだから、弟みたいに思っていた幼なじみなのに。


「はあ……?」


 気絶から目覚めた幼なじみは、転生者を自称するとてつもなく痛い子に変貌してしまった。

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