2章 生活基盤
1話 家を買う
あれから3日ほどたった。
城を出て北西の第6区に行き、宿を取ってくらしていた。
この3日間は主にギリアの町を歩きまわってすごした。
財布事情でいうと、黒竜の素材をシルファが買い取ってくれたこともあり、だいぶ潤っている。
ギリアを6区から順番に歩きまわっていたが、各区の境目には門があり、憲兵がいた。
どうやら第4区までは自由に入ることができるが、3区以上に入るにはある程度の名声がないと駄目なようだ。
俺の場合は、一般的には有名ではないため、4区までしか入れていない。
また、実はこの町は正確には6区ではなく7区画に分かれており、7区がスラム街であることも分かった。
そこには家がなく、毎日を暮らすのもままならない人たちが暮らしていた。
そして、この町を歩き回っていて気づいたのだが、ソネストアと違いこの世界には奴隷制度がある。
奴隷といっても、クライアント1人に付き続ける派遣みたいな感じだが。
人権は順守されており、1日3食や宿、税金などは主に課される義務で、人としての尊厳は守られていた。
例えば事務が得意な女性の奴隷を探したい。と思えば、それに当てはまる人を買うことができる。
できることの能力が高かったりや多彩な人間や一芸に突出している人間は高い価値で売買される。
両親を亡くし、1人で生きていけない子供や同様に住む場所を無くした大人。借金の結果や犯罪者など様々な人間が奴隷になっている。
奴隷を使うメリットはいろいろあるのだが。俺にとってのメリットは主人の守秘義務を果たさせることができることだ。
俺が奴隷を買えば、死神であることを明かしても奴隷側は誰にも言えないのだ。
奴隷を使うデメリットとしては、例えば奴隷が悪いことをした場合は主人の非になったりもするのでちゃんと管理できないとだめなところだ。
そうそう。俺がとらえたセシアに手を出そうとしていた冒険者たちだが、奴隷ではなく死刑となったようだ。
シルファ自身が闘技場に立ち、かすり傷でも負わせることができれば、逃がしてやるというルールの上で、盛大に痛めつけたらしい。
さて、これからのことだが、
本格的にこの町に定住しようと考えている。
今は特に行きたい場所も目指している場所もない。
ということでまずは家を買おうと思う。
あとは家の管理などを任せられる奴隷を一緒に購入予定だ。
やってきたのは、不動産。
治安は良いにこしたことはないので、
4区まで来た。
城からみて南西のほうだな。
ドアを開け中に入る。
仏頂面のおっさんが新聞を読んでいた。
こちらをちらっとみて挨拶をする。
「いらっしゃい。」
視線を新聞に戻してしまった。
「このあたりで良さげな家が欲しい。」
「どう良いといいんだい?」
こちらを見向きもせずに返答してくる。
いい加減にせぇよ。ホンマ。
俺の中にある関西の血が騒ぐ。うちの家系は代々北海道だ。
「家なんて買ったことはないからわからない。だからここに来た。」
「家が欲しいというが、おまえさん金はあるのかい?」
おっさんがめんどくさそうに言ってくる。
なるほど。俺が貧乏に見えたんだろう。まぁ家を買いにきた人間にしてはたぶん若いだろうからな。
「金ならある。」
「ほう?」
おっさんの目の色が変わった。
現金なやつだ。
新聞紙を脇に置き、こちらに向き直ってきた。
「家にもいろいろある。家の広さ、高さ、安さ、土地の広さ、市場への近さ。それ以外にも物好きなやつは、家で鍛冶をしたり、ポーションを作ったりするやつもいる。調理場にこだわるやつだっている。」
確かに、用途を考えなければならないな。
金は十分にある。
広さと高さは欲しい。
料理を作ることもあるので、キッチンもこだわりたい。
身長180前後のやつはわかると思うが、洗い物をするときに腰を曲げてる角度が割とまじでつらいキッチンってあるよな。
あとはまだ装備が収穫用の鎌で初期装備のままだ。武器自体に特殊な効果がついているものもあるし、鍛冶もできるようにしたい。
鍛冶ができる奴隷を買った場合でも、鍛冶をする場所がないのはつらい。
あとは遠出するときがあるかもしれないので、馬小屋も欲しい。
最悪建っている家がないのであれば、土地を買って建ててもいいだろう。
「広さと高さは欲しい。奴隷の購入なども視野にいれる。15人くらいで住めるような家が欲しい。鍛冶や調理場もしっかりしている場所が良い。外には馬小屋も欲しい。」
すごいわがままな客になってしまった。
おっさんが物凄い顔でこちらを見ている。
「ちょっと待ってろ。調べる。」
おっさんがパラララララと資料をめくりだした。
あれで読めているんだろうか。
途中、物凄い勢いでめくられている資料の間に一本だけ指が挟まった。
「うーむ。俺が知ってる中で紹介できそうなのは1件くらいだ。」
「あるのかよ!」
思わずつっこんでしまった。
ってか、おっさんすごいな。今のスピードで見つけられるのか。
「あぁある。ただ予想よりも大きいかもしれん。金も物凄いかかるぞ」
「詳細を知りたい」
俺は食いつく。
「前鍛冶師ギルドの建物だ。今は4区の中でも城の近くに移動になったからな。前の建物はそのまま取っておいている。そこなら1階は鍛冶ができるスペースで2階と3階は居住可能だ。調理場ももちろんある。もちろんギルドとして活用していたときの馬小屋もついている。」
「買った!」
即答した。
「お前さん、金額を伝えていないのに大丈夫かい?」
「大丈夫だ。」
おっさんから建物の値段を聞いて驚いた。予想よりは安かった。1年ほどそのままになっていたので汚れているだろうからという理由だった。
金を払いカギをもらい、礼を言って不動産から出る。
軽い足取りで家を見に行く。
念願のマイホームだ。日本に在住していたときならば学生で家を買うなんて考えられなかったな。
教えられた場所まで行く。
外見だが、3階建ての比較的キレイな洋館だ。
大きさに絶句する。まるで貴族になったような感覚だ。
正面の大きなドアの鍵を開け中に入る。
入ってすぐ正面にはカウンターがある。左側には大きな階段が。右側にはドアがある。
見取り図を見る。
右側:ドアの先左手には調理場。その先には階段があり、2階が応接室、3階は大きな部屋が1部屋あるらしい。
左側の階段は2階に6部屋、3階も6部屋で居住スペースになっている。
1部屋に2人まで泊まれるようになっているらしい。
1階のカウンターの奥には鍛冶ができるスペースになっている。
ちなみに風呂はついていない。
すぐ近くに銭湯があるのでそこで済ませていたらしい。
次は奴隷の購入か。
人でいうと、
屋敷管理で8人。
鍛冶師で2人。
馬の管理と御者で2人。
どうしても日本人の感覚ではブラックになりやすいので、
休みがうまく回るような体制を組み立てたくなる。
3階の居住スペースを2部屋ずつ割り当てようと思う。
ちなみにハーレムをする予定はないので、男女問わず購入しようと思う。
ただ、年齢の近い人がいると疲れるような気もするので、
おじいさんおばあさんか、子供がいい。
主な方針を決め、家を出る。
目指すは奴隷商だ。
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