6月10日土曜日 古城家 決起集会2

日向肇


 古城の家に着いた。玄関でベルを鳴らすと「はーい」という小さな女の子の元気な声が聞こえて廊下をパタパタと走ってくる音がしてドアがえいやと開いてエプロン姿のショートパンツ姿の女の子が私達の顔ぶれをさっと確認してきた。気のせいか去年より身長は高くなっている感じ。


「いらっしゃいませ!妹のミアキです。お姉ちゃんがお世話になってます。靴を持って2階に上がって下さい」


 キョトンとする面々。ミアキちゃんはその様子にすぐ気がついた。

「あっ、今日は2階のベランダ、お外で食べるから靴を持って上がってくれますか」


 という事で俺たちは靴を持って2階へと案内された。廊下のつきあたりにドアがあってそこからベランダというかテラスに出られるようになっていた。


 長袖の襟付きシャツを腕まくり、ジーパン姿でエプロンをしてお皿やら運んでいた古城がテラスで俺たちを歓待してくれた。

「いらっしゃい!」と言いながらエプロンを外してこちらに来るとテラスに並べられた席へと案内された。

「さ、みんな、靴を履いてこちらに座って、座って」


 おっとその前に、

「冬ちゃん、これはお土産。お家の人と食べてね」

と陽子ちゃん(先を越されたと思ったら「私の・か・ち」と声を出さずに言われてしまった)。その言葉を号令にみんな持ってきたお土産を古城に渡した。

「いいのに、そんな」って古城には言われたけどそういう訳にはいかないよ、やっぱり。


 みんなのお土産。陽子ちゃんはハンドメイドのビスケット、秋山さんはアイスクリームの詰め合わせ、姫岡は夏みかん、加美さんは追分饅頭、俺はハンドメイドのカップケーキだった。


 俺と陽子ちゃんはクリスマスに呼ばれていて様子を知っているから気合い入れてきた。

 秋山さんは暑くなってきたからか冷たい物(冷凍庫が空いている事をお祈るばかり)、姫岡は季節物、加美さんは日持ちがそこそこするものって感じでそれぞれの性格による配慮とか入っていて面白い。


秋山菜乃佳


 古城さんの家って凄いなあ。テラスがあってそこで食事会出来るってちょっと憧れちゃう。パラソル机や組み立て式のテーブルが出ていて、椅子も出ていた。


 そしてご両親とミアキちゃんが出してくれた料理はなんと関西&広島お好み焼き。ミアキちゃんがホットプレートで広島のお好み焼きを、ご両親がガスコンロで関西のお好み焼きを焼いてくれた。これがどちらも美味しい。両方ともお代わりもお願いしてしまった。お好み焼きを合計4枚も食べるだなんて。


「お代わりいる人は言ってね」と古城さんのお父さん。

『はーい』をみんな食べるのに熱中しつつもなんとか返事していた。


「ほんと秋山の胃袋の大きさは謎」と姫岡が言ってきたのでとりあえず蹴っておいた。


「美味しいし私は朝練とか出てるんだから、あんたといっしょにするな」

「それは悪かった」

と言いながら姫岡も結局お代わり頼んでるし。


加美洋子


 古城先輩の料理の上手さ、美味さは家の環境の賜なんだろう。妹さんの焼く広島のお好み焼きも美味しい。私もついついお代わりの広島のお好み焼きを頼んでしまった。お腹がはち切れそう。お好み焼きが合計3枚も食べるなんて計算外だ。


「加美さん、美味しい?」

古城先輩に聞かれたので思わず首を縦に二回も振ってしまった。美味しいです、美味しいです。


 周りを見たら結局みんな3枚〜4枚ものお好み焼きを頂いていた。


三重陽子


 食後に冬ちゃんのお母さん謹製のコーヒーを頂いた。そしてミアキちゃんはホットプレートをさっと拭くとミニパンケーキを焼き始めた。

「冷えても美味しいと思うから、コーヒーと一緒にどうぞ。アイスクリーム、フルーツトッピングして食べて下さい」

デザートも完備。古城家の恐るべきおもてなし。がんばらなきゃ。


「ミフユ、これから会議だよね。私達は下に戻ってるわ。皆さんゆっくりしてね」

「皆さん、美味しかったですか?」ってミアキちゃん。

『美味しかったよ。ごちそうさまでした』とみんなが口々に返した。そういうとご両親とうれしそうに手を振ってくれたミアキちゃんは階下に降りていった。


 みんな、まったりしている中でミアキちゃんのミニパンケーキにアイスとフルーツを盛って少し食べながら明日以降の最後の追い込みに向けた話し合いが始まった。


 最初に報告があったのは冬ちゃんだった。

「金曜日、無事大村会長と話が出来たよ。中立維持って言われた。ただ3年生はイーブンだし、こちらが若干欠点が少ないから少し優位ぐらいじゃないかって言われた。だから討論会が天王山になる」


 しっかりミニパンケーキにアイスとフルーツをのせて食べようとしていた加美さんが手を止めて分析した。

「3年生がイーブンないし若干有利なら討論会の結果で勝負はつくと思いますから文化祭実行委員会構想をもう少し詰めた方がいいかもです」


「誰か吉良さんの役をやってシミュレーション兼ねた練習するってどう?」

このアイデアは秋山さんが出してきた。バレーボールの練習とか仮想敵を設定する事があるんだという。誰がいいかな?となったけど結局全員試してみる事になった。5人組み手になるから実は大変なのは冬ちゃんだった。

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